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調べたこと、考えたことを記録します

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最近の記事

Spinoza Note 62: 存在しない様態に関する idea が神の知性に含まれる

第2部の定理8「存在しない様態に関する idea が神の知性に含まれる。formal essence (実際の有り様)が神の属性に含まれるかのように。」これは謎の多い説明だ。最初の「存在しない」というところで、既にわからなくなる。 先に、持続 duratio の定義を検討する際に触れたが、属性のなかに死んだ人の観念が残るという話だ。神の思惟のなかで死者の魂が存続する。 定理8系の前半は、死んだ人の魂が神の観念として神のうちに保たれていることを(再び)述べている。後半は個物

    • Spinoza Note 61: 物と心が並行して働く

      第2部の定理7「諸々のidea の順序と相互の関係は、物事の順序と相互関係に等しい。」とは、物と心の世界が並行して働くという意味だ。原文と訳文(高桑による)を並べる。 「諸観念の秩序と結合」とは神が思惟すること、考えたことの順番や相互の関係を指す。対して「事物の秩序と結合」は神が延長する extending ことである。観念と事物は同時に起きる。たとえば観念A, B, C, D が2024年7月15日22時18分15秒(日本時間)から10秒ごとに生じるなら、それらに対応する

      • Spinoza Note 60: 神が idea を生じさせる

        第2部の定理5と6は、神が属性を介して働くことを述べる。属性は互いに分離されており、動きが考えに影響したり、考えが動きに影響することがない。両者間の相互作用を除外することから、Spinoza が心身の相関に対してDescartes と異なる解決を計ることが予期される。原文と訳文(高桑による)を並べる。 定義5は、観念が生じるのは神が思惟するときに限るということらしい。別の方向から説明すると、体を動かしても観念が生じない。そのような具合で、属性に基づいた分業態勢が敷かれる。定

        • Spinoza Note 59: 神は単一の idea を持つ

          第2部の定理3と4は、神が自身と彼から生じたすべてのものについて、単一の idea を持つと述べている。原文と訳(高桑によるもの)を並置する。 文章がわからない。表にして、それぞれの定理の右に証明で参照されている他の定理を置く。言及されている定理や定義が7つあり、うち6つが第1部からだ。 神が自身について抱く idea は 神の immediate infinite modification である。(第1部定理21より)。immediate infinite modif

        Spinoza Note 62: 存在しない様態に関する idea が神の知性に含まれる

          Spinoza Note 58: 思惟と延長が神の属性に含まれる

          第2部の定理1と2は神が二つの属性、すなわち思惟と延長を持つと主張する。原文と訳文(高畠訳)を並べる。 各定理について、Spinoza が論証で言及した定理と定義を横に並べる。背景を薄青で塗ったものは第1部にて言及されたことを意味する。 定理1は「神が考える」ものであることを述べている。定理2は神が物でもあると述べている。2点目が特異なので注意する。Jarrettが指摘していて気づいたが、神が延長を持つとは神が「体を持つ」ことだ。神が肉体を持って存在すると言われると驚く。

          Spinoza Note 58: 思惟と延長が神の属性に含まれる

          Spinoza Note 57:6つの公理

          第2部で Spinoza が6つの公理を挙げる。いずれも極度に抽象的で、単独で理解するのは困難だ。第1部を読む際に試みたように、それぞれの定理を読む際、そこで参照されている公理を検討するという形で進める。後で読み返すときのために翻訳を並べておく(高桑訳)。 人は存在することもあれば、存在しないこともある、ということだろう。人類として存在するが、特定個人が存在するか否かは偶然だ、と読む。 思惟に注目することが、肉体としての存在より、考えることが重要と暗に伝えている。 第1

          Spinoza Note 57:6つの公理

          Spinoza Note 56: 個物 singular

          定義7は個物を説明する。何も読み取れず、途方に暮れる。 工藤&斉藤訳:個物とは、有限であり、限られた存在を持つもののことである。もし多くの個体<あるいは個物>が、すべて同時にある一つの結果の要因であるかのように、一つの活動において協働するならば、そのかぎりにおいて私はそれらすべてを一つの個物と見なす。 このように定義することの意図がわからないが、人が精神と肉体から成るということが話題だから、それと関連すると仮定する。肉体と精神は別物だが、「一つの活動において協働する」ので

          Spinoza Note 56: 個物 singular

          Spinoza Note 55: 実在性と完全性 realitatem & perfectionem

          定義6は実在性と完全性を説明する。ひどくわかりづらい説明だ。 高桑訳:実在性と完全性とは同じものだと私は理解する 佐藤訳:物としての性格【実在性】と完全さということでわたくしが解るのは同じものである まったく理解できない。工藤&斉藤の解説を読む: 佐藤の訳「性格」' reality ' と工藤&斉藤の解釈「本質」' perfection ' を併せると、なんとなく重なる。これらの用語も Spinoza の用法をみないとなんとも言えないが、「その人にとっての完全性」と具体

