弾ける雨音⑤
第十七話
(ヒロ)
すっかり日は落ちて
空は分厚い雲で覆われながらも
雨を降らすのに飽きたようだった。
家に着くと、弟が玄関で俺のことを待っていた。不貞腐れている顔でこっちを見ている。中学生になって多感になるはずの年頃でさすがに俺のこと大好きすぎだろ。と最近になってよく感じる。でも悪い気はしなかった。
「遅いぞ」
弟はそう言いながら彼女に気づくと、少し驚いた様子の後口角をあげ、タクトと同じ顔をする。彼女かと聞かれたからそうじゃないと否定したものの、気分を害してしまったんじゃないか。恐る恐る横を見ると、彼女は仲良いねと言いながら微笑んでいた。
「ねね、僕と連絡先交換しない?」
弟は俺にいかにも怪しむ顔を向けた後、彼女に尋ねた。
そして彼女はすんなりと承諾。
俺だってまだ知らないのに、こいつスゴすぎと感心した。弟は昔から人の懐に入るのが上手で、俺を含め皆んなに可愛がられている。でもあの一人でいる時の彼女は俺しか知らないと思うと、なんだか勝ち誇った気持ちにもなった。
道わかるし大丈夫だからと言われたけれど、流石に暗いし、危ないからと説得して彼女を家の近くまで送り、また、二人の時間が穏やかに流れていく。そして、カフェから送ったあの時と同じ場所で別れた。
彼女の後ろ姿を見つめていた俺はあの時の迷いや戸惑いなんてなく、ただただまた話したいという思いだけが募っていた。
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