料理家・ライター 神田えり子

「コツがわかれば料理は楽しくなる」 そんなことを考えながら生きています。 兵庫県出身…

料理家・ライター 神田えり子

「コツがわかれば料理は楽しくなる」 そんなことを考えながら生きています。 兵庫県出身・東京都在住。 著書:レシピ本『カラダよろこぶオイルおにぎり』(辰巳出版)

最近の記事

料理は愛情?(1)「料理はコール&レスポンス」#日々食々

許さん!「夫が食事の途中に外食に行く」「夫が食事の途中に外に食べに行った」― 出した料理が「おいしくない」と言い、夫が食卓をそのままに、一人で外食しに出て行ったという。 これは、料理家をしながら事務のバイトをしていたとき、そこで一緒だったAさんが話してくれたこと。聞くとこれが初めてではないらしかった。 Aさん自身、「料理はそんなに得意ではない」と自己評価していたが、予約の取れないと言われている日本料理の教室にも通っていたし、食べることも好きそうだった。 また、ほかのBさん

    • #日々食々 「あすも続く、食べる日々に」

      家庭料理はめちゃめちゃおいしくなくていい 自宅で料理教室をしていたころ、「家庭料理はお店みたいにめちゃめちゃおいしくなくていい」と話したことがある。 誤解を生む言い方だったかもしれないが、家のごはんのおいしさはレストランと違う。奇をてらわず、心身をリセットでき、シンプルであることが前提だと思っている。 料理家はレシピに「普遍的なおいしさ」や「作りやすさ」を求められ、それに応えようとする。 細かな計量をし、さまざまな調理法を試してみながら、使う鍋やフライパン、食材の持ってい

      • 『揚げ茄子の花椒南蛮け』と、糖と脂の話

        夏になると途端に食べたくなるのが、揚げ浸し。 旨味の効いたつゆに、油を吸った野菜が食欲を湧かせ、同時にビールも進む。 夏はそうめんや冷しゃぶなど、さっぱりしたものを食べたくなるように思うけど、実は同時に油も欲してる。 唐揚げや焼肉も夏の方が吸い込むように食べるのは、私だけだろうか。 あと、甘いもの。 一年を通してそこまで食べないケーキも、夏は随分と頻度が上がるのだ。 夏の疲れを取るために、体は正直になる。 「私、もう絶対に痩せるわ」と言ったその日に、カスタード入りの

        • 『かぶの塩麹漬け』と、日々の下ごしらえの話

          日々の副菜に、野菜を塩麹で漬ける。 生で食べられるものなら、野菜はなんだっていい。 かぶや大根、きゅうりやにんじん。 白菜はザクザク切って、キャベツだと包丁も出さずにちぎり、 保存袋にどーんと入れる。 袋の重量も気にせず秤にのせ、具材の大体10〜15%の塩麹を入れて袋の上からモミモミ。 30分以上置けば水分が出て、浅漬けになる。 時間は長くなって問題ないので、前の日の晩にこれを用意しておけば、翌朝お弁当に入れられる。 サラダの具材にしたり、かつおぶしやごま、オリーブオイル

        料理は愛情?(1)「料理はコール&レスポンス」#日々食々

          『れんこんの明太マヨ和え』と、れんこんの話

          秋から冬のれんこんはホクッとしていて煮物にすると格別だけど、 今出回っているものはみずみずしく、食感がいい。 れんこんは、何をしたっておいしい。 ごま油で炒めてしょうゆをチョロっと垂らすだけでもおいしい。 薄切りを揚げてチップスにして、塩をパラパラ。 あれは作る前に思うよりも、食べるとすぐになくなるので、多めに作っても後悔しない。 さっと茹でて甘酢に漬けたり、和え物にしてもいいし、手間をかけるならすりおろして蒸すか揚げるかして、れんこん饅頭もありだろう。 神戸元町にある

