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かならずしも「お肌には保湿が大事」ではないという話。

前回、皮膚は、体重の約8%を占める人体最大の臓器であり、私たちを守ってくれている大事なバリア機能である、というお話をご紹介しました。

では、どうしたら、このバリア機能を健康に保つことができるのでしょうか? お肌を保護しようと、よかれと思って使っている化粧品が逆効果になってしまっている場合があるようです。

『ウソをつく化粧品』(小澤貴子 著、2015年刊行)より抜粋・編集して、ご紹介いたします。

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必要以上の保湿は肌の新陳代謝を阻害する

 前回、表皮細胞は、生まれた瞬間から死に向かうことで、肌のバリア機能を保っているとお話ししました。角質層という「外界からの防御壁」を生産・維持し、新陳代謝することで、私たちの体を守っているのです。

 しかし、間違った肌のお手入れによって、このしくみに不具合が生じることがあります。
 たとえば、「皮膚細胞をイキイキさせる」イメージだけでつくられた保湿系の美容液を使ったときです。表皮は本来早く死ぬことを義務づけられていますから、皮膚のごく表面にある角質層部分の細胞は死んでおり、それが正常な状態です。しかし、保湿化粧品を使うと、不全角化が起き、表皮が正常に死ぬことができなくなってしまいます。表皮が死んでいくためには、

・肌の細胞の水分蒸発を邪魔しないこと
・角化を邪魔するような過剰な水分や栄養を与えないこと

が大切です。
 にもかかわらず、水をたくさん送り込んだり、皮膚のうえにビニールでふたをしてしまったり、肌にぐんぐん水を浸み込ませるような化粧品を使ってしまう。結果として、角質層の近くにたどり着いた細胞は、水分過剰になり、細胞核が壊れることができません。細胞が皮膚のごく表面で死にきれていない状態です。
 正常に角質層がつくられなくなれば、当然、正常なバリア機能は形成されません。そのまま時間が経つとどうなるでしょうか?
 本来、乾いた角質であれば、いらなくなると、パラリ、パラリと1枚ずつきれいにはがれ落ち、垢となります。それが、湿った状態のままだと、じゅくじゅくしてしまって、10枚、20枚という塊のままではがれてしまうのです。すると、お肌はデコボコになり、パウダーファンデーションを塗ったりしたときに、化粧ムラができてしまいます。ごく表面の皮膚が死にきれていない肌は、生きている大切な内部の肌にとっても、とても不健全な状態です。
 また、こうした肌になると、多くの方が水溶性ポリマーや水溶性の天然保湿因子(NMF)を配合した保湿化粧品を使います。そうすると、表面はポリマーや水溶性成分で潤っているように見えますが、実際、肌の内部はスカスカのままで乾燥を感じます。こういう肌を化粧品業界や女性誌は「インナードライ」「大人肌」などと呼び、私たちにさらなる保湿の必要性を訴えてきます。ですが、水分を過剰に与えても、バリア機能も角質層も正常になりません。角質細胞の一部は死ぬと分解されてアミノ酸などになります。保水性があるので、天然保湿因子といわれますが、これも角質細胞がきちんと死ぬことでつくられるものです。
 こうしたインナードライのベースにあるのは、保湿化粧品によってバリアが壊された乾燥肌であり、角質層のバリア機能の低下と皮脂という油が不足した状態です。乾燥の原因は水分の不足ではなく油分によるバリア機能の不足なので、さらに保湿効果の高い化粧品を使用しても意味はありません

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(編集部 杉浦)

Photo by Jocelyn Morales on Unsplash


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