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生活すること

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生きるって何だろう?それは生活することなのではないだろうか────30才で伊東市にある海の街へ移住して感じたことを書いています。
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#伊東市

幸せの範囲

幸せの範囲

新井の街は、私の目にはアートのように映っている。斜面に沿って立ち並ぶ家並み、どこへ繋がっているのか分からない入り組んだ細道、坂を登れば登るほど姿を見せる海、辺りから聞こえる無数の鳥の声、時折り風に乗って漂う潮の香り。全てが今までの私の人生の中にはなかったもので、とても新鮮に、繊細に、穏やかに体内へと取り込まれていく。地元の人の目には故郷というフィルターがかかり、過去の思い出と共に今が共存しているか

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暮らしていく街から暮らしている街へ

暮らしていく街から暮らしている街へ

伊東市や伊豆地区などの特産品を集めた物産展「めちゃくちゃ市」へと向かう。毎年1月に行われていて、行くのはこれで2回目。昨年来た時はまだ移住したばかりの頃で、あれから1年経ったのだと実感。季節がぐるっと一周回り、同じ冬がやってきた。だけど、同じ冬でもあの時とは違う季節のように感じる。1年前までは知らない景色しかなく、知り合いもいなかった。それから移り変わっていく季節と共に景色を覚え、名前を呼んでくれ

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冬をまといながら探す春の気配

冬をまといながら探す春の気配

天気が晴れなことを確認し、新井からバスへと乗り込む。小室山の桜が咲き始めていると知り、見に行ってみることにしたのだ。伊豆の春は早い。小室山には15分ほどで行ける。新井経由での直行バスがあるからとても便利。

バスを降りると、少し肌寒い風が頬を伝った。でもそんな寒さは一瞬のことで、山頂までの登り坂で一気に身体がポカポカと温かくなる。犬と散歩している人からすれ違いざまに、こんにちは~と笑顔で挨拶されて

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海と共に緩やかに漂う

海と共に緩やかに漂う

半月ぶりに伊東へ帰ることにした。右手がまだ使いものにならないため、もうしばらくは生活サポートをしてもらうべきなのだけど、伊東へ帰りたくて帰りたくて仕方がなかった。もともと心の安定を求めて移住したため、伊東にいる限り私の心は安定する。きっとその心地よさを身体が覚えていて、求めてしまうのだろう。

小田原辺りで電車の窓から海が見えた瞬間、私の心は舞い踊った。待ちに待った海だ!こんなにも心が惹かれるもの

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街の向こう側に見える海を探しながら

街の向こう側に見える海を探しながら

クリスマスにサンタさんから腱鞘炎をプレゼントされたため、制作をストップして散歩へ出かけることにした。最近やりすぎだから休めよというメッセージなのだろう。駅前まで自転車を走らせ駐輪場に止めて、そこから歩いて松原の方へと向かった。旅行客らしき人たちとよくすれ違う。冬休みの学生や、すでに仕事納めをしてきた人たちなのかなと想像してみる。

伊東松原八幡神社の鳥居を横切り、ひたすら坂道を登って行く。歩いてい

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海の街へ移住したら

海の街へ移住したら

伊東へ移住して1年が経ったので、今しかないこの新鮮さをパッケージングしておくためにも、初めの1年で起きたことをまとめておくことにした。

伊東市は約半分が国立公園になっていて、国際観光温泉文化都市にも指定されている自然豊かな街。私が暮らしている「新井」という場所は、特に古い街並みが残っている漁村で、道端で干物が干されているのが当たり前の風景。高齢化が進み、空き家も増えているけれど、私がここでしか感

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新井の夏

新井の夏

4年ぶりに新井の夏祭りが行われた。祭りに参加するなんていつぶりだろうか。名古屋では盆踊りでダンシングヒーローを踊るのが定番で、普通の盆踊りらしい曲も流れる中、ダンシングヒーローが流れた時だけ皆んなが走り寄っていき、大声を出して踊った。最後の方はダンシングヒーローしか流れず、何度もアンコールが起きていたのを今でも覚えている。それが名古屋だけの文化だと知った時はカルチャーショックを受けた。皆んなで一緒

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一目惚れした街

一目惚れした街

私が今住んでいる場所へ引っ越した理由は色々と書いてきたけれど、簡潔にまとめると「街に一目惚れしたから」だった。その街に丁度いい物件があって決めたもんだから、どうして引っ越してきたのかを聞かれて答える度に皆んな首を傾げる。変わった人が来たって感じに(笑)どうして首を傾げるのかと言うと、古い家が立ち並ぶ不便な場所だからだ。社会問題にもなっている少子高齢化や過疎化が進んでいて、若者が暮らしていく環境が整

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