まどさん

′92 ささいなことを。

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小さくてもひらかれた場、と変わっていくこと

″学びの場″や″市民参加のまちづくり″と言われる場に関わることが多いけれど、なぜやっているかと聞かれたら、恩返しみたいなものだなと(おこがましいけど)心のどこかで思っている。 今わたしが出会えてよかったと思える人たちは、何かしら”きっかけ”があったから出会えている人たちだ。そのきっかけは偶然でなく、誰かがつくったから生まれたものだったりする。例えば、飲み屋で偶然出会ったという話も、飲み屋がなかったら出会わなかったわけで、そこには必ず飲み屋をつくったオーナーがいる。ありふれた

    • はたらきかた。都合の良い居場所、についての覚え書き。

      20歳の頃、ゆくゆくは自分で事業をやったり小さな組織で経営に関わってみたい、とぼんやり考えていた。 それは私が自営業の家で生まれ育ったことも影響しているだろうし、学生の頃に出会った大人たちが、軒並みユニークな生き方をしていたのも大きい。彼/彼女らから滲み出る芯の強さ、主導権を持ってしなやかに生きる姿に憧れ、「自由だけど、まあ大変なことも多いよ」と、苦労を受け入れながらも笑って話す感じが、カッコよく見えたんだった。 自分も彼らのように自由な生き方を選んでいきたい。尊敬する人

      • 編み物ユニット「knit&」を立ち上げてから1年が経ちました。

        編み物ユニットknit&(ニットアンド)をスタートして早くも1年が経ちました。 2022年の秋、私に編み物を教えてくれた深月(みつき)と一緒に、編み物の楽しさを感じられるきっかけをつくりたい、世界のニットデザインに気軽に触れたくなる機会をつくりたい、という思いから、コースターを編めるキットをつくってワークショップを開催したのが始まりでした。 手探りで始めた編み物ワークショップも、回を重ねるごとにアップデートされ、おかげさまで初心者向けキットの種類や開催場所も増えました🤍

        • 書き込まれた本と、共有の記憶

          「自由に書き込んでいいよ」と言って、 友人に本を貸したことがある。 久しぶりに岡本太郎の本『自分の中に毒を持て』をひらくと、鉛筆で書き込まれた跡があった。記憶を辿ると、たぶん大学生活最後の2015年だと思う。2人にこの本を貸して、書き込んでもらったのだ。 大学生活が残りわずかになったその頃、大学生っぽいことをやっておきたいから本を読もう、という適当な動機で図書館に通っていた。最初こそ形から入ったものの、おもしろい本に出会うと芋づる式に他の本も読みたくなり、小説や人文書を中

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        小さくてもひらかれた場、と変わっていくこと

          トランジション期とポートランドの本屋|アメリカ・シアトル〜ポートランド旅行記

          なにをしたらいいかわからない時に、やることは決まっている。尊敬する人に会いにいくことだ。当時の自分なりの処方箋はそれしかなかった。 今日、本棚の整理をしていてふと、そういえば4年前の今ごろはアメリカ・ポートランドの本屋にいたなあ、、と思い出した。 2018/12/17 12月末に退職を控えたわたしは、有給休暇を持て余して母校の研究室にいた。 先生と話しているうちに、なんだかアメリカのシアトルに行った方が良さそうな気になってきて(これもよくわからないんだが)、その場で次の

          トランジション期とポートランドの本屋|アメリカ・シアトル〜ポートランド旅行記

          思いがけずこぼれおちてしまうもの|北海道美瑛町にて

          8月で30歳になる。いきなり年齢の話をするのもなんだよ、という感じだけど、節目っぽい年齢だしいいかなと思って書き始めた。 30歳を目前にして、ふと20代を振り返ると、ずっと20歳前後に出会った人たちの背中を追いかけてきたなあと思う。 私より少しだけ大人で、知らない世界を教えてくれた人たち。理由なく惹かれた彼らの生き方や言葉。無意識に、彼らの存在を心の隅っこにおきながら過ごしてきた気がしている。 年齢なんて関係ないさと思っているし、気にしない方が格好いい。けれど、ひそかに憧

          思いがけずこぼれおちてしまうもの|北海道美瑛町にて

          うるさいけれど、ほっとする謎。

          なぜだろう、静かすぎる。 ふと夜が静かなことに違和感を感じたのは、春から夏へ移り変わる5月末の頃だった。 私の部屋に遊びに来た友人は皆「この部屋は静かでいいね。」と言う。車も人通りも少ないし、近くに電車が走っているわけでもない。うん、静かでいい。けれど今年はなぜか落ち着かなかった。 ちょうどその時期に実家へ帰った。田植えが終わり、田んぼには水が張られている。日が暮れた頃に聞こえてきたのは、何十匹ものカエルの声。 あぁ、そうだ。この時期はいつも、カエルの声がうるさいと言いな

          うるさいけれど、ほっとする謎。

          窓と煙草とおじさんと。

          窓から外を見ると、煙草をふかしているおじさんが目に入った。 まただ。何回目だろう。いつも外階段の踊り場で手すりにもたれて煙草を吸っている。距離にして25mぐらい。私の家とおじさんの家の間には駐車場があって、遮る建物はない。 何をしている人なのかは知らない。くたびれたジョージクルーニーみたいだなと思っていたが、もっと似ている人がいた。笑点の小遊三(こゆうざ)師匠だ。四角くていかつい雰囲気だけど、ちょっと可愛い。 向こうもぼうっとこちらの方を見ている気がして、なんとなく目が

