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なぜいま世界のトップ企業は「哲学」に注目しているのか?

フォレスト出版編集部の山田です。

昨今、欧米のビジネス界では、哲学をビジネスに積極的に活かす取り組みが行われています。

例えば、グーグルやアップルは最近、著名な哲学者を「イン・ハウス・フィロソファー(顧問哲学者)」やフルタイムで雇用して話題を呼びました。

彼らは、新しい商品やサービスの創出、答えのない難問を解決するために哲学者の力を借りているようです。

また日本の大手企業でも「哲学研修」を導入する動きが近年広がっています。

しかし、「ビジネス」と「哲学」は一見全く関係のないものに思えます。
一体なぜいま大企業は哲学に注目しているのでしょうか。

実は、哲学は使い方さえわかれば、ビジネスパーソンにとっての最強の武器になり得ます。なぜなら、哲学は答えの無い問題と対峙するうえで、新しい切り口を考えたり、新しい価値を生み出すための思考ツールだからです。

そもそも哲学は、2500年にわたり人類が培ってきた哲人たちの洞察や知恵の集積なので、ビジネスに役に立たないはずがありません。

一方で、哲学はどうしても難しそうなイメージがあると思います。また、哲学がビジネスに役立つのはわかったけど、結局どうビジネスに活かせるのか、その使い方が分かりにくいと感じられている方も少なくないのではないでしょうか。

そこで、とことんわかりやすい解説とイラストにこだわって、哲学の使い方を紹介する本をつくりました。本日4月10日Amazonで発売される『今までにない発想を生み出す アイデアの着眼点』(小川仁志・著)です。

「ビジネス哲学研修」のパイオニアの1人である著者が、実際にビジネスのさまざまなシーンでご活用頂けるように、アイデア発想のための10人の哲学者の着眼点をフレームワークとしてご紹介しています。

この本を読むことで、人とは違うものの見方「着眼点」を身につけることができます。新しい商品やサービスの創出、問題解決のための新しい切り口を考えたい方におすすめです。

本記事では、本書の「はじめに」と「目次」を全文公開いたします。



はじめに 誰もが考えつくアイデアでは面白くない


皆さんはアイデアと聞くとどんなことを思い浮かべるでしょうか?
私なら「ワクワクする」とか「面白い」とか「ハッとする」とか、そんな感じです。きっと皆さんも同じだと思います。 つまり、アイデアというからには、そういう驚くような内容である必要があると思います。

ではどうすれば驚くような内容になるのでしょうか?それはやはり常識を超えることではないでしょうか。あえていうなら、常識を超えないアイデアなんて本当の意味でアイデアだとはいえないように思います。

ビジネスに限っても、そんな常識を超えたアイデアを出せる人たちだけが、ゲームチェンジャーとしてマーケットを制するのだと思うわけです。G A F A(アメリカの主要IT企業の総称)はその典型でした。彼らは常識を超えたアイデアで次々とIT業界を席巻し、世界のゲームを支配するまでになったのです。

 そのGAFAもまた生成AIの登場で、さらなる新しいビジネスモデルを提示できるかどうかで命運が分かれつつあります。その証拠に、GAFAはやや遅れをとっていたマイクロソフトを加えてGAFAMと呼ばれたりもしますが、そうしておまけのようになっていた同社が今やAIビジネスの成功のおかげで大復活を遂げています。反対に盤石と思われたグーグルやアップルの方が新規ビジネスの創出に苦戦しています。

 そう考えると、「盤石という状態」こそが最大の敵なのかもしれません。この目まぐるしく過ぎる時代の流れの中では、盤石という名の安定の下、ひとたびアイデアを出さなくなったらおしまいです。

 私たちも例外ではありません。どのような規模、どのような業種に属していても、安定に甘んじた瞬間、下降が始まります。なぜなら、周囲は上昇しようと必死だからです。今はどの企業もこれまでのレガシーや成功体験を捨てて、懸命にイノベーションを模索しています。まさに賢明な選択といえるでしょう。

 そのイノベーションの鍵を握るのが常識を超えたアイデアになります。では、どうすればそんなアイデアが出せるのでしょうか?

 答えは簡単です。常識を超えた思考をすればいいのです。この世には幸い常識を超えた思考をするための学問があります。
そう、哲学です。詳細はこの後本文で解説しますが、哲学とは常識を超えて思考することであり、そのための思考法にほかなりません。
 したがって、それを使ってアイデア出しをすれば、当然のことながら驚くようなアイデアが出てきます。本書ではそのノウハウを余すところなく紹介しています。

 とりわけ歴史上の傑出した哲学者たちによる10のすごい着眼点を紹介し、それをどう使えば面白いアイデアが出るか、具体例を踏まえて解説しています。演習もついているので、ぜひ実践してみてください。

