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きみはポラリス

はじめまして

この一文から始めさせていただきます。

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私の好きなアーティストが、あまりにも好きで曲のタイトルにするほどの恋愛小説集「きみはポラリス」を読破した。

そもそもこのアーティストがこの楽曲を発表したのは3年前だ。それなのに最近なにかの拍子で、本にインスパイアされて書いた楽曲だと見聞きした。どこでそれを見たのか全く思い出せない。そのアーティストのTwitterやInstagramを遡っても見つからなかったから、たぶんYouTubeの概要欄やコメント欄で知ったのだろう。

著者の三浦しをんという名前はもちろん聞いたことがあった。それでもまだこの人の作品を読んだことがなかったのだから、私は読書好きだ!と宣言できるのはまだまだ先なのだろう。

巻末の最後の解説にも書かれていたが、「きみはポラリス」という短編集なのだが、中に収められた短編にはそのようなタイトルのものがない。大体の短編集というのは本のタイトルと同じ短編が先頭に収録されていることが殆どだ。しかし、この本にはそれがない。

つまり「きみはポラリス」というのは短編集のために付けられたものであり、短編集の主軸を表す言葉なのだ。ポラリスとは北極星のことであり、これを明るい星と捉えたり、航海などにおける指標として捉えたり、動かない不動の星として捉えることも可能だ。

作中にポラリスという単語が出てくるわけでもなく、詳しい説明をしているわけでもない。ここの理解は読者に対して委ねている部分なのだろう。様々な愛情を描いたこの作品において「きみは○○」となったら、特別な存在、特別な光といったところが妥当だろうか。説明不足な作品を嫌う人もいるが、人によって解釈が別れるこのような作品は私は結構好きだ。違う解釈を語り合える友人がいないのがなんとも歯痒いが。

それぞれの短編自体には繋がりなど全くない。共通しているのは愛の物語であるという1点だけ。ありきたりな恋愛から家族愛、過剰な愛、友人愛、死者への愛、三角関係、貧しい中の愛、純愛、異種間の愛、年齢差の愛、同性愛。

LGBTQに対してそれなりに寛容になってきた私が読んでも歪だと感じる愛の数々。そこに秘密はあれど、嘘はない。関係の数だけ、愛の形の数は存在していて、万に一つも同じものは存在していない。その関係を築いている人たちの間でしか分かり合えないものがある。

その人同士での「秘密」またはその人だけが抱える「秘密」が人間としての魅力に繋がる。そもそも秘密のない人間などいないのだろう。この短編集と楽曲に関する「秘密」を聞いたが、これは内に大事に閉まっておくことにしよう。

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手の届く範囲にいるあなたが

幸せでいることを願います

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