Spinoza Note 61: 物と心が並行して働く

第2部の定理7「諸々のidea の順序と相互の関係は、物事の順序と相互関係に等しい。」とは、物と心の世界が並行して働くという意味だ。原文と訳文(高桑による)を並べる。

PROPOSITIO 7
Ordo, & connexio idearum idem est, ac ordo, & connexio rerum.
諸観念の秩序と結合は、事物の秩序と結合と同じものである

「諸観念の秩序と結合」とは神が思惟すること、考えたことの順番や相互の関係を指す。対して「事物の秩序と結合」は神が延長する extending ことである。観念と事物は同時に起きる。たとえば観念A, B, C, D が2024年7月15日22時18分15秒(日本時間)から10秒ごとに生じるなら、それらに対応する事物が時を同じくして2024年7月15日22時18分15秒(日本時間)から10秒ごとに生じる。

なぜそのように異なる二つの世界が同期するかといえば、思惟し延長するものが同じ神だからだ。観察者である我々に観念と出来事が異なるものと映るが、それはひとつのことが二通りに見えている。

COROLLARIUM
Hinc sequitur, quòd Dei cogitandi potentia æqualis est ipsius actuali agendi potentiæ. Hoc est, quicquid ex infinitâ Dei naturâ sequitur formaliter, id omne ex Dei ideâ eodem ordine, eâdemque connexione sequitur in Deo objectivè.
このことから、神の思惟する能力は、神の行為する現実的能力に等しい。という結論が出てくる。別の言葉で言えば、およそ神の無限な本性から、形式的に生じるものはすべて、神のうちに、神の観念から、それと同じ秩序、同じ結合の仕方で、客観的に生じるのである。

形式的 formaliter 、客観的 objective という用語が重要だ。形式的とは現実的であること、客観的とは認知的 epistemic であることを指す。その点に気をつけて定理7の系(Corollarium)を読むと、現実化してくるものすべてが神の思考に現れる、しかも同じ順序で同時期に、ということになる。


物と心が並行して働く 定理7

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