私のこだわり 無意味なの? 〜 あなたの味方、「著作者人格権」 を知って欲しい! 〜
こんにちは、弁護士の鈴木恵美です。
著作者の権利には、財産権である著作権と、著作者人格権とがあります。
著作者人格権は、ほとんどのみなさんに馴染みがないと思います。
でも、クリエイターの気持ちによりそう、とっても大切な権利なんです。
そもそも「著作者の権利」が分かりづらい理由
みなさん、所有権は、ご存知ですね。
(?という方は前回のnoteをご覧ください!)
でも、著作権って何?と聞かれると、むむむ。著作者人格権って何?と聞かれると、…え?聴いたことない。という感じではないかと思います。
所有権は目に見える、手で触れる、物理的に独り占めする権利、というと分かりやすいでしょうか?
逆に!目に見えない、形のない権利は、所有権がカバーしていない、守ってくれないということなのです。
そんな時に登場するヒーローが、著作者の権利なのです。
あれ?漫画は手に取れるよ?という疑問を持ったあなた。そうです。漫画の本は一度買ったら、あなたが古本屋さんに売ったり、誰かにあげたりできますね。でも、漫画のイラストを勝手に使う権利は?漫画本を買っても、あなたの手には入っていませんよね。著作物を利用する権利は、目に見えないから難しいのです。
著作者の権利のうち、著作者人格権は、クリエイター自身が持つ、あなただけの権利なんです。
じつは、私もいまゲーム創りに奮闘する中、考えたアイデアやデザインを創っては壊す過程で、
なんとなく違う!
それは嫌だ!
みたいな気持ちになることがあります。
うまく理屈や言葉で説明できない、“こだわり” が私の中に芽生えていることに気づくのです。
他の人からみると、
え?
些細な変更じゃない?
実質同じじゃない?
と思えるかもしれないことも、私にとっては大きな違いで、受け入れがたいと感じることもあります。
不思議ですね。
冒頭の写真は、私のスケッチを立体に試作したものですが、決して芸術性が高い絵ではないことは一目瞭然です・・・。(それでも創作性が認められる資格はあり、著作物になるんですよね!こちらのnoteで書いています。)
そんな私でも、この創作Say!ちゃんに愛着があり、少しでも星の位置や顔のパーツのバランスが違うと、もやもやするのです。
著作権法は、そういうクリエイターの気持ちを大事にしています。
第五十九条 著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。
「一身に専属し」、って難しい表現ですが、あなただけの奪われない権利ですよ、ということなのです。
クリエイターのこだわりは、
奪われない権利なのです。
財産権である著作権は、譲渡可能です。
しかし、著作者人格権は著作者だけの権利であり人に譲渡することができないんです!
そんな、人にあげることができない権利って、なんでしょうか?
(公表権)
第十八条 著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。
(氏名表示権)
第十九条 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
(同一性保持権)
第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
著作権法 第18〜20条一部抜粋
財産権である著作権と違って、少なく、3つです。
でも、どれもクリエイターのみなさんの気持ちに寄り添う大事な条文です。
公表権
公表権は、クリエイターのみなさんが作った著作物をいつ公表するかはみなさんが決められるということです。
私は、音楽がとても好きで、LIVEに行くのが趣味です。
「今日は未発表曲やります!」なんて時には、とてもテンションが上がります。
アーティストは、創った作品をいつどんな風に発表するかを大事にしているんだなと気づかされます。
まだ自分の納得のいくものになっていない、とか、コンセプトに合わないから今回はまだ出したくないとか、そういうこだわりを保護する権利が公表権です。
氏名表示権
氏名表示権は、自分の作品に、自分の名前を付記して欲しい、あるいは、してほしくない、といえる権利です。「©」マークを目にすることが多いと思いますし、ご自身で©×××と表示されている方もいらっしゃるかもしれません。
ところで、©が、何の略か、ご存知でしょうか?
copyrightですよね。
ついでに、Ⓡは?TMは?と話をどんどん広げたくなりますがここでは我慢します(気になる人は調べてみてくださいね!)。実はみなさんは、知らないうちに、著作権やその他の知的財産権に触れたり、自分で表したりしているのです。
さて、19条の中にある「実名若しくは変名」の「変名」とはなんでしょうか?
変な名前なんて、表示して欲しくないに決まってるじゃないか!
と思えますが、もちろんそういう意味ではありません。ペンネームやアーティスト名のことです。
作家活動する際、ご自身の本名ではなく、作家名、アーティスト名で活動されている方もいらっしゃると思います。そういう方が、本名を書かれたら逆に困ってしまうということもあるでしょう。
本名か、活動しているときの名前か、好きな形で表示して欲しいか表示して欲しくないかを言える権利なのです。
同一性保持権
同一性保持権はとても強い権利です。
自分の著作物を、自分の意に反して無断で変更したりできない権利です。
だから、クリエイターのみなさんが嫌なように勝手に変更できません。
一生懸命作ったキャラクターが改変されたらクリエイターのみなさんはいやですよね。
そんな気持ちを守るための権利です。
■今日の1枚
この写真は、著作物を創るゲームの最初の状態を試作しているところです。お金を模した円い形が著作権、ハートのモラルンは著作者人格権を表しています。
土台のツリーは表現物、てっぺんには創作Say!ちゃん(創作星★からきた妖精という設定・・・)が乗っかっています。
横から見るとこんな感じです。↓
著作物って何からできているの?(以前のnoteでお伝えしました!)
著作物ができると、どんな権利がいつ備わるの?
を、視覚的に感じてもらいたいという想いでデザインしましたが、いかがでしょうか?
また、感想やアドバイス、それにゲーム創り参加してみたい!などのコメントもお待ちしております!
みんなに喜んでもらえるゲームが創れたらいいな。駆け出しゲームクリエイターの私の挑戦はまだまだこれからですが、引き続き、応援いただけると嬉しいです!
著作権ゲームのデザイン、ルール原案、意匠、すべてを、あまりクリエイティブでない私が担当しています。 noteの手描きイラスト画像も自作ですが、いつかデザイン面など、プロの方にお願いできたらいいな、と考えています。 応援いただけたら嬉しいです!