本ができてから書店に並ぶまでのプロセスについて。
今月29日発売の新刊見本出しを終え、
昨日部決も終えました。
あとは25日の取次搬入を待つのみです。
と、ここで、
「新刊見本出し」とは何か?
「部決」とは何か?
「取次搬入」とは何か?
について説明しますね。
その前に、
25日に取次搬入される6月新刊を
ご案内させていただきます^^
それと、今月増刷になった本も一挙ご紹介。
<発売:6月29日の3点です>
<増刷した4点です>
さて、
まずは「新刊見本出し」から説明します。
***
見本とあることから、発売前の本を見本として書店に運んでいただく出版取次(略して取次)に「これが6月25日搬入希望の本です」と伝える場のことを「新刊見本出し」と言います。
「新刊見本出し」は、ただ見本として提出するだけではなく、全国の書店に配本していただきたい部数も交渉します。
配本していただきたい部数交渉は、
初版部数によって変わってきます。
初版部数とは、これから出版する本の初回の刷り部数のことで、出版社によって決められます。(編集部と営業部の協議によって決まる)
どのように初版部数が決まるのかというと、いろいろな条件がありますが、
基本的には、著者自身の知名度や発信力、コミュニティ(ファンとも言い換えられます)の強弱、類似書の動きやジャンルによっても変わってきます。
なにより、
書店の反応が一番の目安になるといえます。
営業マンが発売前から書店をまわって新刊案内をしたり、FAXや電話で事前に予約を募ったりするんです。(正式には予約とは言わず、「指定」とか「事前」と呼びます)
ここで「FAXかよ?えーこの時代に!?」
と思った方もいるかと思います。
そうなんです。
いまだに出版社と書店の連絡手段はFAXが主流なのです(笑)。
少しづつメールでやり取りするようになりましたが、作業効率上、新刊案内が届いたら書店の担当者は、その新刊案内に冊数を書き、それぞれの書店に割り振られた取次の番線・コード印を押印して出版社にFAXで返します。
出版社の営業も、返信されてきたFAXを見てリストを作成するのです。
書店の店舗数が膨大ですから、メールでやり取りしそこに返信されても、リスト作成に不便であり、見逃しや間違いのないよう、しばらく書店から届いたFAX返信を保管するのでFAXの方が便利なんですよ。
さて、話を戻して、
営業が書店に案内したとき、
どんな反応なのか?
どれくらい冊数を付けてくださるのか?
「これは期待したい!面白そう!売れそう!」
となるのか?
「これは売れないよ…。売りづらいよね…。」
になるのか?
それによって営業部は経験値とおおよその感覚で、「初版部数は4000部かな、3000部かな」と見切りをつけるのです。
もちろん、本の制作原価や著者に支払う印税を計算し、このくらい刷って、このくらい売れてくれないと採算が取れないぞ。
という角度からも価格や部数検討します。
いずれにしても、
本を売る書店の反応がすべての鍵を握ります。
また、書店の反応を見る方法は、出したい新刊の類似書を調べたり、出したい新刊の著者が過去にも出版している場合は、その本の売上や返品データを調べて実績を見るのも大切なことです。
代表的な売上データの参考は、
紀伊國屋書店が出版社に提供しているPubLineや、取次の日販が提供している日販トリプルウインなど、書店と取次の様々なデータになります。これらは全て有料であり、出版社が書店や取次と契約して見るものですから、一般の方は見られません。
そして、
書店が一番気にするのは
プロモーション情報です。
新聞広告があるのか、ないのか?
発信力のある媒体や著名人、
本人の発信力の有無は?
