【製造課長が絶賛したケーキ】
ある若きパティシエは、毎年1つのクリスマスケーキの開発・デザインを任されていました。
これにとても誇りを持ち、毎年全力で取り組んでいました。
「今年もクリスマスの時期だなあ。開発・デザイン頑張るぞ」
そう思っていた矢先、製造課長からこんな一言が。
「今年は、3つやってみるか?」
「やります!」
と即答し、嬉しくて例年より開発・デザインに力が入りました。
そんな入社4年目の彼女が担当したケーキが、
ビュッシュ・ド・ノエルです。
木の薪をイメージしたクリスマスケーキで、フランスの伝統菓子の1つ。
レシピ・デザイン共に、一新したこのケーキの裏には、
パティシエが開発したチョココーヒークリームに、
並々ならぬ強い想いがありました。
「やるからには、去年のクオリティを超える」
「自分が納得できる領域まで作り続ける」
この気持ちを念頭に、ケーキを考えます。
「スポンジに塗るクリームに斬新なアイデアが欲しい!どうしよう…」
以前までは、スポンジと相性抜群のアーモンドクリームが採用されていました。
「ショコラスポンジとの相性…そうだ!チョココーヒークリームにしよう!」
「イメージは…グリコのパピコ!チョココーヒー味!!」
「あのバランスなら、子供でもコーヒーをおいしく食べられる!」
とイメージを決めてクリームの開発に取り掛かりました。
しかし、このバランス感をケーキで再現するのは、決して簡単ではありませんでした。
・製造課長に試作を見てもらった回数は3回
・社長がOKと承諾するまで提出した回数が3回
さらに、試作を見てもらうまでに、ああでもない、こうでもないと何十回も試しては、自分のイメージと味を繋ぎ合わせました。
「クリームに加えるコーヒーの0.01mm単位で、全体の味に与える影響が変わるから、本当に大変でした」
と開発中の苦労を彼女は語ります。
しかし、製造課長は彼女のある驚くべき行動に、これならいけると確信したそうです。
ある日、社長へ提出する最終試作を、課長が味見した時のこと。
課長「これは、クリームを相当工夫したね、良いバランスだよ。よく諦めずにここまでできたね!僕はいいと思う」
パティシエ「はい、私も自信があります。でも、これって子供が食べるなら、あとほんの少しマイルドにした方が、もっと良くなりそうなんです」
課長「それは、そうかもね」
パティシエ「作り直します」
またすぐ作り直す姿に、職人に一番大事な資質を感じたと言います。
「知識や経験も大事だけど、良いものを届けたい真心は、姿勢に強く現れる」
課長「僕が試作のOKを出すと、そのまま社長に持って行く子が多い。でも、彼女は自分の直感を信じて、さらに高みを目指した」
「このケーキは、おいしいよ」
「彼女の想いが強く反映されてるから」
そうして、社長に持って行くと、絶賛され、商品化が決まりました。
見た目は…
冬の暖炉に使う薪のように見立てたケーキの上に…
雪だるまやサンタさんがクリスマスを祝い、木こりが生チョコを切ろうと働いています。
クリームには、4種類のナッツが飾られ、
苦労したチョココーヒークリームとショコラスポンジとの絶妙な味わいのアクセントになっています。
ケーキの中心には、ナッツとチョコのペーストに、クレープ生地が刻まれ「シャリシャリッ」と音がします。この新食感が、よりコクを引き出し、食べる楽しみを掻き立てます。
そして、縁の下の力持ちである特製サブレがケーキを支えます。
ケーキでしっとりした部分、サクサクっと香ばしくバター漂う部分がより一層豪華な味わいになりました。
(試作中のもの※レシピだけでなく、デザインまで洗練しています)
彼女が、レシピ・デザインを考え抜き、
クリームに対する並々ならぬ想いで試作したこのケーキ。
決して試作専門ではなく、この時期、次々と注文が入るケーキを作りながら、行ったものです。
商品として、出来上がってからも、色々と思いつきますが、そればかりしていたら、いつまでも商品化されないので、限られた時間でこれまで磨いた腕や知識を使う必要があります。
毎年1つ担当のクリスマスケーキを、今年は3つ、彼女に任せたくなった、製造課長の気持ちが分かる気がしました。
クリスマスパンフレットを開くと、イチオシ!
とビュッシュ・ド・ノエルに記載されているのは、このような経緯からです。
子供から大人まで食べ始めると、フォークが止まらない、
ビュッシュ・ド・ノエルで是非、素敵なクリスマスを過ごしてみてはいかがでしょうか。
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