 ところで、このようなビジネスのためのアイデア本を哲学者が書くことについて、不思議に思われる方もいるかもしれません。

 しかし、哲学がビジネスに有効であるという点では、哲学をかじったことのあるビジネスパーソンやコンサルタントが書くより、本物の哲学者が書いた方が安心感や説得力があるのではないでしょうか?
 なにしろ哲学は難解な学問ですから。
 しかも私はその難解な哲学をわかりやすく市民に伝えることをライフワークにしてきました。市民と普通の言葉で哲学する「哲学カフェ」を20年近く1000回以上にわたって開催してきましたし、テレビで哲学を紹介するということもNHKの番組をはじめとして足掛け7年ほどやってきました。
 それでも、やはり哲学者にビジネスがわかるのかという疑問が投げかけられることはあります。ここで皆さんに安心してこの本を読み進めていただくために、大事な情報をお伝えしておきましょう。

 先ほど、これまでGAFAが常識を超えたアイデアを次々と出してきたとお伝えしましたが、実はその背景で彼らは哲学者の力を借りていました。
 哲学者を雇って、アイデア出しの手伝いをさせてきたということです。だから哲学者だってビジネスにアドバイスすることはできるわけです。さらにいうと、私の場合、もともとは伊藤忠商事の商社マンです。それがひょんなことから哲学者になったということで、マインドは今もビジネスパーソンであることに変わりありません。だからビジネスに哲学を用いる「ビジネス哲学研修」のパイオニアの一人として活躍できているのです。
 AIやDXが花盛りである現代において、ビジネスの世界で哲学がどう使われ始めているのか。ぜひその目で確かめていただけると幸いです。
 
 

アイデアの着眼点◎目次

はじめに 誰もが考えつくアイデアでは面白くない

第1章 アイデアを生み出す「哲学思考」とは?

◎そもそもアイデアとは何か?
◎なぜ哲学がアイデア発想に役立つのか?
◎今ビジネスパーソンが哲学を学ぶべき5つの理由
◎企業が注目するビジネス哲学研修とは?
◎なぜAIに哲学はできないのか?
◎本書のトリセツ

第2章 世界の見え方が変わる10人の哲学者の視点

◎詩学――アイデアは物語から始まる アリストテレス
◎コペルニクス的転回――見たものをそのまま信じない カント
◎弁証法――「ピンチ」を「チャンス」に変える ヘーゲル
◎現象学的還元――世界を括弧に入れる フッサール
◎エピステーメー――構造を読み解く フーコー
◎脱構築――一から作り直す デリダ
◎逃走線――創造のためにあえて逃げる ドゥルーズ
◎可能世界――別世界から捉え直す ルイス
◎可塑性――まだ創造の途中だと捉え直す マラブー
◎新実在論――認識によって存在を変える ガブリエル

第3章 10人の哲学者の視点はこう使う

◎売れるストーリーをつくる――詩学
◎新しいビジネスチャンスを見つける――コペルニクス的転回
◎立ちはだかる問題をポジティブ転換する――弁証法
◎真実を捉え直す――エポケー
◎前提を変える――エピステーメー
◎埋もれている可能性を大化けさせる――脱構築
◎四方八方にアイデアを出す――逃走線
◎本質を組み換える――可能世界
◎バージョンアップする――可塑性
◎異次元の視点で捉え直す――新実在論

第4章 アイデアを出し続ける思考習慣

◎よく驚く――プラトンのタウマゼインより
◎よく観察する――ベーコンの経験論より
◎よく遊ぶ――カイヨワの遊び論より
◎よく妄想する――ニーチェのパースペクティブより
◎よく寝る――ヒルティの睡眠論より

第5章 アイデアを形にする方法

◎設計する――三木清の構想力からのヒント
◎自分を磨く――プロティノスの美の哲学からのヒント
◎行動しながら考える―西田幾多郎の行為的直観からのヒント
◎アイデアは「試作」と心得る――デューイのプラグマティズムからのヒント
◎3つの要素をもつプレゼンをする――アリストテレスの弁論術からのヒント

おわりに AI、哲学、人間

【著者プロフィール】
小川仁志(おがわ・ひとし)
哲学者・山口大学国際総合科学部教授
1970年、京都市生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。専門は公共哲学。商社マン(伊藤忠商事)、フリーター、公務員(名古屋市役所)を経た異色の経歴。徳山高専准教授、プリンストン大学客員研究員等を経て現職。哲学をベースにした課題解決に取り組む傍ら、市民のための「哲学カフェ」を主宰するなど哲学の普及に努め、分かりやすい哲学解説には定評がある。「世界の哲学者に人生相談」や「ロッチと子羊」(Eテレ)などにレギュラー出演。著書はベストセラー『7日間で突然頭がよくなる本』や『ジブリアニメで哲学する』をはじめ100冊以上。YouTube「小川仁志の哲学チャンネル」でも配信中。

いかがでしたでしょうか。
今までビジネスにはあまり役立たないものと思われがちだった哲学ですが、大企業では答えのない時代で新しい価値を生み出すために哲学が注目されているとのことでした。

新刊『アイデアの着眼点』では、単なるコンセプト紹介にとどまらず、哲学者の視点を「ツール」として実際に使えるように、イラスト付きの解説と演習をご提供しております。本日4月10日からネット書店および全国書店で順次発売されます。もしご興味ありましたら、ぜひチェックしてみて下さい。


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