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十代の頃からアラカンの今に至るまで続いている趣味・小説創作。noteでエンターテインメント公務員小説「やくみん!お役所民族誌」執筆を開始したのを機に、そのドラフトやアイディアメモ…
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#文化人類学

0817:やくみん覚え書き/第1話ドラフトを書き上げての所感

0817:やくみん覚え書き/第1話ドラフトを書き上げての所感

昨日、公務員小説『やくみん! お役所民族誌』第1話[26]をドラフト脱稿。これで第1話の最後まで辿り着いた。今日の午前中にまとめ読みを整備し、ひとまずの区切りをつけた形になる。

公務員の早期退職を心に決めてnoteを立ち上げた2020年9月時点で、県庁を舞台にした小説を書くことは想定していた。というより、早期退職により生み出す時間でやりたかったことのひとつが、まさにやくみんを書くことだった。no

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0816:小説『やくみん! お役所民族誌』[26]

0816:小説『やくみん! お役所民族誌』[26]

第1話「香守茂乃は詐欺に遭い、香守みなもは卒論の題材を決める」
[最終回]次のステップへ<前回>

        *

 帰宅時間の目処が立たないから晩御飯は職場で出前を取ると、秀一から返信があった。この半年余りでそういう日の寂しさには慣れた。みなもは帰路にスーパーで自分用のお弁当を買って、アパートでそそくさと夕食を済ませた。
 公務員は定時退庁、というイメージとはかけ離れた実情を、秀一が就職し

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第1話[10]~[13]まとめ/小説「やくみん! お役所民族誌」

第1話[10]~[13]まとめ/小説「やくみん! お役所民族誌」

第1話「香守茂乃は詐欺に遭い、香守みなもは卒論の題材を決める」

【前回】

[10]罠を仕掛ける        *

 澄舞県の東端、八杉市。香守茂乃(かがみ・しげの)宅の電話が鳴ったのは、同じ火曜日の午前10時になる少し前だった。
 茂乃は居間でテレビを見ていたので、電話のある玄関まで移動しなければならない。若い頃のような機敏な動作はできなくなった。それでも片付いていれば短い距離のことだが、積

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0476:小説『やくみん! お役所民族誌』[11]

0476:小説『やくみん! お役所民族誌』[11]

<前回>

        *

 9時前に始まったインターンシッププログラム第1日目午前の部は、二階堂主任の講義と質疑応答で概ね2時間、あとは40分ほど消費者啓発のパンフレットや映像素材などを観る自習時間に充てた。
「ここまではインプット、午後からアウトプット準備に移ります。ちょっと早いけど、1時まで昼休みということで自由にしてていいよ。あ、2人はお弁当?」
 二階堂の問いかけに、みなもと小室は

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0420:やくみん覚え書き/モデルな人々

0420:やくみん覚え書き/モデルな人々

 小説「やくみん! お役所民族誌」に登場する組織や人物には、モデルがある。私の知る組織であり人々だ。もちろんモデル=祖型であって、守秘義務や人格の尊重、さらにはエンターテインメントとしての「盛り」などの様々な観点からコントロールしている。複数の人の特徴を混ぜていたり、まったく想像でそれらしく書いていることも多々ある。

 澄舞大学は、私が役所から内地留学派遣され修士号を取得した母校をモデルとしてい

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第1話[1]~[5]まとめ/小説「やくみん! お役所民族誌」

第1話[1]~[5]まとめ/小説「やくみん! お役所民族誌」

第1話「香守茂乃は詐欺に遭い、香守みなもは卒論の題材を決める」

[1]みなもと秀一、アパートの朝 ぎゅっと背後から体に腕を回し、首筋に当てた鼻から、すうっ、と息を吸い込む。嗅ぎ慣れた恋人の体臭は鼻腔から脳に染み渡り、心地よく力が抜けていく。
「みなちゃん、もぎゅられるとネクタイ結べないんだけど」
「んー、あとひと吸いだけ補給ー」
 すうっ。じわじわっ。
 朝。二人が半同棲生活を送るアパートの洋間

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まとめ読み目次/小説『やくみん! お役所民族誌』

まとめ読み目次/小説『やくみん! お役所民族誌』

 note上で連載中の小説『やくみん! お役所民族誌』の本文目次機能のための記事です。

■概要説明 この小説のコンセプト等について記した記事です。

 16万字超まで膨らんだ作品をnote創作大賞応募用に制限字数14万字以内に刈り込んだ後に書いた記事。内容には重複もあります。

■ドラフト連載用マガジン 小説創作に関する様々なエッセイを集めたマガジン。やくみんドラフト版もここで書いています。

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0347:政治権力の姿

0347:政治権力の姿

 たまたま観た『クローズアップ現代 菅首相退任の衝撃』に観入ってしまった。妻のほか、高一男子にも「二年後には選挙権あるんだから観とけー」といって一緒に視聴。

 菅総理の総裁選出馬断念の報は、正直驚いた。元々は、コロナ禍の為政の重さに耐えられないだろうに再選の意欲を示していたことに、私は敬意を表していた(報道的には「権力に固執」的表現をしていたが、そんなわけあるかい。これは責任感だと受けとめていた

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0303:小説『やくみん! お役所民族誌』[2]

0303:小説『やくみん! お役所民族誌』[2]

第1話「香守茂乃は詐欺に遭い、香守みなもは卒論の題材を決める」(2)

<前回>

        *

 大学教員には研究個室が与えられている。そのひとつひとつがいわば独立した宇宙であり、部屋自体は画一的な作りでも、蔵書や教材、調度備品など教員の個性が色濃く反映された空間になる。
 石川耕一郎准教授の研究室の前に立ち、みなもはしばしドアを眺めていた。国立民族学博物館の黒を基調とした企画展ポスター

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0240:やくみん覚え書き/設定画チラ見せ2

0240:やくみん覚え書き/設定画チラ見せ2

 一週間前に絵師「みどりの」さんにお願いしているキャラクターデザインのラフ段階のものを一部お見せした。県庁のマスコットキャラクター「すまいぬ」のそれだ。

 今回は主人公のラフ画をチラ見せしよう。

 主人公の名前は「香守みなも」。姓は「かがみ」と読む。大学三年生(作中で年度が替わり四年生になる)で、文化人類学を専攻している。インターンシップで県庁の消費生活センターに三日間通うのだが、その間に家族

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0236:やくみん覚え書き/文化人類学のこと

0236:やくみん覚え書き/文化人類学のこと

 「やくみん! お役所民族誌」は、標題に民族誌=エスノグラフィを謳うように、主人公に文化人類学の学生を据えている。

 私は文化人類学を専攻していたわけではない。学部時代に接点のある学問領域を専攻していたので多少横目で眺めていた。当時、それまで民族学と呼ばれていた学問領域が文化人類学と呼ばれるようになる、その変わり目の時期だったと思う(厳密には両者はイコールでないけれど)。それでもまだ非専攻生にと

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