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青野文昭

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現代美術の民俗学的転回 コンサベーション ピース ここからむこうへ PartA 青野文昭展

現代美術の民俗学的転回 コンサベーション ピース ここからむこうへ PartA 青野文昭展

なんという迫力だろう。いや、迫力というより凄味と言うべきか。会場の中央に組み立てられたのは、無数のたんすに自転車や自動車、衣服や文庫本といった日用品を埋め込んだインスタレーション。秘密基地のように内側に立ち入ることができるが、そこにはす凄まじい気配が立ちこめている。見る者の視線と身体は、その異様な空気に屈服することを余儀なくされるのである。

とはいえ今回、青野文昭が発表した新作は、彼のこれまで

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青野文昭 個展

青野文昭 個展

仙台を拠点に活動している青野文昭の新作展。遺物(異物)を異物(遺物)と接合しながら「なおす」作風によって知られる造形作家で、とりわけ3.11以後の造形表現を考えるうえで注目を集めている。先ごろ東京藝術大学大学美術館で催された「いま、被災地から──岩手・宮城・福島の美術と震災復興」展(2016年5月17日~6月26日)では、収納用具と衣服を融合させることで、いままで以上に人間の気配を強く醸し出してい

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青野文昭 展

青野文昭 展

破損した廃棄物や漂着物を素材にして「なおす」こと。仙台市在住のアーティスト、青野文昭はこれまでさまざまな物を組み合わせ、融合させ、新たな造型をつくり出してきた。それらの多くは接合面がじつに滑らかに処理されているため、物と物とのあいだに主従関係を確定することが難しく、それゆえあたかもそのような物として最初から自立していたかのような風格が漂っているのが特徴だ。

新作と旧作をあわせて発表した今回の個

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[対談]青野文昭×福住廉 司会:関本欣也

[対談]青野文昭×福住廉 司会:関本欣也

関本:定刻になりましたので、はじめさせていただきたいと思います。「青野文昭個展」トークということで、美術評論家の福住廉さんをお招きして、1時間半から2時間トークイベントを開催したいと思います。よろしくお願いします。先週も青野さんとはトークをやって、思いのほか人がいっぱい来てしまって、先週はリラックス、今週は真面目にと思ったんですけど、先週も真面目、今週も真面目ということになってしまったんですけど…

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コンサベーション_ピース ここからむこうへ part A 青野文昭展

コンサベーション_ピース ここからむこうへ part A 青野文昭展

青野文昭は震災以前から「修復」をテーマにした造形作品を制作してきたが、震災以後、その素材を被災物にしたことから、現在はポスト311の文脈で語られることが多い。その作品とはコラージュのように異物と異物を組み合わせた造形物。だが接続面がシームレスに処理されているため、とりわけ高い異化効果が発揮されているわけではない。むしろ、あたかもその形態が自然であるかのような佇まいで屹然とした存在感を放つところに青

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