見出し画像

事件のにおいを嗅いでみたい!探偵小説を嗅覚で楽しむためのインセンス

探偵や刑事が言いがちな「この事件、あやしいにおいがする……」というセリフ。彼らが感じ取る“事件のにおい”を体感してみたくて、日本の文豪が手掛けた謎めく物語をイメージしたお香を作ってみました。

みなさま、こんにちは! 歴史と読書が好きなミュージアム部プランナー・ささのはです。
みなさまは“作中でなにかしらの事件や犯罪が起こり、作中人物によってそれらが解決されるお話”……いわゆる「推理小説」はお好きですか?
作中に登場する謎を解決する過程を描いた物語・推理小説は、探偵小説あるいはミステリーとも呼ばれます。

実は推理小説の歴史がはじまったのは意外と最近のことで、世界で初めて発表された同ジャンルの作品は、アメリカの小説家であるエドガー・アラン・ポーによるものというのが通説です。彼が1841年に執筆し、自らが編集を務めていた雑誌に掲載した『モルグ街の殺人』は、同時に世界初の「密室殺人事件の解決」をテーマにした物語でもありました。

※世界初の推理小説がどの作家によるものか、またどの作品であるかは定義付けが非常に難しく、諸説あります

そして、日本に本格的に「推理小説」の時代が到来したのは明治時代・1889年のこと。国外作家が書いた作品を数多く翻案・日本に紹介したジャーナリストの黒岩涙香くろいわるいこうが執筆した『無惨むざん』という作品が、日本人が初めて発表した創作推理小説だとされています。

涙香の作品の愛読者の中には、平井太郎という一人の少年がいました。彼の作品に魅了された少年は、やがて名探偵・明智小五郎あけちこごろうを生み、「日本探偵小説界の父」とも称される文豪・江戸川乱歩に成長しました。

乱歩は1937年に、涙香が翻案した小説『幽霊塔』を同タイトルのままリライトしました

その昔、探偵小説は残念ながら“純文学よりも非文学的で低俗なもの”と見られてしまうことが多くあったようです。例えば戦時中には言論統制の影響を受け、探偵小説家たちが堂々と作品発表できる場を奪われてしまうこともありました。
しかし江戸川乱歩を中心とする探偵作家たちは、戦後、それらの理不尽な扱いをはねのけるように「日本探偵作家クラブ(のちの日本推理作家協会)」を発足。さらに、多くの後進たちを見出し育てるべく、公募賞「江戸川乱歩賞」を創設するなど、探偵小説界を盛り上げようと尽力しました……!

終戦後、探偵小説家たちが次々に乱歩のもとを訪ねてきたそうです

今や漫画やドラマ作品でも、メジャージャンルとして必ず取り上げられるミステリー。
現代の評価に至るまでの歴史を学び、先人たちの信念や熱意に感動したプランナー、その勢いままに推理小説を楽しんでいてハッと気が付きました。

探偵や刑事って「この事件、あやしいにおいがしますね……」と言いがち!
でも、事件のにおいって一体どんなにおいなの!!!???

という訳で、好奇心に掻き立てられるまま、魅力的な事件や探偵がワクワクしそうな謎が登場する作品のモチーフや空気感をイメージしたにおいの「缶入りお香」を作ってみました^^

ミュージアム部
この事件、におうぞ!謎めく物語が香る探偵小説イメージインセンスの会

月1セット ¥1,100(+10% ¥1,210)
※1セットだけ(1ヵ月だけ)の購入も可能です。
※詳しくは「初めての方へ・お買い物ガイド」をご確認ください。

今回、においの着想元にした4つの作品&香りのイメージをご紹介します!


《!!CAUTION!!》ここから先の記事では、探偵小説(ミステリー、推理小説)である谷崎潤一郎著『途上』・坂口安吾著『不連続殺人事件』・佐藤春夫著『オカアサン』・江戸川乱歩著『屋根裏の散歩者』の一部内容に触れています。未読の方はご注意くださいませ。

〈谷崎潤一郎著『途上とじょう』×探偵が謎を紐解く冬の夕暮れ時の香り〉

 二人は水天宮の電車通りから右へ曲った狭い横町を歩いていた。横町の左側に「私立探偵」と書いた大きな看板を掲げた事務所風の家があった。ガラス戸のはまった二階にも階下にも明りが煌々こうこうともっていた。其処の前まで来ると、探偵は「あはははは」と大声で笑い出した。

「途上」より
『途上』のあらすじ…仕事帰り、愛する妻へのプレゼントを買おうと銀座へ向かう会社員・湯河。彼は突然「私立探偵」を名乗る見知らぬ人物に呼び止められ、師走の寒空の下、二人は連れだって新橋の方へと向かう事となる。突然の来訪者に苛立ちいぶかしむ湯河に、探偵は現在調査中だという「とある会社員の身元」について話し始め……。     

『途上』をイメージしたお香は、帝都・東京の冬の夜をイメージした、どこか冷たさを感じさせる繊細な香り。レトロな化粧品を思い起こさせる、甘くパウダリーなにおいがふわりと漂います。

銀座の町を照らす街灯の連なりと、冷たい空気が張り詰める冬の夕暮れの色合いの組み合わせでしゃれた印象に仕上げた、特製のデザイン缶。狭い横丁にたたずむ探偵事務所の椅子が、犯人の着席を静かに待ちのぞみます。


〈坂口安吾著『不連続殺人事件』×愛憎入り混じる人間関係の香り〉

「うまく、やった。探偵小僧氏。なんじ賞讃しょうさんさるべし」

「不連続殺人事件」より


『不連続殺人事件』のあらすじ…山奥に豪奢ごうしゃな別荘を持つ、県内有数の財閥・歌川家。戦後間もない夏、歌川邸に二十九人の男女が集まる。実は彼らはみな、元々夫婦の関係であったり不倫相手同士であったりと、俗悪で愛憎にまみれた複雑な関係性を持っていた。そしてある日、流行作家・望月王仁の死体発見を皮切りに、次々に殺人事件が起こり……。名探偵・巨勢こせ博士に犯人は暴けるか!?

