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#小説
いま、残業の気分です。
「おつかれさまです」
いつもなら18時ごろのセリフも
今日は19時過ぎまでおあずけだ。
もう一人が早上がりしたとわかって
あと一仕事しようと心に決めた。
今日はあの人ももう上がりそう。
「おわったー」の声が聞こえるや否や
パタリのノートを閉じる。
いそいそと片付けをする私に
日常モードの彼からの誘い。
「このあと、ごはん行かない?」
「つもり」積もった「大丈夫」
入れたはずの砂糖が
微塵も感じられない
ブラックコーヒーだったり
手にしたはずの布巾が
音もなく横たわっている
シンクだったり
そうした一つ一つのことが、
よろめいた心を映し出すようで
泣けない私は、空を見る。
昨日、祖母が、亡くなった。
祖父、親戚のおばさん、
飼っていた3匹の犬やハムスター。
たくさんの死と向き合ってきた。
それなのに、ペットで泣けて
人では泣けない。
傍から聞けば、なんて不幸者なのだろう。
初恋の人にフラれた時の方が
よっぽど涙腺が緩かった。
涙は、どこから来るのだろうか。