モンゴル滞在記 (4)ラクダの子守唄
ラクダの子守唄
まるいものといえば? レコード。
まるい食べ物といえば? これだ。
モンゴル料理、ホーショル!!
連れて行ってもらったレコードショップChinzo’s Records Roomにて、
「まるいものがある場所でまるいものを食べるんだ!」
と、わざわざ注文してくれたのだ。
中にはお肉が詰められていて、ここに野菜を乗せ、くるんで食べる。
(たらふくウクライナ料理を食べたあとだったのだが、おいしくて2枚も食べてしまった。)
食べながら、オーナーさんがあるレコードをかけてくれた。社会主義時代にリリースされたそれは、モンゴルの伝統的な楽曲を収録していた。当時、そのような伝統的な曲をリリースするのは、本当に大変だったそうだ。日本で君が代のアレンジバージョンが発売され物議を醸すのとは、また違う。私たちには、まだ表現の自由があるのだから。
その中にある歌があった。
仔ラクダの歌だ。
親がいなくなった仔ラクダに、血がつながっていない母親ラクダの乳をあげようとする。もちろん母親ラクダは、自分の子でもない仔ラクダに乳をあげようとはしない。けれど、この歌を何時間も歌って聴かせているうちに、母親ラクダの気持ちが落ち着いてきて、その仔ラクダにも乳をあげるようになるという。
なんという、生きることに根付いた歌。
日本でもそういう歌はあったかな?
田植えの歌などは、もしかしたらそれにあたるのかもしれない。
もっともっとモンゴルの昔の歌を知りたくなった。
生きている歌。
帰り道のことだ。
新しい友がタクシーを拾う時、ふと振り返って言ったのだ。
「ここ、太陽の道路と呼んでいるんだ」と。
日本が作った道路を、日の丸にみたててそう言っているのだと。
ODA= Official Development Assistance=政府開発援助
白状しよう。
今でこそ日本神話を歌って作品にしている私だけれど、大学生になるまで古事記に日本神話が書いてあることは知らなかった。もちろん「古事記」のタイトルは知っている。授業で出たからだ。「古事記」「日本書紀」「風土記」と一緒に覚えた。テストに出るからだ。でもタイトルを知っていても、そこになにが描かれているかは知らなかったのだ。
そんな私は、「ODA」という言葉をぼんやりと知っていても、それがなにの略かは考えたことがなかったし、ニュースで流れても聞き流すことしかなかった。
これまで訪れた国で、それが話題になることもなかった。
ここはモンゴル。
初めてODAがリアルな話として私の人生に登場することになった。
私がまるで知らない間に(=ニュースを聞き流している間に)、この国は社会主義から民主主義になり、深刻なエネルギー不足にもなり、その時の火力発電所では多くの日本人が支えていた。
これまでは「日本の文化が好き」「アニメが好き」「書道が好き」というスタンスの方にお会いすることが多かった。けれど、今回は違う。日本は、「インフラを作ってくれた国」「辛い時に支援してくれた国」という立ち位置だった。(もちろん「あの戦争を忘れない」と言われたりもした。)もうひとつ付け加えると、「作ってくれた道路が壊れない国」でもあった。
戦争だけじゃない。自分の国がしてきたこと、していること、まったく知らない己を恥じた。そうして、私はもっと私にできることをしていこうと、ただそれだけを強く思った。
それは、人生かける意味があるよね。
英語はこちらから!
https://ekotumi.medium.com/travel-to-mongolia-4-camel-lullaby-a84d7f19f2a0
モンゴル滞在記 次回は...
(5)本の旅
https://note.com/ekotumi/n/n0ea854b0ad57
(6)拡大しつづける民と安定を求める民
https://note.com/ekotumi/n/n37c8f6c6e27a
(7)ゲルと恐怖と砂漠と
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(8)ゴビ砂漠への旅
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(9)我夢に胡蝶となるか 胡蝶夢に我となるか
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(10)赤い土地バヤンザグ
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