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天使のようなあなたへ―ビクトル・エリセ『瞳をとじて』
Ⅰ テオ・アンゲロプロスに倣いて 親愛なるエリセ
待ちに待ったあなたの新作、拝見しました。あなたがこんなにもテオ・アンゲロプロスを愛しておられたなんて!
撮影中に俳優が失踪し、後にテレビ番組の企画で追跡するという筋書きは、アンゲロプロスの『こうのとり、たちずさんで』(1991)を想起させます。『こうのとり』では、政治家が突然、失踪し、後にテレビの企画で彼を追
親愛なるビクトル・エリセ―ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』
Ⅰ 『PERFECT DAYS』の謎 1月、ヴィム・ヴェンダースの『PERFECT DAYS』を観たとき、不思議に思ったことがある。
主人公の平山(役所広司)は、毎日、仕事の休憩時に神社に行って、お気に入りの木を見る。そして、フィルムカメラで木漏れ日をモノクロ写真におさめる。お気に入りの木の若芽をもらってきて、鉢に植えて育てたりもする。平山にだけ見えるホームレス(田中泯)は、木の枝をしょっ
10分間の奇跡―ビクトル・エリセ『ライフライン』
はじめに わずか10分の映画で、奇跡を描いている、といわれたら、みなさんはどう思われるだろうか? そんなの無理でしょ、と思う方が大半だろう。
しかし、それを実現してしまったのが、ビクトル・エリセの『ライフライン』である。オムニバス映画『10ミニッツ・オールダー』(2002)に収められており、1940年6月30日生まれのエリセの自伝的要素が強い、白黒映画となっている。
※ニコニコ動画で観られま
死せる工場、復活す―ビクトル・エリセ『割れたガラス』
Ⅰ 奇跡を描き続けて 親愛なるエリセ
あなたのドキュメンタリー『割れたガラス』(2012年のオムニバス映画『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』所収)を初めて観たときは、そのよさがよくわかりませんでした。
※予告編の、52秒〜1分19秒が『割れたガラス』の紹介です。53〜56秒が廃墟となり、窓ガラスが割れた工場のショットです。工員たちの写真は1分5〜1分18秒をご覧く