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ART と DESIGN の違い。

デザイン職について間もない若い頃

"作る"人間が、"語るだけ"になったらお終いだ。
"作った物"で語れよ。

みたいな言葉を目にして『確かにそうだな。間違いない。』と思い、自分の仕事にした【デザイン】というものを語る・発信することはしないで、15年ただひたすらに作ってきた。(したいと思わなかっただけですけど…)

インターネットの普及で手軽にデザイン知識を手に入れることができるようになったし、Adobeも地上波CMで嵐の二宮さんを起用して、デザイン業界以外の人にもAdobeソフトを使ってもらおうとしている。

昔だったら腕の見せ所だったような技術が、どんどんワンタッチで加工ができるようになり、誰でも扱えるソフトに進化しようとしている。

自分がこの世界に飛び込んだ最初なんかは、Macオペレーター(DTPオペレーター)なんて職種があり、デザインができなくてもAdobeソフトが扱えるだけで仕事があった。

数年前【AIに仕事を奪われる業種】なんて話題が多かった頃、経理部長に『デザインはAIに仕事奪われないですね』なんて言われたが、『確実に奪われていくと思いますよ』と返した。

AIの知識は興味が無いので全然ないが、AIの精度がもっと上がってくれば、居酒屋だったらこんな感じ、カフェだったらこんな感じ、堅い企業系だったらこんな感じ、一部の優秀なデザイナーがお手本を作りAIに学習させれば、デザイナーは今の10分の1くらいの人口で済むだろうな~なんて思ってたから。

訴求性の高さやブランドイメージ・広告戦略などの重要性を重んじない、とりあえずそれっぽい形になる。これが無料、もしくは安価にできるとしたら、個人商店や零細企業~中小企業は、AIデザインに間違いなく手を出すと思う。既にイラストやWEBサイトなど、AIが作ったというものを目にするようになった。

なので、グラフィックデザインであれば、作ってきたデザインの数(引き出しの多さ)と経験値、印刷知識や紙の知識、お金を生む為の広告としての意識の強さ、修行時代ともいえる下積みをしっかりやってきたデザイナーだけが、生き残っていける時代がもう近くまで来ているような気がする。


と前置きはこの程度で本題の

ART と DESIGN の違い

語らないを貫いてきたのに、なんでこの事に関して書きたいな~と思ったかというと、20代で一旦デザインの世界から挫折して、アメリカ古着のお店で販売スタッフをしていて、生粋のヴィンテージ古着好き、更に30代前半までは髪も長い&髭、普通の人じゃない風貌だった為、初めて会う人などに仕事を聞かれて『デザインの仕事をしている』というと、まるで芸術家のような扱いを受ける事が多かったから。

デザイン職に就いている方なら『そんなもんあたりまえやろ』と思うだろうが、デザインの仕事なんてまったく関心ない方からすると、意外とARTDESIGN同じようなものという認識が強いんだなと思った。


デザインというのはルールの枠内で行うのが基本。グラフィックデザインで言うと、レイアウトやフォントの使い方、画像処理の仕方、印刷に基づくデータ作成。細かい事を言い出せばきりがない。

プロダクトデザインで言うと、仕様に沿う生地、樹脂、金属の選定。量産時における効率の良さ。可能な範囲からコストを考え、製品の品質・売価・利幅を意識しながら削ぎ落としていく。

すべてルールの枠内で最善を尽くす。このルールと言えるものが、いわゆる基礎を学ぶということだと思う。

しかし、そのルールの枠内から飛び出してる??と思うようなデザインやアイデアを受け入れる余白もあるのが、デザイン業の面白い部分だと思う。昨今のHow to的なものを見ると、完全に設計図みたいなものも目にする。日本の企業などの相手をすると、その魅せ方(理由付け)の方が好まれるのも十分理解できる。  しかし、デザイン業の面白みの部分が奪われてしまっている印象も受ける。 簡単に言うと【こうじゃないとプロじゃない】を押し付け過ぎずに、色々なデザイナーがいていいじゃん。と思う。量産型デザイナーばかり生み出していると、それこそAIにデザインしてもらうので良い時代が来てしまう。

話が逸れたが、例えばクライアント様からアート作品のようなデザインにして欲しい。と言われれば、それまで自分の中にインプットしてきたアートからアウトプットして、ルールの枠内に基づき、"アート作品の様なデザイン"は出来るということになる。



対してART

アートの感性はないので、ここは主観になってしまうが、アートというのは上記のルールがまったくないものだと認識している。

こうしないといけない、こうなってたらダメ。なんてものは無く、その人の内から出てくるものをダイレクトに具現化したものが、アートなんじゃないかと思う。

その具現化したものに対して評価を貰う。という事になる。もちろん見向きもされなければ、1円にもならない。

まさに芸術家のようなイメージのあるミュージシャン 椎名 林檎さんが、その昔、雑誌のインタビューで『1曲はおよそ4分~6分程度。Aメロ・Bメロ・サビという曲構成という枠内(規制の中)でやっている以上、私はアーティスト(芸術家)ではない。』みたいな事をおっしゃっていたのが、凄く印象深かったし共感した。


■デザイナー
0から1は生み出せないが、1になったものを10、20と引き上げる仕事。

■アーティスト(芸術家)
苦しみに苦しみ抜き、0から1を生み出す。


ザックリではあるが、こう考えていくとARTとDESIGNは似て非なるもの。同じ部分は【作る】という部分だけなんだと思う。

これは、グラフィックデザインとプロダクトデザインを、本気で真剣に15年やってきた今の自分の個人的な考えであり、これもまた正解ではないかもしれません。


まぁ、そんな事より

アーティストなんて言われると気分は良いですけd


終わり





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