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【超短編小説】 イクラデモクレテヤル


鞄を投げた、海に。

ただそれだけ。

あの中には私の全てが入っている。

でも、もうどうでも良かった。

鞄はプカプカと何処かに運ばれて行く。

誰かに拾われるか、海の底に沈むか。

私は後者に賭けた。

不要な物だ。

あったところで役に立たない。

「イクラデモクレテヤル」

海賊にでもなったような気分だ。

さっきまでの重さが嘘のようだった。

私は大きく伸びをした。

「これで終わりだね」

海風がとても心地良かった(完)