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『アナログ』は、理由を急がない映画でした


2023年10月10日(火)朝の6:00になりました。

海に雪が降りました、深々とだれにも知られずに。

どうも、高倉大希です。




ぼくが恋をしたのは、携帯を持たない人でした。

先日、タカハタ秀太監督の『アナログ』という映画を観に行ってきました。


主演は二宮和也さんで、ヒロインは波瑠さんです。

原作は、ビートたけしさんの小説です。



波瑠さん演じる美春みゆきは、携帯を持っていません。

だから、普段は連絡がとれません。


ふたりが会うのは、毎週木曜日のおなじ喫茶店。

遅れるときも、行けないときも、連絡をとることはできません。


どれだけ会えない木曜日があろうとも、理由を問うことはありません。

会うことができた木曜日だけ、日が暮れるまでふたりで話をするのです。


手作り模型や手描きのイラストにこだわるデザイナーの悟。携帯を持たない謎めいた女性、みゆき。喫茶店「ピアノ」で偶然出会い、連絡先を交換せずに「毎週木曜日に、同じ場所で会う」と約束する。二人で積み重ねるかけがえのない時間。悟はみゆきの素性を何も知らぬまま、プロポーズすることを決意。しかし当日、彼女は現れなかった。その翌週も、翌月も……。

映画「アナログ」公式サイトより


基本的に多くの物語は、理由と共に進みます。

なぜ来れなかったのか、なぜ涙を流していたのか。


つくり手は観客に、理由を説明せねばなりません。

ところがこの作品は、とことん理由を問いません。


物語の後半まで、理由を大切にとっておくのです。

まるで、一緒に考えようと言わんばかりに。


二宮「僕はずっと初期の頃から、タカハタ(秀太)監督とは、ビートたけしと北野武の違いをちゃんとリスペクトしようという風に話し合ってきたんです。いわゆる温かみであったり、人間関係だったり、哀愁であったりというものをどう描くのか、(原作者の)ビートたけしが見たかったものにたどり着けるのか、ということをずっとやり取りしていたので、台本を読んだときはちょっとホッとしたといいますか。そこをちゃんと立体化することができればお客さまに伝わるものになるんじゃないか、という気持ちになりましたね」

映画.COM『「アナログ」であることの良さ』二宮和也さんの発言より


検索をすれば、簡単に答えらしきものがみつかる時代になりました。

理由を知りたければ、すぐに知ることができてしまいます。


メッセージを送信したら、タイムラグなく相手のもとに届きます。

新着メールを、センターに問い合わせる必要すらありません。


失われた待ち時間を求めて。

『アナログ』は、理由を急がない映画でした。






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