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超短編小説

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ショートショートを随時まとめています。※作品は全てフィクションです。
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2023年8月の記事一覧

【超短編小説】 この世界のために

【超短編小説】 この世界のために

目が覚めると、そこには丸い球体が浮かんでいた。

大きなシャボン玉のようだった。

どこから来たのだろうと僕は疑問に思った。

すると、球体は話し始めた。

「コノセカイハ モウスグ オワル」

「どうして?」

「ニンゲンガ ワタシタチヲ タイセツニ シナクナッタカラダ」

「どういうこと?」

「タイコカラ ワタシタチハ ニンゲントトモニ イキテキタ」

「それって、ホモ・サピエンスの頃?」

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【超短編小説】 沙月さん その3

【超短編小説】 沙月さん その3

「聞いたよ、風邪引いたんだって」

沙月さんから電話があったのは午後7時ぐらいだった。

「そうなんですよ」

「ちゃんと食べてる?」

「はい、沙月さんは大丈夫ですか?最近、風邪、流行ってますけど」

「人の心配してる場合なの?私は昔から風邪なんて引かないの」

「さすが、リーダーは違いますね」

「当たり前よ。それは良いけど、例の件は部長に話し通しておいたから。あと、今度の会議資料は私が作って

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【超短編小説】 ジャムパン、学校に行く

【超短編小説】 ジャムパン、学校に行く

「はい、静かに。みんな聞いて。今日、廊下にジャムパンが落ちていました」

先生は朝の会で話し始めた。

「学校に食べ物を持って来ないっていうのはみんな知ってるよね。もし、何か知っていることがあったら教えて欲しいんだけど」

すると、山崎君が手を挙げた。

「どうして、学校にジャムパンを持ってきたらダメなんですか?」

「そういうルールだからです」と先生は答えた。

すると、今度は田中さんが席を立っ

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【超短編小説】 それもまた運命

【超短編小説】 それもまた運命

「君は運命とやらを信じるかね」

神様は聞いた。

「そんなものがあるの?」と僕は尋ねた。

「ああ、運命というのは分からないものだ。導かれるものじゃ」と神様は答えた。

「願ってなくても?」

「ああ、そういうものだ。明日、何が起こるかなんて誰にも分からん」

「その運命に僕は辿り着けるの?」

「辿り着ける。そういうシナリオだからじゃ」

「このままじゃダメなのかな」

「うーん、難しい問題じ

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【超短編小説】 梅茶漬け

【超短編小説】 梅茶漬け

一人暮らしで一番面倒なイベントと言えば、

風邪を引くことだ。

体温計を脇を挟み、ピッピという音が鳴ると、

案の定、37.7℃だった。

病院に行き、医者から『風邪ですね』と言われ、『ちゃんと休んでくださいね』と念押しされた。

「めんどくさい。ご飯だって作りたくないのに・・・」

家に帰り、冷蔵庫を開ける。

「確か、アレがあったはず」

冷蔵庫を漁ると、奥から梅干しが入った瓶が出てきた。

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【超短編小説】 イクラデモクレテヤル

【超短編小説】 イクラデモクレテヤル

鞄を投げた、海に。

ただそれだけ。

あの中には私の全てが入っている。

でも、もうどうでも良かった。

鞄はプカプカと何処かに運ばれて行く。

誰かに拾われるか、海の底に沈むか。

私は後者に賭けた。

不要な物だ。

あったところで役に立たない。

「イクラデモクレテヤル」

海賊にでもなったような気分だ。

さっきまでの重さが嘘のようだった。

私は大きく伸びをした。

「これで終わりだね

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