見出し画像

新井の夏

4年ぶりに新井の夏祭りが行われた。祭りに参加するなんていつぶりだろうか。名古屋では盆踊りでダンシングヒーローを踊るのが定番で、普通の盆踊りらしい曲も流れる中、ダンシングヒーローが流れた時だけ皆んなが走り寄っていき、大声を出して踊った。最後の方はダンシングヒーローしか流れず、何度もアンコールが起きていたのを今でも覚えている。それが名古屋だけの文化だと知った時はカルチャーショックを受けた。皆んなで一緒に何かをすると、そこからとてつもないエネルギーが生まれ、自分も一つのエネルギー体として高揚し、一種のドラッグのような感覚すらある。

1日目は山車を引き回した。私はダンシングヒーローを踊っていた人間だからそもそも山車というものを知らず、初めて近くで見た時はその大きさに驚いた。彫りが立派で、たくさんぶら下がる提灯が華やかに彩る。新井は東町、西町、中町の3つに分かれていて、山車もそれぞれの町に一つずつあり、3つの山車が同時に引き回される。後ろに機械が積んであったからエンジンなのかと思いきや、ただの明かり用の発電機で、動かすのは完全に人力のみ。山車の中には太鼓を叩く子供たちが乗っているからさらに重たい。昔より距離が短くなったらしいが、伊東特有の急な登り坂を人力のみで引っ張るのはかなり大変。漁師町らしい力技が試されるお祭りだ。フォー!とか叫びながらただ踊っていた名古屋の祭りの生ぬるさを感じた(笑)

出発進行
登り坂へ突入
後ろから押す人たちが一番大変そう
紐はかなり長い
西町の山車とのすれ違いざまに太鼓バトルが繰り広げられる

終わってからはプチ打ち上げみたいなものに混ぜてもらい、まだ会ったことのなかった新井の皆さんと話す機会を持てた。どうやら住んでいるとは思われていなかったらしく、どこから来たの?と聞かれる。新井に住んでいることを伝えると驚かれた。もはや驚かれるまでが定番のくだりになってきている。山車に乗らせてもらい、太鼓の叩き方を教えてもらい、干物屋さんから干物を、漁師さんからしらすをいただき、また少し新井の街へ溶け込めた気がして温かい気持ちでいっぱいになった。

2日目は神輿を担いで回るとのことで、朝の9時前に新井神社へ向かう。映像の撮影許可をもらっていたため、おそらく男性だけが参加できる場所へ自分一人だけ割り込ませてもらい、なかなかの緊張感。YouTuberですか?と聞かれたから、一応違いますと答えておいた。毎度のことながら自分の説明が難しい。神主さんが儀式を行う中、鹿島踊りも同時並行に行われ、その後神輿を担いで新井の街へと繰り出した。思った以上に大変そうで、連日なかなかの体育会系なお祭りである。こちらも昔より距離が短くなり、休憩も増えたらしいけど、それでも猛暑の中を相当な重さの神輿を担ぎながらたまに猛ダッシュするのは過酷そうだ。そんな皆さんの勇姿に感化され、私は私なりに貢献しようと思い必死に撮影。何度かある休憩ポイントで度々話しかけてもらい、普段はなかなか会えない漁師さんたちとも話ができて嬉しかった。YouTuberではないという自己紹介もようやくできた。6時間かけて新井の街を回り、夕方の締めで再び山車を引き回していた頃にはもうヘロヘロ。朝から一緒に回っていた人たちはピンピンしていて、漁師町の体力の凄さを実感。貧弱な私はそろそろランニングを復活させたいと思ったとさ。

鹿島踊り
新井神社を出発
休憩

最後は町内の役員さんなども参加する打ち上げにまで誘ってもらい、そこへひょっこり新参者の自分が混ざっているのが信じられなかった。でも同時にどこか懐かしさも感じていた。散々やっていたミュージシャンの打ち上げだ。それぞれの職業は違えど、全く同じ光景が目の前に広がっているのがなんだか面白かった。人生は本当に奇妙なことばかり。どこで何が起きるかは分からない。だから最近では予想するだけ、想定するだけ無駄な気がしている。思った通りになるほど人生はつまらないと感じるし、予測が未来になればなるほど思い通りにはならないからだ。だからもはやそんなことは考えない方がいいという結論に至った。人生はいかに予想外を楽しめるかだ。

改めて新井という場所が好きになった2日間。なんてカッコいい街なんだと心底惚れた。新井の夏はまだまだ始まったばかり。これからまたこの街でどんな日常が待っているのか楽しみだ。

この記事が参加している募集

#お祭りレポート

1,395件

#夏の思い出

26,395件

#この街がすき

43,736件

頂いたサポートは活動のために大切に使わせていただきます。そしてまた新しい何かをお届けします!