神田えり子│料理家

エッセイ「私と家族と食卓と」連載中。 著書 カラダよろこぶオイルおにぎり(辰巳出版)

神田えり子│料理家

エッセイ「私と家族と食卓と」連載中。 著書 カラダよろこぶオイルおにぎり(辰巳出版)

    最近の記事

    エッセイ 私と家族と食卓と〜『ゴマ』

    ここのところ作る料理にゴマを使っているものが多いなあと、気をつけているがまたゴマを使ってしまう。 「ゴマ好きですか?」と聞かれれば「はい」と答えるが、好きな食べ物で「ゴマ」を選ぶほどではない。 でも栄養価も高いし、風味もよくなるから使うといいと思う。まあ、おいしいし、食べたほうがいい和食の合言葉「まごわやさしい」の「ご」はゴマやし。 ゴマというと、今はもう会えない、想う人がいる。 私よりも10歳以上年上で、息子の妊娠中も産後も助けてくれた人だ。 出産の2日ほど前にも一緒にい

      • エッセイ『コーヒー』

        コーヒーが好きで一日に何杯も飲む。 朝起きたら一杯、息子を送り出しては一杯、仕事や家事をしながら一杯・・・ と一日のうちに5〜6杯飲むこともある。 それが最近、体の調子が変わってきたのか目が覚めるはずのコーヒーが朝の二杯目あたりから飲むとぼーっとしてしまう。 なんとなく体に合っていない気がして、息子の朝食を用意しながらの一杯だけはなかなかやめれずにいるが、今年に入ってから飲む量をかなり減らした。 減らした分、代わりにルイボスティーやほうじ茶を飲む。紅茶や緑茶もたまに飲むが、濃

        • エッセイ『サッポロビール』

          先日父の誕生日だった。 ささやかなプレゼントを贈り、息子と一緒にLINEのテレビ電話でおめでとうを伝えた。なかなか会いに行けずに歯がゆい毎日だけど、こうやって顔を見れることに感謝するべきなのだろう。 父とのことでよく思い出す幼い日のいくつかの風景がある。 新聞記者だった父は、特に若い頃は生活が不規則であまり家におらず、泊り明けの日や休みの日は昼近くまで寝ていることがほとんどだった。 まだ幼稚園に入る前のことだったように思うが、「寝かしてあげてね」と母に言われても、勝手に2階

          • エッセイ『ラーメン』

            「まさか」と言われることが多いが、私はなかなかの人見知りだ。 昔よりもずっとましだし、もともと人見知りのくせに前に出たがりのところがあるから、わかりにくい。占い師に「そのドMやめないと幸せになれないよ」と言われたことがあるけど、たぶんそうなんだと思う。 人見知りのくせに、前に出る緊張感がたまらん、みたいな。 中高はテニス部のキャプテンをしてたし、委員とかも積極的。バイトでもめっちゃ張り切るし、新卒で勤めた広告代理店では営業。料理講師をしたり、教室したり。今も外に出てコミュニ

            エッセイ『肉豆腐』

            先日の新聞に昨年亡くなった小柴昌俊さんのことが書いてあった。「ニュートリノ」の研究でノーベル物理学賞を受賞したのは2002年だったが、その40年ほど前にすでにニュートリノの可能性を東大の講義でされていたらしい。ニュートリノが何なのかさえ未だに知ることもない私には目眩のする年月だが、その世界では当たり前なのだろうか。つくづく学者というのは探究心と根性の塊だと思う。 その記事の中でひとつ、長男の俊さん(香川大学の教授で科学者)が言っていた「父がいなければ、研究者になっていなかった

            エッセイ『長瀬』

            私はTOKIOの長瀬が好きで、ああいう人なら再婚したいと思っているんだけど(高望みが過ぎる)、今放送してる長瀬のドラマ「俺の家の話」についてちょろっとインスタに書いたら、友達から「長瀬って呼び方!」と突っ込まれた。 確かに。好きなのに呼び捨て。 TOKIOメンバーは、他にも、城島は城島。国分太一は太一、松岡は松岡、または後輩気分で松兄(まつにぃ)、触れてもいいなら山口君は山口君だ。いやなんか、そこは!っていう、ね。 SMAPは全員「君」づけ、関ジャニも全員、KINKI KID

            エッセイ『旅行のとも』

            コロナで海外旅行に行けないせいで、ますます思いを馳せる海外。 イタリアで濃厚なパスタを食べ、突き刺すような太陽のスペインでビールやワインをあおりたい。ベルギーでムール貝もいい。白ワインの香りを漂わせバケツにあふれんばかりに入ったそれと、フライドポテト。あれはなんで一緒にポテトがついてくるんだろう。残ったスープはパンに吸わせて頬張りたい。肉の煮込みも味が濃くってベルギービールによく合っておいしかった。チョコやワッフルも現地で食べると格別で言葉通りにほっぺたが落ちそうになる。

            エッセイ『行事食の呪縛』

            今日は節分だけど、実は行事食があまり好きではない。 料理家のくせに何を言ってるねん、と怒られそうだが、ずっと小さな抵抗感がある。 作ってる人は偉いと思うし、出てきたらありがたくいただくし、そういう人がいい家庭を作り、いい社会を作るんだと思う。歳時記自体には興味があるし、年中行事は日本に残すべきだとも思う。ほんまに思ってます。 おせちは年末何日もかけて作りあげていく高揚感が好きだし、ひなまつりのちらし寿司くらいはまあ作ろうかって気になるけど、クリスマスのチキンやケーキも端午の

