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料理は愛情?(1)「料理はコール&レスポンス」#日々食々

許さん!「夫が食事の途中に外食に行く」

「夫が食事の途中に外に食べに行った」―
出した料理が「おいしくない」と言い、夫が食卓をそのままに、一人で外食しに出て行ったという。
これは、料理家をしながら事務のバイトをしていたとき、そこで一緒だったAさんが話してくれたこと。聞くとこれが初めてではないらしかった。

Aさん自身、「料理はそんなに得意ではない」と自己評価していたが、予約の取れないと言われている日本料理の教室にも通っていたし、食べることも好きそうだった。

また、ほかのBさんは、「私のきんぴらがおいしくないって言って、夫が作り直した」と、話の輪に入ってきた。

今より若くて、もっと血気盛んだった私は、人の夫のことながら、「え!それはひどいやん!怒らへんの?しばいたったらええやん」と、東京のど真ん中で、関西弁炸裂で憤怒した(関西弁どうこうではない。しばくだなんて、私の気品によるものである。でも反省はしていない)。

「神田さんは、料理が得意だから言い返せるんだよ」と言われ、私が怒ったことで、ことあるごとに含羞んですりぬけてきただろう彼女たちに、大きな問題にして突き返してしまった気がした。
心の中では「料理の得意、不得意の問題ではない!」と叫んでいたが、生活には割り切ることも必要、と努力している彼女たちには、これ以上言えまい。

加えてその職場には、3人目の登場人物、Cさんがいる。
Cさんは、夫が食卓を投げ出して外食に行ったAさんのことを、こともあろうに「あの人変わってるから、絶対変な料理作ってるんだよ」と、トイレで私に囁いて来た。
「は?何様やねん!それで、トイレで人の文句とか、ドラマかよ!」と、発狂しかけた。
ああ、ほんとトイレと給湯室って、陰口吸い込む場所になりがち。お祓いして差し上げたい。

未だまかり通る「料理は愛情」とか、「胃袋をつかむ」とかのフレーズを耳にすると、いつもこの一連のエピソードを思い出し、胸がざわつく。
どう考えたって、しばいたろか案件である。

料理は相互関係

レシピのあり方については前回少し触れ、いろいろ思うことはあるが、世の中には「作る人を思いやるレシピ」はここ数年増えてきていている。
「作りおき」や「冷凍保存」、電子レンジ調理や包丁まな板を使わない料理で手間を省くなどなど。
でも、結局作ることに変わりはない。

コンビニ弁当であれ、ファミレスやレストランのテイクアウトであれ、顔が見えなくたって、料理には絶対に誰かが介在している。
料理する人だけでなく、食品を作る人、運ぶ人、売る人・・・食は一人では成り立たない。

料理は「食べる人のことを思って作るとおいしくなる」とか言うけど、食べる方の人も作ってくれた人の顔を思い浮かべたり、目の前にいるのなら顔を見て感謝すべきだと思う。

料理はコール&レスポンス!ライブと一緒だ。
感謝というのは、思ってるだけじゃ伝わりにくい。
作った側の人間は、耳に手を当てて会場からの反応を待っている。
おいしいならおいしいと言ってほしい。確実にモチベアップします。疲れ半減します。
それに、感謝を表せば、食べる方の人だってテンション上がると思うんだけどなあ。まさにライブと同じだ。

人に作ってもらったものをおいしくないって外食に行ったり、作り直したりするなんて、言語道断。
本当にどうしても食べられないものがあれば、ちゃんと気遣いある言葉で伝えてほしい。
ぶつかることもあるだろうが、否定する行為よりはずっとマシだ。

そして、いつも食べる側にいて、料理する側になっていない人は、少しずつでいいから料理することに関わってみるべきだと思う。
アンサーソングもたまには必要です。

最後に。
「おいしくない」って言われちゃった人は、自分をあんまり責めないでほしい。意地悪な態度や言葉で、人の行為を無下にした相手が悪い。

料理に自信を持ちたいという人は、焦らずに、自分のペースで、自分のために料理してほしい。きっと気を遣って相手の顔を思い浮かべ過ぎているから。

頑張りすぎずに、仕方がないと思わずに、たまに「ウザイわ」って口に出してもいいと思う!
ちなみに、トイレと給湯室は人のジメジメした悪意が棲み着いているから、どっか明るくて、自分が心地いいって思える場所で吐き出すといい気がします。

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