Spinoza Note 51: 第2部 精神の本性と起源について

ラテン語だと " DE Naturâ, & Origine MENTIS " となる。精神の本性 Nature と起源 Origin を説明するらしい。冒頭の書き出しを読む:

Transeo jam ad ea explicanda, quæ ex Dei, sive Entis æterni, & infiniti essentiâ necessariò debuerunt sequi. Non quidem omnia ; infinita enim infinitis modis ex ipsâ debere sequi [Prop. 16 Part. I] demonstravimus : sed ea solummodò, quæ nos ad Mentis humanæ, ejusque summæ beatitudinis cognitionem, quasi manu, ducere possunt.

Eliot訳:I proceed now to explain that order of existences which must necessarily follow from the essence of God, or of the eternal and infinite being: not, of course, all of them (for it has been demonstrated, Part I, prop. 16, that there must follow from that essence an infinity of modes,' infinitely modified). but only those which will serve to lead us. as it were by the hand. to the knowledge of human mind and its highest happiness.
Elwes訳:I now pass on to explaining the results, which must necessarily follow from the essence of God, or of the eternal and infinite being; not, indeed, all of them (for we proved in Part i., Prop. xvi., that an infinite number must follow in an infinite number of ways), but only those which are able to lead us, as it were by the hand, to the knowledge of the human mind and its highest blessedness.
高桑訳:さてこれから、私は、神、すなわち、永遠にして無限なる存在者としての神の本質から必然的に生じなければならぬものの説明に移ろう。が、そのすべてについてではない。なぜなら、第1部定理16で証明したように、神の本質からは、無限のものが、無限の方法で生じてくるはずだからだ。そこで、ここでは、私たちの手を取るようにして、人間精神とその最高の幸福を認識するように案内してくれることのできるものについての説明だけを試みよう。

回りくどいが、第2部で思惟およびその様態としての知性を説明すると言っている。「神の本質から必然的に生じるもの」で、そのうち「人間精神と最高の幸福に関する知識を我々にもたらしてくれるもの」に焦点を当てる。

振り返ると、Ethica第1部から我々読者は精神について次のことを学んだ:

  • 精神と肉体は共に神から発している

  • 一つところから生じているので両者の間に強いつながりがある

  • 物と心が並行して働くと Spinoza は考えている

  • 建前上両者は平等だが、Spinoza は知性を重んじるようだ

第1部が「神について」だったので、我々読者はまだ「人について」の知識が欠けている。人の肉体と精神がどのように生じたのかを知らない。Spinoza は第2部で精神の起源を説明するようだ。ということは肉体の起源に関する説明を省略するのか。肉体の起源については「お母さんから生まれてきた」で十分なのだろう。「母を産んだのは誰?」と祖先を遡っていくと生命の起源に至るが、Spinoza は進化論を知らないので、最初の人間が我々と同じ姿形で忽然と現れたと考えていただろう。

肉体の起源と本性に謎がないとして、Spinoza は精神の謎を解こうとする。第2部を読み始める前に読者(私)が抱く疑問は次のようなものだ:

  • 人間の精神はどのように生じたのか

  • 人間精神は肉体をどのように支配するのか)

  • 人間の肉体は精神にどのように影響するのか

  • 死後、精神(魂)は残るのか?

以下、Charles Jarrettの解説 ( SPINOZA, A guide for the Perplexed ) をもとに第2部の内容を外観する。第2部は精神(定理1から13まで)と知識(定理14から49まで)がテーマである。

精神の部は定理13がひとつの到達点である。定理13で次のことを主張する:

The human mind is God's idea of the human body or, as Spinoza puts it, "The object of the idea constituting the human mind is the body, or certain mode of Extension actually existing, and nothing else." 

 Charles Jarrett, SPINOZA, A guide for the Perplexed p.70

粗訳:人間精神は人間肉体に関する神の idea である。Spinoza の言葉でいうと「人間精神を構成する idea の対象は肉体である。肉体は延長の様態であり、実際に存在している。それ以外はない。」

「人間精神は人間肉体に関する神の idea である」ことを定理13まで読んで理解すればよいようだ。人間精神の起源を教えてくれるのだろう。Jarrettの解説に従い、定理1から13までの流れを概観する。

  • p1-p2, 思惟と延長が神の属性に含まれる

  • p3-p4, 神は自分自身と自身から生じたすべてのものについて、単一の idea を持つ。

  • p5-p6, 神は idea を生じさせる ( cause )。なぜなら神は「考えるもの」a thinking thing だからだ。一般的に、神はいかなる属性に対しても様態を生じさせる、もしその属性を神が有するならば。

  • p7s, 諸々のidea が生じる順序は、物事が起きる順序と同じだ。

  • p8d,c,s, 存在しない様態に関する idea が神の知性に含まれる。formal essence (実際の有り様)が神の属性に含まれるかのように。

  • p10,c, 人々が様態だ、実体でなく。

  • p11, 人間精神は神の idea である。実際に存在しているものに関する神の idea である。

  • p12, ideaの対象(表象)に起きること全てが人間精神を構成する。そして人間精神は表象に起きること全てを知覚する。

  • p13, 人間精神の対象は人間肉体である

  • 13s, 汎神論:あらゆる物体が魂(精神ともいう)を有する

何となく流れがつかめた。続いて諸定義をみておく。7つの定義が与えられる。どれも手強そうだ。次項からひとつずつみていく。

  • 物体 corpus

  • 本質 essentiam

  • 観念 ideam

  • 十全な観念 ideam adæquatam

  • 持続 duratio

  • 実在性と完全性 realitatem & perfectionem

  • 個物 singulares


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