見出し画像

食品衛生法が改正されました ②「HACCPに沿った衛生管理」を制度化

食品衛生法が改正されました ②「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」を制度化(本文1,950文字)
 
令和3年(2021年)に改正された「食品衛生法」が、3年間の猶予期間(経過措置期間)を経て令和6年(2024年)6月1日から完全施行開始しました。今回は「「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」を制度化」についてまとめます。
 
<「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」を制度化>
近年、食中毒等の食の安全にかかる問題が深刻化しているところ、従来の管理システムでは十分な対応が困難な健康危害を引き起こす可能性があることから、原則として、すべての食品等事業者(食品の製造・加工、調理、販売等)はHACCPに沿った衛生管理に取り組まなければなりません。
「HACCP」とは、Hazard Analysis and Critical Control Point のそれぞれの頭文字をとった略称で「危害要因分析重要管理点」と訳されます。つまり、「食品の安全性を確保するため、製造業者が危害分析に基づく衛生管理を行う仕組み」ということになります。
HACCPの導入によって、食品の安全性を科学的に確保、消費者信頼の向上、ならびに国際的な食品貿易の円滑化が期待できます。HACCPは、以下の7ステップから構成されています。
1 危害分析:危害を特定し、その発生可能性と重大度を評価する。
2 重要管理点の決定:危害を防止または除去するために必要な管理点を特定する。
3 重要管理点の限度設定:重要管理点における許容範囲を設定する。
4 監視体制の確立:重要管理点における監視方法を確立する。
5 措置基準の設定:重要管理点の許容範囲を超えた場合の措置を定める。
6 記録の作成:危害分析、重要管理点、監視体制、措置基準等に関する記録を作成する。
7 確認・検証:HACCPシステムが適切に機能していることを確認・検証する。
 
詳細:HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000662484.pdf
 
制度の全体像
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000970366.png
 

<HACCPに沿った衛生管理は2種類>
HACCPに沿った衛生管理は、対象事業者の規模などによって2種類に分けられます。
①食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組=HACCPに基づく衛生管理
対象は大規模事業者、と畜場(と畜場設置者、と畜場管理者、と畜業者)、および食鳥処理場(認定小規模食鳥処理業者を除く食鳥処理業者)
②取り扱う食品の特性等に応じた取組=HACCPの考え方を取り入れた衛生管理
対象は小規模な営業者等
 
<制度の対象>
上述のとおり、HACCPに沿った衛生管理はすべての食品等事業者が対象ですが、一部、対象外となる事業者の方もいます。
■農業及び水産業における食品の採取業
■公衆衛生に与える影響が少ない以下の営業(食品等事業者としての一般的な衛生管理が必要)
1.食品又は添加物の輸入業
2.食品又は添加物の貯蔵又は運搬のみする営業(ただし、冷凍・冷蔵倉庫業は除く。)
3.常温で長期間保存しても腐敗、変敗その他品質の劣化による食品衛生上の危害の発生のおそれがない包装食品の販売業
4.器具容器包装の輸入又は販売業
■1回の提供食数が20食程度未満の学校や病院等の営業ではない集団給食施設
 
<営業者が実施すること>
■「一般的な衛生管理」及び「HACCPに沿った衛生管理」に関する基準に基づき衛生管理計画を作成し、従業員に周知徹底を図る
■必要に応じて、清掃・洗浄・消毒や食品の取扱い等について具体的な方法を定めた手順書を作成する
■衛生管理の実施状況を記録し、保存する
■衛生管理計画及び手順書の効果を定期的に(及び工程に変更が生じた際等に)検証し(振り返り)、必要に応じて内容を見直す
 
<小規模営業者はどうするのか>
「小規模な営業者等」はHACCPの考え方を取り入れた衛生管理に取り組む必要があります。ここでいう「小規模な営業者等」とは以下を指します。
■食品を製造し、又は加工する営業者であって、食品を製造し、又は加工する施設に併設され、又は隣接した店舗においてその施設で製造し、又は加工した食品の全部又は大部分を小売販売するもの
(例:菓子の製造販売、豆腐の製造販売、食肉の販売、魚介類の販売 等)
■飲食店営業又は喫茶店営業を行う者その他の食品を調理する営業者
(そうざい製造業、パン製造業(消費期限が概ね5日程度のもの)、学校・病院等の営業以外の集団給食施設、調理機能を有する自動販売機を含む)
■容器包装に入れられ、又は容器包装で包まれた食品のみを貯蔵し、運搬し、又は販売する営業者
■食品を分割して容器包装に入れ、又は容器包装で包み小売販売する営業者(例:八百屋、米屋、コーヒーの量り売り 等
■食品を製造し、加工し、貯蔵し、販売し、又は処理する営業を行う者のうち、食品等の取扱いに従事する者の数が50人未満である事業場(事務職員等の食品の取扱いに直接従事しない者はカウントしない)
 
繰り返しになりますが、原則として、すべての食品等事業者はHACCPに沿った衛生管理に取り組まなければなりません。どのように取り組むかなど不明な点は施設を所管する保健所等にご相談ください。
 
 
<一次情報>
食品衛生法の改正について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197196.html
 
<動画>
HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index_00003.html

<関連情報>
厚生労働省は、概要として挙げられている7項目について、それぞれ詳細を公表しています。
(1)大規模又は広域におよぶ「食中毒」への対策を強化
(2)「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」を制度化
(3)特定の食品による「健康被害情報の届出」を義務化
(4)「食品用器具・容器包装」にポジティブリスト制度を導入
(5)「営業許可制度」の見直しと「営業届出制度」の創設
(6)食品等の「自主回収(リコール)情報」は行政への報告を義務化
(7)「輸出入」食品の安全証明の充実

<参考情報>
■梅干しの製造販売が許可制になりました
https://note.com/fir_institute/n/n222c67a126cd
■【独自研究報告】食品衛生申請等システムによる令和5年度食料品リコール公開回収事案
https://note.com/fir_institute/n/n6ad59d79c7d9
■食品衛生法が改正されました ①大規模又は広域におよぶ「食中毒」への対策を強化
https://note.com/fir_institute/n/nf985d53530fd
■食品衛生法が改正されました ③特定の食品による「健康被害情報の届出」を義務化
https://note.com/fir_institute/n/nb05b5e128b1a
■食品衛生法が改正されました ④「食品用器具・容器包装」にポジティブリスト制度を導入
https://note.com/fir_institute/n/nf75236614c25
■食品衛生法が改正されました ⑤「営業許可制度」の見直しと「営業届出制度」の創設
https://note.com/fir_institute/n/ne2a7b1e28871
■食品衛生法が改正されました ⑥食品等の「自主回収(リコール)情報」は行政への報告を義務化
https://note.com/fir_institute/n/nca6c24ad0230
■食品衛生法が改正されました ⑦「輸出入」食品の安全証明の充実
https://note.com/fir_institute/n/nb41795167615

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?