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『流行に踊る日本の教育』

『流行に踊る日本の教育』石井英真(2021年)東洋館出版社

 とてもインパクトのある題名で、さまざまな議論がされた本書ですが、とても重要な指摘が詰まった本だと思います。

 教育改革というのは「よいこと」として無批判に受け入れられがちです。
しかも近年は民間企業の事業も絡んだ改革が多く、ネットで教育改革の情報も多く拡散されるため、多くの人々の関心を集めやすい状態になっています。

 本書では、教育改革の正の部分ではなく、改革による副作用や裏側に潜むリスクについて丁寧に検討をしている本です。

  • コンピテンシーベースの改革

  • 個別最適化

  • アクティブ・ラーニング

  • プロジェクト型学習

  • インクルーシブ教育

  • 学校研究における「仮説検証」

  • 外国語教育

  • 授業のスタンダード化

  • 大学入試改革

  • エビデンスに基づく教育

  • カリキュラム・マネジメント

  • Ed Tech


 これらは近年の改革のトレンドになってきたワードですが、これらについて真正面から批判的検討を加えた本というのはあまり見かけないため、かなり貴重だと思います。

 序章の中で、京都大学の石井先生は次のような問いを発することが重要だと指摘しています。

- 「それは本当に新しい?」
- 「過去に日本で同じようなことはなかったの?」
- 「実際、他の国ではどう実践されているの?」
- 「問題はないの?」
- 「海外や過去においてどんな議論があるの?」
- 「他の可能性はないの?」
- 「そもそも何を目的としているの?本当に大事なことは何なの?」

 改革の副作用に目を向けることで、これからの教育をより立体的に描けるようになるのではないかと思いました。そして過剰な改革に対しては冷静に立ち止まり、見直していくことも大切だと思います。

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