見出し画像

梅干しの製造販売が許可制になりました

梅干しの製造販売が許可制になりました(本文1,863文字)
 
令和3年(2021年)に改正された「食品衛生法」が、3年間の猶予期間(経過措置期間)を経て令和6年(2024年)6月1日から完全施行開始しました。厚生労働省は今回の改正について以下の通り情報公開しています。
ここでは「梅干し」の製造販売に焦点を当てて、食品衛生法改正に関する情報をまとめます。
 
<改正について>
今回の食品衛生法の改正の趣旨と概要は以下の通り。概要は7項目です。
1.趣旨
「食品衛生法」は飲食による健康被害の発生を防止する法律。食を取り巻く環境の変化や国際化等に対応するため15年ぶりに改正を実施。
2.概要
(1)大規模又は広域におよぶ「食中毒」への対策を強化
(2)「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」を制度化
(3)特定の食品による「健康被害情報の届出」を義務化
(4)「食品用器具・容器包装」にポジティブリスト制度を導入
(5)「営業許可制度」の見直しと「営業届出制度」の創設
(6)食品等の「自主回収(リコール)情報」は行政への報告を義務化
(7)「輸出入」食品の安全証明の充実
 
<梅干しの製造販売が許可制に>
上の概要のうちの主にこの2つによって、漬物製造販売は許可制となりました。
(2)「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」を制度化
(5)「営業許可制度」の見直しと「営業届出制度」の創設
つまり、行政が示す要件を満たさない製造者は、梅干しを製造販売することができません。
 
<梅干しを製造販売するには...>
梅干しに限らず、食品衛生法のすべての要件を満たす内容でなければ、食品として製造販売することはできません。今回の食品衛生法での見直しでは、特に(2)と(5)が梅干しの製造販売に大きく関係することになります。
 
(2)「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」を制度化
原則として、すべての食品等事業者に、一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施を求めます。小規模営業者等は、厚生労働省ホームページで公表している手引書を参考に、簡略化したアプローチで取り組むことができます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html
■漬物製造におけるHACCPの考え方を取り入れた安全・安心なものづくり(小規模事業者向け衛生管理の手引書)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000201294.pdf
■食品製造におけるHACCP入門のための手引書:漬物編
①手引書: https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000098998.pdf
②付録: https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000099017.pdf
③付録Ⅱ: https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000123495.pdf
許可の取得には、これらに収載されている衛生基準を正しく理解し、十分に満たす製造環境や工程などが必要です。言い換えれば曖昧な基準や個人の経験に基づくようなHACCPから外れる衛生管理のままでは製造販売していくことはできなくなりました。
 
(5)「営業許可制度」の見直しと「営業届出制度」の創設
HACCPに沿った衛生管理の制度化に伴い、食品等事業者を把握できるよう、営業の届出制度を創設しました。また、食中毒等のリスクや、食品産業の実態を踏まえ、営業許可が必要な業種の見直しを行いました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kigu/index_00010.html
また、実態に応じた営業許可業種への見直しや、営業許可業種以外の事業者の届出制度の創設も行われています。
https://www.mhlw.go.jp/content/000772221.png
詳細; https://www.mhlw.go.jp/content/000772316.pdf
さらに、「営業許可業種の見直し」としては、食中毒等のリスクや、食品産業の実態を踏まえ、公衆衛生に与える影響が著しく、営業許可が必要な業種の見直しも行われ、梅干しを含む「漬物製造業」が営業許可が必要な対象として新設されています(図の右下に「漬物製造業」)。
https://www.mhlw.go.jp/content/000772222.png
 
なお、今回新設された「漬物製造業」の定義は以下の通り;
「漬物を製造する営業又は漬物と併せて漬物を主原料とする食品(※)を製造する営業をいう。
※ 高菜漬けのように漬物とその他のものを混合して炒めるなど、漬物のような形態で販売されるもの。」
https://www.mhlw.go.jp/content/000772317.pdf
 
<梅干しはどうなる?>
HACCPの要求事項を満たさない製造工場、農家、その他の製造環境で、経験に基づく伝統的なやり方で仕込んでいたいわゆる「昔ながらの漬物」には許可を得られず、事実上製造販売ができない事態に陥る危険があります。
小規模で製造しているような一部の梅干しも、この基準を満たさない場合には製造販売ができなくなる可能性があります。
詳しくは管轄する行政機関等と相談することになりますが、上記のとおり、食品製造においては「飲食による健康被害の発生を防止する法律」である「食品衛生法」を遵守する必要があり、また、食品関連事業者は食品の喫食による健康被害を防止することに最大の努力をしなければなりません。
 
<参考情報>
食品安全委員会
【読み物版】[生活の中の食品安全 -お弁当も、食中毒に気をつけよう!-その2] ◆Q&A◆平成29年4月14日配信
Q3  家族は梅干しがきらいなのですが、お弁当に安全のために梅干しを入れた方がよいと聞きました。わざわざ、梅干しを入れる必要があるでしょうか。
 
 
<一次情報>
食品衛生法の改正について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197196.html
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?