          『れんこんの明太マヨ和え』と、れんこんの話

          『たこときゅうりのサラダ』と、魚の棚の話

          6月! 早すぎる。あまりにも早すぎる。 関西はすでに梅雨入りしたそうで、東京もまもなくと言ったところだろう。 これからのじめじめした日を思うと、少しばかり気分が上がらないが、恵みの雨だと感謝して過ごすことにします。 きゅうりやトマト、とうもろこしやオクラといった野菜が旬を迎え、魚介も冬と違ったものをありがたくいただく。 明石のたこは今が旬。 去年は不漁だったようで、東京ではあまり売られてないし、あっても値段もするので、輸入物と迷ってつい食べる機会が減ってしまったが、兵

          『たこときゅうりのサラダ』と、魚の棚の話

          『茄子とトマトの肉味噌炒め』と、レシピを書くことの話

          料理を仕事にして14年。 料理教室で働いていたところから数えると15年だ。 料理家の仕事は、食品メーカーなどの商品を使用したレシピ開発、食材やレシピについてのコラム執筆、雑誌やテレビなどのメディアにレシピ提供をしたり、撮影時の調理担当、または出演をしたり・・・と多岐にわたる。 そのうちの何をするかはもちろん人にもよるが、必ずあるのがレシピを書くこと。 何気なく普段作っているものや新たにトライする料理を、家庭で作れるように分量を計り、文字に起こす。 私は家のごはんは計量せ

          『茄子とトマトの肉味噌炒め』と、レシピを書くことの話

          中華風『大根ときくらげのとろみ煮』と、冷え性の話

          ここ2日ほど東京は寒い。 家の中もス〜っと冷えて、足腰だけでなく首の後ろもひんやり。 お腹も外から触って冷たいくらい冷えてるので、この季節でもカイロを入れることも。 昔、整体に行って「隠れ冷え性」と言われ、ちょっとその先生が胡散臭いこともあって、「んな、アホな。生粋の暑がりやで」と思ってたけど、今になって納得。 胡散臭かったけど、当たってた。 ここのところはお年頃もあり、電車でみんなコートに身を包んでる季節でも、一人タンクトップになりたいくらい(なってはない)汗ばんでる私

          中華風『大根ときくらげのとろみ煮』と、冷え性の話

          「水菜とツナのさっぱり和え」のレシピと「関西の食べ物」の話

          水菜は冬の京野菜だけど、今は一年を通して全国で親しまれる野菜になってる。 生で食べても、茹でても、さっと炒めてもおいしい。 水菜と似ていて、葉のギザギザのないのが壬生菜。 東京ではあまり売ってないので、すっかり使うことがなくなっていた。 ちょっとピリッとしていて、この漬物は絶品だ。 今度関西に帰省したら、京都に寄って錦市場の漬物屋さんを巡ろう。 壬生菜以外にも好きなのが、赤いちっさな花大根や長芋の漬物。 打田漬物のそれは、いい塩梅で箸が止まらなくなる。 東京に来て10年

          「水菜とツナのさっぱり和え」のレシピと「関西の食べ物」の話

          「ピリ辛 長芋のユッケ風」のレシピと「かける」の話

          ここ2週間くらい、私の作る晩ごはんは仕上げに何かをかけるものが多かった。 焼いた鶏肉に牛乳とチーズのソースかける。 赤魚の唐揚げに、ねぎダレかける。 豚しゃぶサラダに、ポン酢とオイスターソースを合わせたタレかける。 茹で鶏に、ポン酢とオイスターソース合わせたタレと似た、でもポン酢じゃなくてしょうゆと酢を割ったタレかける。 気づけば、何かをかける日々でした。 なぜそのような衝動に駆り立てられていたのかは分かりません。 ただ、気づけば何かをかけていたので、しばらく意識的に何

