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あなたの会計士・税理士はテクノロジーに強いですか?

公認会計士・税理士として1000社以上の経理を見てきた町田孝治さんは、早稲田大学理工学部を卒業し、プログラミングもお手のもの、という異色の会計士。それまで1500人程度の年末調整を引き受けていた町田さんですが、ある年、3万5000人分の年末調整の依頼を受けてしまいます。社内からは大クレームの嵐だったそうですが、町田さんは自身が培ってきたスキルを活かし、自らシステムを開発。前代未聞の「年末調整プロジェクト」を無事に乗り切ります。町田さんは、「最も効率的に数字を作る」ことに切実に向き合っているからできた、と言います。

今回も、前回に続いて、【ビジネスを飛躍させる会計士・税理士の選び方】のもう一つの条件を町田さんに教えていただきます。

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古いパソコンやソフトを使い続けている税理士・会計士は多い

これからの時代、税理士や会計士を選ぶときに大事なのは「新しいテクノロジーに強いかどうか」という点です。
残念ながら、会計業界はかなり保守的で、新しいテクノロジーの導入という点では、それほど進んでいるとはいえません。
今の時代、会計ソフトを使っていない会計事務所はさすがにないと思いますが、バージョンアップしていないままだったり、機能を使いこなせていないというケースがよくあります。情報不足で新しい便利なテクノロジーについて知らないのです。
税理士や会計士の中には「慣れているから」といまだに古いパソコンやソフトを使い続けている人たちがめずらしくありません。
それは、おそらく税理士・会計士に、前述した「均質採択」が高い人が多いからではないかと思います。
「今うまくいっているのだから、新しく変える必要はない」という心理状態になりやすいのです。
たしかに、パソコンやソフトを新しいものにすれば、費用もかかりますし、使い方に慣れるまで多少の時間は必要です。それを「面倒だ」「このままでいい」と感じてしまうのでしょう。
現時点ではいくら高いクオリティで作業ができていても、そのやり方でずっと大丈夫とは限りません。今、そろばんと手書きの税理士や会計士がいたら、さすがに「大丈夫かな?」と心配になるでしょう。
時代は先へ先へと進んでいきます。古いパソコンやソフトでは、新しいテクノロジーに対応できません。クラウド会計やネットバンキング、AI活用も含め、便利な道具やテクノロジーを使っていくことがやはり必要なのです。

数字という「ものづくり」

この章では「攻める経理」の第1ステップである「最も効率的に数字をつくる」ということについて述べていきたいと思います。
「数字を作る」とは、実態ビジネスから記帳をして試算表にしたり、PL(損益計算書)、BS(賃貸対照表)、CF(キャッシュフロー計算書)などの財務情報として完成させることを指しています。
この数字を作る作業は、

「誰がやっても」
「どれだけ時間がかかっても」
「どこでやっても」

必ず同じものがつくれます。
そうであれば、

「1円のミスもなく」
「1分でも早く」
「1秒も無駄なく」
「できるだけ自動で」

完成させるべきことは明白です。
ですが、一般の中小企業でそんなふうに数字を作れているところは少ないようです。

「ミスをしては直し」
「長い時間をかけ」
「無駄な作業かどうかも判別できず」
「何度もチェックを繰り返す」

そんな状態で経理が行われています。
しかも、そんな前任者の仕事のやり方を「これには意味があるのかな?」と思いながらも、10年、15年と続けているというケースもよく聞きます。
こうしたその場しのぎの経理で「攻める経理」などできるはずがありません。
これは本当にもったいない話で、日本にとって大きな経済的損失とも言えます。
「最も効率的に数字を作る方法」を追求するに当たり、私もいろいろ考えました。
材料を集めて、それを組み立て、1つの成果物を完成させる。これは「ものづくり」と全く同じではないかと考え、「ものづくりの最高峰を見たい」と2018年10月、社員4名で、トヨタ自動車様の工場見学に参加してきました。
そこでは「かんばん方式」をはじめとする様々な工夫を目の当たりにすることができました。
完全に自動化している部分、人の手が加わる部分、モノの移動の動線、工具の置き方、エラーが起きたときの対応、進捗の把握の方法、工場全体の状況を誰もが見える化できる工夫など、本当に参考になりました。
なぜなら、それは私が考えていた通り、経理における「最適化の法則」でもあったからです。
会計処理の基礎となる資料(領収書や請求書など)を集めて、それらを作業のしやすい方法で組み立て、部品となる仕訳を一つ一つ完成させ、それを完全に組み合わせて決算書が完成する。
そういうプロセスを実際のものづくりになぞらえたら、トヨタは参考にすべきことの宝庫だったのです。

『会社のお金を増やす 攻める経理』より抜粋・編集)

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(編集部 杉浦)

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