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やっと味方ができた気がした。

次の弁護士は父の知り合いで、これまでもセカンドオピニオンを担当してくれていたため、引き継ぎもスムーズだった。

「私も、前任弁護士同様、ダンナさんは資金難の状況にあると推察しているので“離婚したくない”“夫が急に家を出て行って困っている”というスタンスで時間稼ぎし、ダンナさんが折れてくるのを待つ作戦でいきましょう」と言った。

私は、毛ほども結婚生活など続けたくなかったが「それで勝てるのであれば」と応じた。

すると弁護士は「勝つ……というのが、あなたにとってどのような状態を指すのかわかりかねるが、離婚調停・裁判というのは、必ずしも満足のいく結果にならないことの方が多い」と言った。

私は、夫にビタ一文払う気はなかった。そして、今住んでいる物件をローン残高を引き継ぐ形での引き取りを望んでいた。今まで受けたモラハラを考えたら、慰謝料もふんだくりたいと考えていると伝えた。

弁護士は困ったような笑みを浮かべながら「残念ながら」と言って私の目を見て「それは難しいでしょう」と続けた。

夫は私に数々のモラハラを行い、夫婦としての夫の責務を放棄し、勝手に仕事を辞め、勝手に収入を激減させ、勝手に借金をし、挙げ句の果てに失踪した。私は実家では夫を立て、家事をこなし、仕事もして、相合傘などもせずw、妻としての責務を果たしていた。

なのに、なのに。なんで……?

「日本の法律では、モラハラでは慰謝料がほとんど取れない。取れたとしても20万〜30万円が関の山。訴えても立証することが難しく、労力に見合わないというのが現状。暴力を振るわれていたら、話は別だが。暴力を振るわれたことは?」と聞かれた。

ない。
暴力は、ない。
でも、サーキュレーターを蹴り壊されたり、壁やドアを殴って穴を開けられたり、私は心療内科で診断を受けたこともある。診断書を取り寄せることも多分できると思う、と言った。

「そうですか……。直接暴力を振るわれたことはないんですね。奥さんの安全確保という意味で、暴力を振るわれなかったことは良いことではある。しかし、慰謝料を取るとなると……これは難しいと言わざるを得ない」

呆然とする私を慰めるように「でも、できる限りのことはしましょう。慰謝料が取れるかどうかはともかく、相手への牽制になることは間違いない。切り札として使えるかもしれないので、今まで受けたモラハラについてまとめておいてほしい」と言われた。

また、夫がたびたび家出をしていたことについて「何か家出の証拠や、誰か証言してくれる人はいないか」と尋ねられた。

いる!証人ならいる!

調停を進めるにあたり、モラハラの事実を集めること、夫の家出を証言してくれる人へのインタビューが決まった。

これまでの調停では、婚姻費用の件にばかり話題が集中し、離婚原因についての話し合いが頓挫していたので、そこをちゃんと調停員と詰めていこう、と。ありがたい!

「次に婚姻費用についてだが、これまでダンナさんの会社の決算報告書や貸借対照表などの提供は?」

そう。それが見たいのに!……ないのだ。
再三、会社の出入金についてわかる資料を請求しているにも関わらず、夫はのらりくらりと資料の提出を拒んできた。

「こちら側から資料を出しましょう。こちらが源泉徴収票を提出したら、申立人も資料を出してこざるを得なくなる」という。半信半疑ではあったが、自信を持ってそう言われ、過去2年分の源泉徴収票を提出することに同意した。

「申立人からの資料が届いたら、きちんと中身を精査していきましょう。さて。がんばりましょう!」

……やっと味方ができた気がした。


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