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意見を伝えるときは「3」を意識するといい

学校の授業や会社の会議などで、指されないように下を向いたり目線を外したりすること、ありますよね? 

明治大学教授の齋藤孝先生が、自分の意見を持つために日頃意識するといいこと、また、話が伝わりやすくなるポイントを教えてくれました。

『10歳からの伝える力』(齋藤孝 著)より、抜粋してご紹介します。

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ふだんから物事に対する自分の考えを持っておく

 授業だけじゃなく、ふだんから身の周りのことに対して自分なりに考え、意見を持っておくことを心がけよう。そうすることでおのずといろんなことに興味を持てるようになるし、急に話をふられたり質問されたりしても、ぱっと自分の意見を出せるようになるんだ。
 意見を持つ訓練にとても役立つのが新聞だ。毎日、新聞の気になる記事を切り抜いて、ノートの左側に貼ってみるといいよ。小学生だったら、そろそろ新聞を読めた方がいいからね。『子供新聞』でも、インターネットの記事をプリントアウトするのでもいいんだ。
 その記事をノートの左側に貼ったら、自分が大事だと思うキーワードを3つ探して丸をする。ノートの右側には、そのキーワードに沿って、記事の要約(要点のまとめ)を書いてみる。たとえば、「近年、地球温暖化が問題で、電気自動車がこれからの主流になる」という内容の記事だったら、「地球温暖化が問題で、電気自動車がこれからの主流になる」という内容の記事だったら、「地球温暖化」「二酸化炭素」「電気自動車」などのキーワードを拾って、それに沿って要約してみるんだ。この「新聞切り抜き練習」をくり返すと、自分が今何に興味があるのか、そのことについてどう考えているのかを、どんどん言葉にしやすくなっていくよ。
 この練習をもっと効果的にやりたい人は、自分が書いた要約を使って、それがどんなニュースかというのを、家族やまわりの人に説明してみよう。実際に発表するときの練習になるんだ。説明するときは、いつもの話し言葉じゃなくて、ニュースのアナウンサーみたいに話してみるといいよ。アナウンサーと同じ「書き言葉」で話すことで、話すときの日本語力もぐっと上達するからね。

ポイントは3つが鉄則!

「新聞切り抜き練習」で拾うキーワードは3つって言ったよね。だいたいのニュースの大事なことは、キーワード3つで話せることが多いんだ。
 新聞記事だけじゃないよ。漫画のなかで高校生の真友お姉さんも言ってたけど、授業中も「先生の話のポイントはなんだろう?」と考えながら、授業のポイントをノートに3つ書き出してみると、授業が全然変わって見えるよ。授業中にボーっとしたり、眠くなったりするヒマなんてなくなるんだ。授業の内容が頭に入りやすくなって、そのぶん、意見や質問もどんどん湧き出てくるようになるよ。そうすると、ユウキみたいに少しずつ結果もついてくるようになるからね。
 この「3つ」という数はすごいんだ。聞いている方も話している方も無理なく覚えられるちょうどいい数なんだよ。2つだと大まかすぎるし、4つだととたんに覚えにくくなる。信号機を思い浮かべてみて。赤青黄の3つに、紫とかオレンジとかもう一色足されたらどうだろう? 紫ってなんだっけ? オレンジってなんだっけ? ってなって、思いだそうとしているうちに事故……なんてことにもなりかねない。3つというのはちょうどいい数字なんだ。
 発表するときももちろん同じ。伝えたいことは3つのポイントにまとめるといいんだ。世のプレゼンテーション(「発表」のこと)の達人たちもみんな、「話は3つでまとめるように」と言っているくらいだからね。発表する内容についてポイントを3つ考えることは、「自分の意見・伝えたいこと」を必ず3つは考える訓練にもなるよね。たとえば、自分の好きなアニメについて、それまではただ「好き!」としか思っていなかったことを、「どういうところが好きなのか」、3つか投げる。

「絵がきれい」
「主人公のキャラクターに共感できる」
「声優がいい」

 など出てくるよね。
 こうやって3つにこだわって考えてみると、「だから自分はこのアニメが好きだったんだ!」って自分のなかにも新たな発見ができるんだ。だから、まずは自分の好きなこと、好きなものについて、「なぜ好きなのか」「良いところは何か」などテーマをいくつか考えて、ポイントを3つ書き出す練習をしてみよう。
 ちなみに、3つのポイントは、それぞれあまり近くない内容がいいんだ。近すぎると内容にかたよりが出てしまうからね。
 たとえば、スポーツでよく使われる「心技体」という言葉。これは「精神(心)・技術(技)・体力(体)」というそれぞれまったく別の3つがそろうことで、バランスが取れているよね。「立法・行政・司法」の「三権分立」なんかもそうだね。カメラを立てる三脚のようなイメージで、それぞれ離れたところからバランスよく3つポイントを選ぶと、話が伝えやすくなるんだ。「このアニメの何が好きなのか?」というテーマで、3つのポイントを「絵がきれい」「絵の線が繊細」「絵の色使いが好み」としても、あまり違いがないし、くり返しが多くなって、「絵」のこと以外に話が全然展開しなくなってしまうよね。
 たとえば、実際にみんなの前で話をするときは、

・はじめの言葉「今日は僕の好きなアニメ○○についてお話しします。僕がこのアニメを好きなポイントは3つあります」
・伝えたいポイント1「とにかく絵がすばらしい」
・伝えたいポイント2「主人公にものすごく共感できる」
・おわりの言葉「みんなに観てもらって、一緒に感想を話し合いたいです」

 という感じだね。

 はじめの言葉とおわりの言葉も大事なんだ。
「これからこういう話をするよ。ポイントは3つだよ」と最初にみんなに知らせると、聞く方も心の準備ができるし、テンポ良く楽しく聞ける。そして、おわりの言葉も先に決めておくことが肝心。おわり方を失敗したら台なしだからね。体操競技と同じで、着地点を決めておかないと、おわり方がわからなくて、マットの上に頭から落ちるみたいなことになっちゃう。「最後、どうやっておわろうかな」と考えているうちに、だらだら話し続けてしまって、聞いている方もイライラしてくる。だから、話し始める前に、おわりだけは決めておこう。最後の言葉を決めておくだけで、ちょっと道をそれても、失敗せずにきれいに着地できるからね。

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はじめの言葉、ポイント1、ポイント2、ポイント3、おわりの言葉

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「おわりの言葉」があるときれいに着地できる!

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こんなときにも「おわりの言葉」を

(漫画:『10歳からの伝える力』より)

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(編集部 杉浦)

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