          窓と煙草とおじさんと。

          タグ付けしない生き方

          自分はこれをやっている人間です。これが目標で、だから今こんなことをしています。 そういう「強い主張」ができなければ、自分の存在を見失ってしまいそうでダメだと思っていた。 意外だと言われるけれど、ずっと自己紹介が苦手だった。相手がどんな人かもまだわからないのに、なにを話せばいい?自己紹介をがんばったところで大体忘れちゃうでしょう?みたいなひねくれた自分もどこかにいる。(ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の中で慎森もそんなことを言っていた気がするし) 自分を表現する#タグは

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          ふと東京を離れたくなる理由

          しばらく東京で生活していると、ふとした瞬間に東京から離れたくなる。今回も特に計画していたわけではないタイミングで思い立ち、 「個人的なことで恐縮なのですが…山を見ないと心が弱ってしまうので…1週間ほど実家からリモートで仕事します」 と、冗談半分、本音半分、ぼそぼそと上司に言いながら東京を出てきた。 東京の近所との距離感の近さなのか、それとも街を歩く人の雰囲気の違いなのか、何が理由かはわからないけれど、じわじわと自分の世界が騒がしくなってくる。 そして、東京から離れた時

          ふと東京を離れたくなる理由

          寅さんみたいになりたい人と、10年の月日

          ことあるごとに寅さんみたいになりたいぜと言っている友人がいる。苗字が後藤だから「ごっちゃん」。 ごっちゃんは学生時代、富士見荘という木造アパートに住んでいた。風呂がないので毎日銭湯生活。銭湯がいかに素晴らしいかをわたしに教えてくれた。 着ているのはいつも適当なTシャツと、ボロボロでぺらぺらのピンクのビーサン。久々に会った時にちゃんと靴を履いているから、あれビーサンは?と聞いたら、ついに破れて仕方なく靴を買ったらしい。 ご飯を一緒に食べればだいたい店の人から一杯飲む?とお酒を

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          旅と編み物、そしてガイドマップに載っていない場所|瀬戸内〜岡山〜鳥取旅行記2

          今回の旅の目的のひとつは、旅先で編み物をすること。以前、蒼井優さんの記事で、"旅先で手芸屋さんに行くのが趣味"という話を見てから憧れていたのだ。 編み物の良さを語ろうとするときりがないのだけど、やっぱり、棒針と毛糸さえ持っていればどこでもできるところがいい。カフェでお茶を飲みながら、友達と話しながら、移動中に、寝る前に。でも、旅先でっていうのはそんなになかった。 編み物に没頭するためには、いろいろと条件がある。例えば、長時間いたくなる場所、急かされない、などが基本条件。そ

          旅と編み物、そしてガイドマップに載っていない場所|瀬戸内〜岡山〜鳥取旅行記2

          ごくごく、小さな町で生きる人。|瀬戸内〜岡山〜鳥取旅行記1

          駅のホームから改札への階段を上がっていると、電話が鳴った。 「ついた?改札でたら、右側のタクシー乗り場の方な。」 岡山から特急やくもに乗って、鳥取の日本海側の方までやってきた。初めて降り立った米子という町は、県内では2番目の都市らしい。10月も終わりに差し掛かった18時すぎ。空はすっかり暗くなっている。 彼と最後に会ったのは2013年の冬だから、実に7年ぶりだ。今回休みをとってひとり旅をすると決めたとき、昔よく通っていた鳥取のある町に行こうと思った。そこで、そこに住む彼

          ごくごく、小さな町で生きる人。|瀬戸内〜岡山〜鳥取旅行記1

          「つまるところ、人間関係ってエゴなんだと思いますよ。」

          「つまるところ、人間関係ってエゴなんだと思いますよ。もっと正直に、エゴをぶつけたっていいじゃないですか。相手に合わせてばかりの先輩を見てても、なんか物足りないですよ。」 お酒が入った勢いで、つい言ってしまった。 私からするとその先輩は、やや人に対して気をつかいすぎていて、自分を出せていない感じがあった。だから引っかかって、思わずそんな言葉を言ったのだが、もしかしたら私が自分に対しても言いたかったことかもしれない。 * できるだけ敵をつくらないように生きてきた、と思う。

          「つまるところ、人間関係ってエゴなんだと思いますよ。」

          「自分のため」に着る服。

          いつも楽しみにしている服の展示会があって、そこで注文した服が届いた。Y.M.Walts(ワイエムウォルツ)のワンピースだ。 これまでに3回展示会に行き、1回目はブーツを、2回目はコートとワンピースを、そして今回は2着のワンピースを注文した。冬は毎日のようにブーツとコートを身につけていたし、ワンピースは気分を上げたい時にいつも着ている。すごく派手だとか明るい色ではないのに、不思議とエネルギーが湧いてきて、気付いたら元気になっている。 友人からも「なんかいいね、その格好」と言

          「自分のため」に着る服。

          自分を役立てるために、経験をためていくこと。

          大学を卒業してから5年近くが経った。卒業してからこれまで、大学時代に築いた人間関係だとか、日常の過ごし方のコツだとか、「経験」の貯金で生きてきた、と思う。 18才、地方から上京し初めての一人暮らし。帰る部屋の静けさを知ったこと、孤独の紛らわし方。歳上の人と付き合い、全力で向き合ったこと。疲れて、人との距離を置くようになったこと。映画館に入り浸った日々。バイト、サークル、遊び、、自動的に埋まっていくスケジュールに空しさを感じ、何もかも一気に辞めてアメリカに行ったこと。授業で出

          自分を役立てるために、経験をためていくこと。