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心のnote|エッセイ・創作

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「きっと、誰にも、聞こえない。」 そんな心をふと、垣間見る。
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#小説

堂々巡り

堂々巡り

うだるような灼熱の日差し、喉を焼き切らんとする真紅のスープ

それらはまるで延々と続くかのように錯覚させ、人の手を一掬いの水へと誘なってゆく

その一杯が、さらなる業火を自ら招き入れるものだとしても

24時45分

24時45分

なんとなく時計を見た。

日時で言えば、今日は昨日になったあと。

そういえば何も食べていないなと気付いた途端、お腹が鳴った。
誰が聞いているわけでもないと、頭ではわかっていても気恥ずかしさがするすると詰め寄ってくる。

少しばかりの元気を糧に、何かないかと冷蔵庫を漁る。

最近、定番と化しているローソンの冷凍チャーハンをレンジにかけている間、500Wで4分半。

この前、実家に帰った時に元自室か

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いま、残業の気分です。

いま、残業の気分です。

「おつかれさまです」

いつもなら18時ごろのセリフも
今日は19時過ぎまでおあずけだ。

もう一人が早上がりしたとわかって
あと一仕事しようと心に決めた。

今日はあの人ももう上がりそう。

「おわったー」の声が聞こえるや否や
パタリのノートを閉じる。

いそいそと片付けをする私に
日常モードの彼からの誘い。

「このあと、ごはん行かない?」

「つもり」積もった「大丈夫」

「つもり」積もった「大丈夫」

入れたはずの砂糖が
微塵も感じられない
ブラックコーヒーだったり

手にしたはずの布巾が
音もなく横たわっている
シンクだったり

そうした一つ一つのことが、
よろめいた心を映し出すようで

泣けない私は、空を見る。

昨日、祖母が、亡くなった。

祖父、親戚のおばさん、
飼っていた3匹の犬やハムスター。

たくさんの死と向き合ってきた。

それなのに、ペットで泣けて
人では泣けない。

傍から聞けば、なんて不幸者なのだろう。

初恋の人にフラれた時の方が
よっぽど涙腺が緩かった。

涙は、どこから来るのだろうか。

奪われるもの。

奪われるもの。

あなたはきっと、好意のつもり。

無垢な笑顔を傷つけぬよう、
火照りをよそ目に浮かべた笑顔。

つうーと伝わる雫も無下に
これでもかというその眼差しが。

精一杯のこの思いやり
私を貫き、じわりと真紅。

その熱量が奪うものなど
あなたはきっと、知らないままに。

方位磁針はいつも、

方位磁針はいつも、

去年の花火は綺麗だった。

きっと、もう見れない。
あのとき、あの一瞬の、花火。

そもそも前日に誘う有馬が悪い。

いくら手際の良い私だって
120km先の浴衣は取りに行けない。 

 おばあちゃんがいなければ
どうなったことか。

待ち合わせまであと5分。
ふっと風が吹いた。

「あ、すみません!」

ぼーっとしすぎだな。
どうも夏の暑さには弱い。

「いえ。」
という声とと

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水没。

水没。

 ふと顔を上げると、ポツリと頬を濡らす雫。降水確率はゼロ。
知らず識らずのうちに緩み、軋んだそれは、音もなく崩れ落ちた。

昨年の僕だ。

突然、周りの酸素が全て蒸発した。
震えて発信ボタンを押せない人差し指は、この世の何よりも速い。

胸を焦がすガスバーナーの、上ネジは硬く閉じたままで。

瞼を押しのけた先に映る夕飯の残りは、もうすでに亡くなっていて。
風を切る車輪はいつも右へ右へと流れていく。

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僕には気持ちが込めれない

僕には気持ちが込めれない

あるとき、サークル活動の一環で
伝言ゲームならぬ、伝顔ゲームをした。

教育大らしい、部室の一室。

地域の子どもたちと関わるだけあって
ユニークなゲームをいくつも知っている。

お題は「笑顔」

最初だからというのもあるし、
他のどの顔よりも楽しくないわけがない。
アイスブレイクにはもってこい、

のはずだった。

列の最後の子らの答える声に
不協和音が混じる。

「真顔」

誰しもが目を疑

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