Spinoza Note 62: 存在しない様態に関する idea が神の知性に含まれる

第2部の定理8「存在しない様態に関する idea が神の知性に含まれる。formal essence (実際の有り様)が神の属性に含まれるかのように。」これは謎の多い説明だ。最初の「存在しない」というところで、既にわからなくなる。

PROPOSITIO 8
Ideæ rerum singularium, sive modorum non existentium ità debent comprehendi in Dei infinitâ ideâ, ac rerum singularium, sive modorum essentiæ formales in Dei attributis continentur.
存在しない個々物、あるいは諸様態の観念は、個々物あるいは様態の形相的本質が神の属性のうちに保たれているように、神の無限なる観念のうちに包含されていなければならない。

先に、持続 duratio の定義を検討する際に触れたが、属性のなかに死んだ人の観念が残るという話だ。神の思惟のなかで死者の魂が存続する。

COROLLARIUM
Hinc sequitur, quòd, quamdiu res singulares non existunt, nisi quatenus in Dei attributis comprehenduntur, earum esse objectivum, sive ideæ non existunt, nisi quatenus infinita Dei idea existit ; & ubi res singulares dicuntur existere, non tantùm quatenus in Dei attributis comprehenduntur, sed quatenus etiam durare dicuntur, earum ideæ etiam existentiam, per quam durare dicuntur, involvent.
ここから結論として出てくるのは、個物は神の属性のうちに包含されているのでなければ存在しないものであるならば、個物の観念的存在または観念は、神の無限な観念が存在しているかぎりにおいてのみ存在する、ということである。そして、個物は、それが神の属性に包含されているかぎりにおいてばかりではなく、それが持続しているといえる存在をも包含しているのである。

定理8系の前半は、死んだ人の魂が神の観念として神のうちに保たれていることを(再び)述べている。後半は個物、すなわち特定の人を構成する二つの要素を説明している。ひとつは神に記憶されている要素、もうひとつはある一定の期間だけ現実に存在する要素である。前者は魂、後者は肉体であろう。

定理8の証明で言及される他の定理を表に示す。すべてが、生きている者も死んだ者も、等しく神の心のなかで思われているということなのか。確かにそう感じるときがある。時々、今は亡き人のことをふと思い出す。この定理はそういうことから着想したのかもしれない。

存在しない様態に関する idea 定理8

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