『不連続殺人事件』をイメージしたお香は、洋館に集まった人々のもつれに縺れた、愛憎入り混じった感情をモチーフにした香り。蜂蜜のようにどろりと濃密な、甘~いにおいに思わずむせ返りそう……。

特製缶のデザインは、事件解決の決め手となった“心理の足跡”や、探偵に推理のヒントを与えたモチーフで構成しました。戦後に書かれた探偵小説の中でも、ラストの衝撃度が間違いなくピカイチなこの作品。ぜひ原作を読んで、これらモチーフが事件解決にどのように関わるのかを確かめてくださいね。


〈佐藤春夫著『オカアサン』×有福ゆうふくな家庭に漂う甘くやさしい香り〉

 ――しかし、この家にはお母さんばかりいておとうさんはいない。お父さんはいないけれども赤ん坊がいるのです。――三つか精々四つぐらいの「ボーヤ」で、それが時折、泣き出すのです……

「オカアサン」より
『オカアサン』のあらすじ…小鳥屋の仲介をする男に、「ロオラ」という名前の黄帽子インコを言葉巧みに売りつけられた主人公。家に連れ帰った「ロオラ」は時折、かつて暮らしたであろう幸せな家庭を感じさせる、片言交じりの言葉を叫ぶ。可愛がられていたであろうこのインコは、なぜ手放されたのか?「ロオラ」の自由でいきいきとした調子を帯びる言葉が、主人公に想像をもたらす。

『オカアサン』をイメージしたお香は、「ロオラ」が好んで食べる、お菓子やくだものを感じさせる香り。甘酸っぱく澄んだにおいは、子どもたちの笑い声が絶えない、明るく有福ゆうふくな家庭を思い起こさせます。

特製缶に描かれるのは、ばらばらと上から降り注ぐ、ビスケットや林檎などのおやつ。そして「ロオラ」がかつて連れられてきたであろう外国航路の風景を、マリンテイストでまとめあげました。


〈江戸川乱歩著『屋根裏の散歩者』×犯人が密かに散歩する屋根裏の香り〉

どうしてまあ、こんな手近な所に、こんな面白い興味があるのを、今日まで気附かないでいたのでしょう。魔物の様に暗闇の世界を歩き廻って、二十人に近い東栄館の二階中の止宿人ししゅくにんの秘密を、次から次へと隙見して行く、そのこと丈けでも、三郎はもう十分愉快なのです。そして、久方振りで、生き甲斐を感じさえするのです。

「屋根裏の散歩者」より
『屋根裏の散歩者』のあらすじ…働かずとも食べていける、いわゆる高等遊民こうとうゆうみんとして気の赴くままに暮らす主人公・郷田三郎ごうださぶろう。刺激に飢える日々を過す彼は、ある日、新築の下宿部屋から屋根裏へと続く入り口を見つける。天井板の隙間から他人の生活や隠れた本性をのぞき見できる「屋根裏の散歩」の魅力に取りつかれた郷田は、やがて恐ろしい計画を思いつく……。

『屋根裏の散歩者』をイメージしたお香は、新築の下宿屋・東栄館の屋根裏空間や、部屋にしかれた真新しい畳をイメージした、草や木を感じさせる香り。どことなくこもったような独特のクセも感じられるにおいが、あなたを未知と出会う散歩へといざないます。

特製缶には、秘密の散歩を楽しむ主人公がコッソリ覗き見た光景をデザイン。事件が発覚した日の朝6時、いつも通り持ち主を起こそうとベルを鳴らした“舶来の目醒めざまし時計”も描いています。


特製のデザイン缶に入れてお届けするお香は、ちょっとしたプレゼントにもぴったり。お香を使い終わったら、缶は小物入れにしても◎
例えば手持ちのアクセサリーを入れてみたり……

クリップや付箋を入れたら、仕事場や学校でも大活躍!
開閉スムーズなスライドタイプの缶で、みなさまのお仕事やお勉強をサポートします。

ただ文字を追うのではなく、作中の探偵や刑事たちと一緒に「事件のにおい」を感じながら謎解きに挑戦できたら、さらに素敵な読書タイムになること間違いなし。
読書のおともに「探偵小説イメージお香」をいて、心行くまでじっくり作品世界を味わってみてくださいね。

1本あたりの燃焼時間は約10分です(50本入り)

ミュージアム部
この事件、におうぞ!謎めく物語が香る探偵小説イメージインセンスの会
月1セット ¥1,100(+10% ¥1,210)
※1セットだけ(1ヵ月だけ)の購入も可能です。
※詳しくは「初めての方へ・お買い物ガイド」をご確認ください。


記事内の作中文章引用元:
①谷崎潤一郎(1920)『途上』青空文庫より
②坂口安吾(1948)『不連続殺人事件』青空文庫より
③佐藤春夫(1926)『オカアサン』青空文庫より
④江戸川乱歩(1925)『屋根裏の散歩者』青空文庫より


\ミュージアム部 文学作品・文豪関連シリーズはこちら/


ミュージアム部グッズ全商品はこちらからご覧いただけます!

ミュージアム部Twitterでは
グッズ情報や部員注目のアート情報を発信中!

@felissimo_museumubu


この記事が参加している募集

おすすめギフト

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?