            私と家族と食卓と〜#7 おせち

            新年あけましておめでとうございます。 残念ながら年が変わってもコロナはこの世界からいなくなっておらず、それどころか変異種まで出現してしまった。 私の住む東京を含む首都圏では再び緊急事態宣言も出されることになり、飲食店への規制を強めるとのこと。 私のまわりにも飲食店をしている友人もいるし、大好きな店が東京にも地元関西にもたくさんある。 明日はどうなるのかと不安な気持ちに押しつぶさせそうなことかと思う。 私も例外ではなく、フリーランスとしての仕事の不安もあるし、シングルマザーと

            僕らのキッチン〜第1話『せっかくのシュクメルリ』

            自宅のある駅のホームに降り立ったサトシは南口の改札を出てすぐのスーパーに向かう。 後少し向こうまで足を延ばせば安売りのスーパーがあるけど、そこはもうすぐ閉店の時間だ。 一度、いつもより早めに仕事を切り上げた日の夜に行ってみたら、カゴに商品を入れる客の横で、それを気にする様子もなく野菜売り場の店員がどんどん片付けをしていくので落ち着いて買い物ができず、昔ながらに閉店を知らせるホタルの光が流れ始めるとますます焦った。 最近はそこは週末の買い出しに利用することにした。 日曜の午前

            私と家族と食卓と〜#6 おにぎり

            今朝部活に向かう前に、食パンにツナとチーズをのせて焼いたものを出した。 息子が「もう一枚食べようかな」と言ったけど、食パンがもうなくなってしまっていたから、「おにぎりしようか?」と聞くと食べたいと言うので、お弁当用に今朝炊いたごはんで大きいのを1つ作った。 「何入れる?」と尋ねると塩昆布をリクエストされた。 「あったかいふわふわしたおにぎりもおいしいよね」と顔をほころばせながら食べるのを見るとこっちも幸せになる。 学校が平常授業に戻り、毎日のお弁当作りも再開した。 加えて週

            私と家族と食卓と#5〜宝塚ホテル

            地元の宝塚ホテルが、今年3月に阪急今津線宝塚南口駅前での1926年から百年近い営業を終え、この6月に宝塚大劇場の西側に移転開業した。 旧ホテルは解体され、跡には違う何かが建つのだそうだ。 老朽化と耐震性の問題とのことで、歌劇ファンや地元住民にとっては思い入れのあるこのホテルが移転と聞いたときには、持って行き場のないさみしさを感じた。 老朽化や耐震性と言われると、得に大震災を経験している兵庫県出身の私達には誰のせいにもできずに、とたん無抵抗になるところがある。 その反面、思い

            私と家族と食卓と#4〜ポテトサラダ

            うちの息子は小さい頃からマヨネーズが苦手で、得にポテトサラダが嫌いだ。 小学生までは洋食屋さんで付け合せにちょこっとのっているものも嫌がるし、それがほんの少しついてしまったハンバーグのその部分も私に渡してきた。 さすがに中学生にもなると、そこまではしないし、私もさせないけど、マヨネーズおいしいのになあ、ともったいなく感じる。 私達が中高生の頃は、ごはんにでもなんにでもマヨネーズをかけるのが一種ブームで、「マヨラー」とか言われる人もいた。 「シノラー」とか「アムラー」とかファ

            コロナの中。ここにあるもの、失くなるもの

            コロナの影響で、スペインのアパレル会社インディテックスが傘下の多くを閉店するらしく、ZARAもそれにいくつも含まれるらしい。 イギリスのキャスキッドソンは経営破綻に陥り、日本法人も自己破産、我が家の近くの店舗も急ぐように片付けをしている。 日本の大手アパレルのレナウンはこれまでも順調ではなかったとは聞くけど、それにしてもあれだけ大きくて、子会社を含めるととてつもない数の従業員を抱える企業が、この2〜3ヶ月の内に今回こんな大きな決断をしなくていはならなくなったことに驚きを隠せな

            私と家族と食卓と#3〜8時

            新型コロナの影響で学校が休みになり、部活もないので運動不足からか、 痩せ形の息子史上最も太って見える。 最近は朝の人気のない時間に近所をジョギングして、ほんの少しだけどストレス発散もしているようです。 今日は私と自由が丘を散歩していたら、小学校の頃のサッカーのコーチにばったり会って、とっても楽しそうに笑う息子を見て、うれしくなりました。 家にいるとおやつを食べることも多くなる。 市販のお菓子はどれだけ買ってもすぐになくなるし、気が向けば作るプリンや、時にはおにぎりを食べさせ

            私と家族と食卓と#2〜プリン

            お土産。 大阪の守口からおばあちゃんがうちに来るときは、和菓子屋さんの「絹笠」の三笠。 絹笠と言えばとん蝶というカリカリ梅と塩昆布がポンポンと載った、竹の皮に包まれたおこわが有名ですが、私はそれを大人になるまで知りませんでした。 うちに来るのは、梅田の地下街の店の三笠。 どら焼きのことを関西のある程度上の年齢の方はこう呼ぶ。 「三笠の山に出し月かも」の奈良の山の形に似てるから、とのこと。 二枚の皮に包まれた餡は見えないようにまあるく閉じられていることが条件だとか。 どら焼きで