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トランジション期とポートランドの本屋|アメリカ・シアトル〜ポートランド旅行記

なにをしたらいいかわからない時に、やることは決まっている。尊敬する人に会いにいくことだ。当時の自分なりの処方箋はそれしかなかった。

今日、本棚の整理をしていてふと、そういえば4年前の今ごろはアメリカ・ポートランドの本屋にいたなあ、、と思い出した。

2018/12/17

12月末に退職を控えたわたしは、有給休暇を持て余して母校の研究室にいた。
先生と話しているうちに、なんだかアメリカのシアトルに行った方が良さそうな気になってきて(これもよくわからないんだが)、その場で次の日のフライトを予約した。たしか往復で9万円ほどだった。
↓実際のメール


17日の昼過ぎに予約
嘘みたいだけど、本当に次の日のフライト

当時、仕事を辞めることは決まっていたものの、次はまったく決まっていなかった。
先も決めずに不安じゃないの、とよく聞かれたけれど、忙しく働きながら先のことを考えられるほど器用ではなかったし、仕事を辞めて余白をつくりたかった。余白をつくればおのずと次が見えてくるんじゃないか、というなんとなく危うげな願望があった。

今こそ、お世話になった尊敬する人に会っておこう、と思った。そして、会えばなにかしら次の一手が見えるんじゃないか、というあわよくばの期待もあった。それで、勢いのままにシアトルに行った。(早すぎる行動に自分で引いた。)

✈️

2018/12/18

1週間ほどの滞在。最初の2日だけ泊まる宿をAirbnbで予約した以外はなにも決めていない。泊まった宿のオーナーがマリファナを吸う人で(ワシントン州ではマリファナは合法)、夜中に煙の匂いがしてやや不安な気持ちになる以外はすごく快適な滞在だった。

Green Lake

毎日、近くの湖を散歩しては、同じコーヒー屋さんに行って、同じカフェラテを頼んだ。ぼんやり考え事をしたり、持ってきた本をぱらぱらと読んだ。同じように仕事を辞めてデンマークに行っている先輩と連絡を取り、こうでなくっちゃねー!と謎に共鳴した。

大好きなZoka Coffee。論文を書いたり、仕事をしている人も多かった。
ワシントン大学の図書室

たいした観光もせず、のんびり過ごしていた4日目。会いたいと思っていたKeiさんとやっと連絡が取れた。懐かしいオフィスを訪れ、短い時間だけどゆっくり話ができて幸せだった。

わたしの状況をひと通り聞いてKeiさんは、「そうか、じゃあ今はトランジション中なんだね。」と言った。
トランジション?そんな捉え方があるなんて!
それまで、先が決まっていないことに対してどこか引け目を感じていたが、そのひと言を聞いてふっと楽になった。今は変化の最中なんだ、と捉えることによって、焦らず自分のペースで進もう、という気持ちになれた気がする。

オフィスが入っていた建物

ひさしぶりの再会で嬉しかったものの、期待していた具体的な次の一手がすぐにわかるはずもない。さて、帰国したらどうしよっかなーと思いながらも、ゆるやかな会話をたのしんでいた終盤に、おすすめの本を紹介された。

「この本、もしかしたら今のまどかちゃんに合うんじゃないかな。」

2018/12/23

どうやら、ポートランドのPowell's Booksという本屋がおすすめらしい。迷わずバスで3時間かけて行った。

Powell's Books

ちょうどクリスマスを控えた時期。本屋に来る人なんているのだろうか。
そう思いながら本屋へ入ると、予想とは裏腹に店内は人でいっぱいだった。ホリデー前にこんなに本を買い込むのか。正直、驚いた。

店内はめちゃくちゃ広い

店内の広さと内装のユニークさ(階段がいくつもあり、ぐるりと1周できる迷路のような立体感)、本を買い込む人々のわくわくした雰囲気。本を抱えて店を後にする人々の後ろ姿。
ホリデー前に本屋に来るというのはいいなあ。
たぶん2時間ほど店内にいて、おすすめされた本と、もう一冊気になった本を買った。
この雰囲気だけは、これからもずっと覚えていたい、と思った。

そのまま、ポートランドにも2日ほど滞在した。街は、小さいけれどユニークなお店ばかりで、歩いているだけでもたのしかった。ポートランドの街のスローガンが「Keep Portland Weird(変わり者であり続けよう)」だと聞いて、さらにこの街が好きになったことを覚えている。

✈️✈️✈️

2022/12/25

「クリスマス」と「本」から、ポートランドのPowell's Booksを思い出すことはなんだかうれしい。たった数時間の経験でも、こうやって記憶に残り続けるんだなと思う。タイミングよく(衝動的に)ポートランドへ行った過去の自分にナイス!と言いたい。

あの時買った2冊の本は分厚くてまだ読み切れていないのだけど笑、とにかく尊敬する人に会いにいって、あわよくばKeiさんと一緒になにかやりたい、と思っていた夢は、想像よりも早く具体的になっている。すでにいくつかイベントは一緒にやらせてもらっているけれど、これからはプロジェクトを一緒に進めていくことになりそうで、うれしいと同時に気が引き締まる。

先のことがなにもわからない時期を、トランジションと捉えてぐっと耐えたこと。その時期をすごしたからこそ迎えられている今の状況が、過去の自分からしたらクリスマスプレゼントなのかも。
…なんてうまいこと言っちゃったかなあと思いつつ、思い出を振り返るのも悪くないなと思った2022年のクリスマスなのでした。

Merry Christmas ! 🎄✴︎

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