など、お客さんが来店して買ってもらえる後押しがあれば、仕入れ部数を増やしていただけます。
それらが全くないと、よっぽど切り口が売れそうな本、実績のある著者でない限り、あまり仕入れていただけません。
どんな本か、どんなプロモーションがあるのかを書店に伝えて販促を続けた結果、集めた部数が大きければ大きいほど、「新刊見本出し」の際に、その部数を担保として取次に交渉できるわけです。
代表的な取次はトーハン、日販の2社になるのですが、書店はトーハンから仕入れていたり日販から仕入れていたりします。
ですから、例えば、
出版社の営業がトーハンや日販に、事前に書店から1000部集まりました。1500部集まりました。だから、500部上乗せいただき、1500部仕入れてください。2000部仕入れてください。
等と、仕入れていただきたい部数を伝えるのも「新刊見本出し」の大事な仕事になります。
※出版社の営業が直接書店から集めた指定の部数は、その部数通りに書店に配本されますが、取次に上乗せしていただいて配本することを「見計らい配本」と呼び、書店の自主的な発注ではなく、取次がなにかしらのデータを元に出版社の営業が集められなかった書店にも配本してくれるのです。(見計らい配本はやめて欲しいという書店もたくさんありますが💦)
出版社は余計な在庫をはじめから作りたくはないため、はじめから取り置き在庫(出版社が倉庫に取り置く在庫)を決めて、それ以外は書店に流通させたいのです。
しかし、新刊というものは、当たるか外れるかが分からないため、取次も書店も期待だけで大きな部数をはじめから仕入れたくはありません。返品になることを一番嫌がるからです。
最終的に返品のリスクを担うのは出版社ですから、営業もなるべく適正な書店配本をしようと、はじめから無理に仕掛けて大部数を書店に仕入れてもらう交渉は、よほど売れそうな本、知名度抜群で間違いなく売れると確信できる著者の本でない限りしません。
ですから、仮に初版部数4000部の本であれば、倉庫に取り置く在庫を500部にしたとして、残り3500部をトーハンや日販など、取次に搬入し、書店に配本してもらいたいとなります。
でも、取次が、「おたくはその部数希望を出しているけど、書店からそんなに部数が集まっていないし、プロモーションも弱いようなので、希望通りにはいきませんよ」とか、「おたくの返品率がずっと改善されず高いままなので難しい」とか、逆に、営業が示した希望部数より上乗せで欲しいということもあります。
このような搬入部数交渉をするわけです。
そのあと、「新刊見本出し」から中2日後に正式な搬入部数が決まります。これを、「部決(部数決定)」と呼びます。
最後に、
「取次搬入」とは、文字通り、部決した部数を決められた日に、出版社の倉庫から取次に搬入される日を指します。
こんな流れです。
「新刊見本出し」→「部決」→「取次搬入」→「書店発売」
よく著者から「わたしの本は何日に並びますか?」と、発売日について聞かれますが、「取次搬入」から中2日後とイメージしておけばよいでしょう。「取次搬入」の翌日に書店に着く場合もありますが、地方や北海道、九州などになると中2日後、3日後になることもあります。
もし、発売後すぐに告知したい!ブログやメルマガを配信したい!という場合や、書店で購入してくださるファンに早めに伝えたい!という著者は、「取次搬入」から中3日後を発売日として告知しておくのが安全ではあります。
以上で、「新刊見本出し」、「部決」、「取次搬入」についての説明を終わります。
そして、本というのは、発売されてから短期間で結果を出すことが求められます。
長くみても、発売後3週間までに売れ行きがよくなければ、返品が増えていきます。
つまり、発売後にプロモーションを考えていては手遅れになるんです。当たり前ですよね。
ですから、発信前からきちんと考え、SNSで紹介してくれたり応援してくれる方を巻き込んでおいたり、買ってくださる方がたくさんいるなら、どの書店に誘導するのがベストなのか等、話し合っておくべきです。
言っておきますが、どこで買っても同じではないですからね。営業は、この書店で売れてくれないと次に繋がらないという考えを持っていますし、書店もあの書店で売れるならうちでも並べよう、仕掛けようと、モデルにしているライバル店があったりするんです。
Amazon等、ネット書店で購入いただくのもよいんですが、やっぱり、リアル書店で結果を出さないと次に繋がりません。
たまに、書店販促の仕方、どう書店で火をつけていくべきか等、コンサル依頼を受けますが、発売されてしばらく経ってから依頼されても手遅れの場合がほとんどです。
出版は、発売前の準備で9割決まるからです。今回はここまでにしておきます。
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