          「ピリ辛 長芋のユッケ風」のレシピと「かける」の話

          ポリ袋でシャカシャカ「キャベツのチョレギサラダ」のレシピと幸せってなんだって話

          春キャベツがおいしい。 春の野菜はパワーをたっぷりとお裾分けしてくれる。 ありがたいな。おいしいな。 そして、それを感じることができるのはとっても幸せなことなんだ、と最近思う。 若い頃のイケイケゴーゴーもいいが、四十代の、掌にほんの少しすくった幸せをスローモーションで見つめるのも悪くない。 体の節々は痛いし、疲れやすいし、それなのに夜中目が醒めて、それから朝まで眠れなくなる日も多い。 食べたらきっちり太るくせに、食べなくても微塵も痩せない。 「四十代楽しいよ」と聞いてい

          ポリ袋でシャカシャカ「キャベツのチョレギサラダ」のレシピと幸せってなんだって話

          「逆転の発想」

          先日もまた、ズボン裏返しで外出してしまった。 朝から料理撮影の仕事でエプロンをしていたので、昼前まで気付かなかったが、縫い目が外になっていた。 スタジオのお手洗いで着直し、何食わぬ顔で調理を続けた。 電車の中で、小さな花柄の、薄い夏物のコットンのスカートの、その左足のあたりに洗濯表示の小さなタグが出ている女性が座っている。よく見ると花柄が霞んでいる。どうやら裏返しのようだ。 スーツの上着の後ろの切り目の、謎のバッテンの糸が付いたままの若いサラリーマンらしき青年がエスカレータ

          自己紹介

          私の名前は「神田えり子」だ。本名は「依理子」と書く。「よりこ」と読み間違えられることが多いので、世話になっている人に提案されて何年か前に料理の仕事では「えり子」とした。 幼少の頃から「えりちゃん」と呼ばれることが多い。年を重ねて交友関係が広がると、「えりさん」呼んでくれる人も増えた。大学生の頃は「えりこ」と言われることもよくあった。 彼氏に「えり」と呼んでほしいと頼んで、特別感を感じていた頃もあったが、思い出すだけで恥ずかしくて胸がかきむしらるようで、走り出したくなる。呼

          エッセイ 私と家族と食卓と〜『ゴマ』

          ここのところ作る料理にゴマを使っているものが多いなあと、気をつけているがまたゴマを使ってしまう。 「ゴマ好きですか?」と聞かれれば「はい」と答えるが、好きな食べ物で「ゴマ」を選ぶほどではない。 でも栄養価も高いし、風味もよくなるから使うといいと思う。まあ、おいしいし、食べたほうがいい和食の合言葉「まごわやさしい」の「ご」はゴマやし。 ゴマというと、今はもう会えない、想う人がいる。 私よりも10歳以上年上で、息子の妊娠中も産後も助けてくれた人だ。 出産の2日ほど前にも一緒にい

          エッセイ 私と家族と食卓と〜『ゴマ』

          エッセイ『コーヒー』

          コーヒーが好きで一日に何杯も飲む。 朝起きたら一杯、息子を送り出しては一杯、仕事や家事をしながら一杯・・・ と一日のうちに5〜6杯飲むこともある。 それが最近、体の調子が変わってきたのか目が覚めるはずのコーヒーが朝の二杯目あたりから飲むとぼーっとしてしまう。 なんとなく体に合っていない気がして、息子の朝食を用意しながらの一杯だけはなかなかやめれずにいるが、今年に入ってから飲む量をかなり減らした。 減らした分、代わりにルイボスティーやほうじ茶を飲む。紅茶や緑茶もたまに飲むが、濃

          エッセイ『サッポロビール』

          先日父の誕生日だった。 ささやかなプレゼントを贈り、息子と一緒にLINEのテレビ電話でおめでとうを伝えた。なかなか会いに行けずに歯がゆい毎日だけど、こうやって顔を見れることに感謝するべきなのだろう。 父とのことでよく思い出す幼い日のいくつかの風景がある。 新聞記者だった父は、特に若い頃は生活が不規則であまり家におらず、泊り明けの日や休みの日は昼近くまで寝ていることがほとんどだった。 まだ幼稚園に入る前のことだったように思うが、「寝かしてあげてね」と母に言われても、勝手に2階

          エッセイ『サッポロビール』