          Spinoza Note 55: 実在性と完全性 realitatem & perfectionem

          Spinoza Note 54: 持続 duratio

          ひどく抽象的に聞こえるが、定義5は持続 duratio を説明する。英語だと duration だ。何らかの状態が続くこと、およびその持続時間を意味する。 工藤&斉藤訳: 定義5. 持続とは、存在の無限定な継続のことである 説明. 私は無際限な継続という。なぜなら存在の継続は存在するものそのものによっては決して限定されないし、また動力因によっても限定されてないからである。つまり動力因はものの存在を必然的に定立するが、除去することができないからである。 高桑訳: 定義5.

          Spinoza Note 54: 持続 duratio

          Spinoza Note 53: 観念 ideam

          定義3と4で、観念について理解しづらい説明が続く。しかし最重要といってよいところだ。辛抱強く読もう。 Elwes訳:By idea, I mean the mental conception which is formed by the mind as a thinking thing. 高桑訳:観念とは、精神が思惟するものであるゆえに、精神が形成するところの精神の概念のことだと私は理解する。 粗訳:観念 idea とは精神が把握するものである 詳しくみると、Ment

          Spinoza Note 53: 観念 ideam

          Spinoza Note 52: 物体 corpus

          Elwes訳:By body I mean a mode which expresses in a certain determinate manner the essence of God, in so far as he is considered as an extended thing. (See Pt. i., Prop. xxv., Coroll.) 粗訳:物体は様態であり、ある定まった方法で神の有りかた、すなわち属性・延長を表現する。(第1部定理25を参照のこと

          Spinoza Note 52: 物体 corpus

          Spinoza Note 51: 第2部 精神の本性と起源について

          ラテン語だと " DE Naturâ, & Origine MENTIS " となる。精神の本性 Nature と起源 Origin を説明するらしい。冒頭の書き出しを読む: Eliot訳:I proceed now to explain that order of existences which must necessarily follow from the essence of God, or of the eternal and infinite being: n

          Spinoza Note 51: 第2部 精神の本性と起源について

          Spinoza Note 50: あらゆる狂気に抵抗する力

          Spinoza 著 Ethica の第1部を読んだ。前半(定義と公理、および定理14まで)は原文を参照しつつ、基本用語の理解に務めた。各証明も可能な限り検証した。後半(定理15から36)は結論から遡っていった。すなわち、神の能力、産出の必然性、知性の役割、因果関係の連鎖、世界を維持する神、世界を創造する神、「今、ここにいる神」というように整理した。 世界を作る神と保つ神がいて、Spinoza は保つ神に注目している。神が今も働いていて、我々と共にある。そして、人間は知性によ

          Spinoza Note 50: あらゆる狂気に抵抗する力

          Spinoza Note 49: 神は今、ここにいる

          先に、定理18から15までを「神は内在する」としたが、神が内側や外側にいるわけではないので考え直した。結果、ラベルを「神は今、ここにいる」と改変した。Spinoza にとって、創造神ではなく、今のこの世界を動かしている神の方が重要だという気がしたからだ。 神は何者か?という問いは、この世界はどのように出来たのかという創世と関係しているように思われる。この世界があるのはなぜかを考えたとき、誰が作ったのか、始まりはどうだったのかということにまず関心が向く。世界中に創世神話がある

          Spinoza Note 49: 神は今、ここにいる

          Spinoza Note 48: 世界を創造する神

          前項(Spinoza Note 47: 世界を維持する神)で定理25と24を検討した。そこで「維持」に注目したが、直前の諸定理である定理23から19は世界を創造する神に焦点を当てている。先にこれらの諸定理を「神と存在」とラベル付けしたが、「世界を創造する神」に付け直す。神と存在の関係を述べていることは確かだが、その関係とは「創造すること」であることが明確になってきたからだ。これらの諸定理は物事がどのように生じたかを説明している。 前項(維持する神)との関係でいうと、定理20

          Spinoza Note 48: 世界を創造する神

          Spinoza Note 47: 世界を維持する神

          定理25と24を先に「神の本質」とラベル付けしたが、「世界を維持する神」と付け直す。ようやくわかってきたことだが、Spinoza は神の仕事を二つに分けている。ひとつは世界を創造すること、もう一つは創造した世界を維持することだ。後者の重要性が感じられるようになった。 定理25と24は神の本質、私の理解では神の働きに関することと理解していた。神の働きに伴って存在が生じると理解していた。間違っていないが、生じたものを維持する仕事も神が担っている。Spinoza はそのことを強調

          Spinoza Note 47: 世界を維持する神