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弾ける雨音⑥

第十八話

(ユリ)

寒空の下でも人は行き交い、流れる。

もちろん私の目の前でもそんな光景に変わりなかった。
例年より低い気温は雪の気配もさせる。
私はそんな中、駅前で君の弟を待っていた。

今朝、”兄貴のことで聞きたいことがある”というメッセージをあの日の連絡先交換から初めてもらった。しかも君には内緒でという約束付き。特に知っていることもないので断ろうとしたけれど、断り慣れのしていない私はあっさり流されて来てしまった。会えたらちゃんと何も知らないことを伝えて帰ろうと心に誓い、どう話すかを脳内で繰り返し練習する。

「ユリさん?」
必死のシュミレーションが突然中断され、声に驚き振り返ると、そこには君がいた。いつもの違う雰囲気に心の奥が揺れて脳が空っぽになる。制服やカフェのエプロンを着ていないからだという思考に辿り着くまで少し時間がかかった。

というかそもそもなぜここに君が?

それは君も同じようで、戸惑っているようにも見えた。

ピコンとタイミング良く二人の携帯が鳴る。
いつの間にか作られていた3人のグループに弟くんからの連絡で、デートを楽しんでということらしい。きっとどこか陰から覗いているのだろう。そんな関係値ないのにと申し訳なく思いつつも、心のどこかではちょっぴり嬉しかった。
君は、弟がごめん、と申し訳なさそうにこっちを見て、
「お昼食べていないなら、一緒にどう?」
と私をランチに誘う。そして私は迷わず誘いに乗った。
お腹空いていたのもあるけれど、カフェにいない君がどんな感じなのか少し気になる。そこで君と初めてメッセージアカウントを交換して良さそうな店を送り合った。

君から送られた店リストの中には自分のお気に入りの店も入っていて、私はそれだけで嬉しかった。心は思わず高鳴る。運命かもなんて少し期待してみたり。

今はそれだけで十分に幸せだ。

そう思い込んで、見たくない自分をさらに奥へとしまい込んだ。

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