Spinoza Note 47: 世界を維持する神

定理25と24を先に「神の本質」とラベル付けしたが、「世界を維持する神」と付け直す。ようやくわかってきたことだが、Spinoza は神の仕事を二つに分けている。ひとつは世界を創造すること、もう一つは創造した世界を維持することだ。後者の重要性が感じられるようになった。

世界を維持する神 定理25と24

定理25と24は神の本質、私の理解では神の働きに関することと理解していた。神の働きに伴って存在が生じると理解していた。間違っていないが、生じたものを維持する仕事も神が担っている。Spinoza はそのことを強調したいのだ。

定理25で「有りかたの作用原因」あるいは「動力因」に言及している。その前に「実在の作用原因であるだけでなく」としているのは、「創造するだけでなく」という含みがある。また、定理24で「実在を伴わない」と書いており、これも意味不明だったが、直前に書いてある「産み出された物の有りかた」という表現が重要で、一旦産み出された物が「実在を伴わない」とは、実在が再創造されるのではない、(既に実在するものが維持される)と読める。

この点が伝わりにくい表現であることは確かで、補足のため、定理24の系として、実在し通す原因 causa essendi に言及している。このような概念は現代の読者になじみが薄いが、スコラ哲学を知る者にとっては既知であり、中世・ルネッサンス期の知識人にとって常識であった。ゆえに Spinoza が定理を並べて「世界を維持する神」に言及することに新規性があると読まない方がいいだろう。

しかし、世界の創造だけでなく、世界の維持に着目することはそれを可能にする神の能力と活動に我々の目を向けさせる。今続いている世界が神の働きによるものであること、そして我々がその一部であること、を意識させる効用がある。創世神話は誰が世界を作ったのかを我々に意識させ、創造主が権威を持つ、あるいは創造主の代理人である教会の権威の源泉となる。

Spinoza は世界の始まりが重要であることを認めつつ、「でも、世界を続けていく技も重要だよね」と主張し、「元祖・世界」の看板に挑戦しているようにみえる。「世界の始まり」から「今ここにある世界」へと、人々の意識を向けさせようとしている。権威と戦う土俵(主戦場)を変えようとしているようにも思われる。


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