ライチョウ

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最近の記事

いきなり斬りつけるタイプのやつ #呑みながら書きました

①スリムクラブ文章をスリムにしましょう、というから、スリムにしたら圧を感じるって人もいて、兎角この世は難しい。「参加は任意です。以上」だと圧がかかるから「みんな忙しくて大変だよね。だから全然強制とかじゃなくて、もしよかったらなんだけど、うん、無理にとは言わないから、もし協力してくれたら嬉しいな⭐︎」ってする。 カタマリダマシイというゲームを知ってるか。雪だるまみたいに、ゴミの塊を転がしながら大きくしていくんだ。最初は小さいものしかつけられないんだけど、そのうちその辺に生えて

    • ひじきかあさん煮定食

      「おいしいですね!」「おかわり!」 アニメの大食いキッズが言う。何を隠そう大人気アニメドラゴンボールの大食いシーンである。長男6歳は食い入るように見ている。十分士気を高めたところで、いざ、出陣。 「今日は長男くんの好きなミートソース・スパゲティだよ」 … 長男は食に興味がない。興味がないと言うより、世の中にはもっと面白いものがたくさんあるらしい。 食事と関係ない余計なものは置かないようにしている。しかしそこは食卓。お茶のボトルや、メモや、ティッシュ、箸や皿、全て遊び道

      • 怖い時、好きなものは絶対離さない、これが大事でしょう

        「ポケットの中で静かにしている芋を握って、落ち着こう。怖い時、好きなものは絶対離さない、これが大事でしょう」(本書159ページ) 暗闇の中であてのない男に抱かれながら、背中にぎゅっとしがみつく。その時、広大な海に漂う難破船みたいな気持ちになる。だからだろうか。怖い。怖い。怖い時、好きなものは絶対離さない、これが大事だ。 ※※※ 稲田万里著『全部を賭けない恋がはじまれば』を読んだ。 まず、行為を先にする。まず、試みる。 それが人間の自然ななりわいであるように。 こころは

        • 春はみんなの中に眠っている #春野菜塗り絵コンテスト

          久しぶりに、企画に参加することにしました。 文章ではなく、塗り絵の。 ん?塗り絵。そう、小学校の美術の成績は3、それ以降自分のセンスの悪さを呪いながら生きてきた、美術も絵もデザインもトーシロなわたしが、塗り絵だと。(知らんがな) でもね、ちまちま作るのは好き。そして色を眺めるのが好き。植物の、建物の、空気の。 確か中学生の頃買った色鉛筆を残してあったはず、と机の引き出しを開けてみる。 わたしが植物にハマったのはもう30を過ぎてからなんだけど、不思議と緑色がたくさんあった

        いきなり斬りつけるタイプのやつ #呑みながら書きました

          日記 生命に対して謝らない

          今夜も寝る前に、おやすみがわりの日記を一つ。 4月から働こうと思っていたのだけど、それができなくなった。 今までできなかった分を取り戻せるかなと思っていたし、家族からもそう期待されていた。現在、わたしが働けない分は家族(特に母親)に負担をかけている。母も高齢となり身体を壊すことも増えていたので、わたしが働いて少しでも負担を減らしたい、と思っていた。 わたしがまだしばらく育児に手一杯だと知った時、両親はそれについて何も言わなかった。ただ、あんた歳取ってるんだから身体に気を

          日記 生命に対して謝らない

          日記 虫の知らせ

          時折、脈絡なく呟きたくなる。 昨日はこんなことを考えていた。 人生には、大事にして楽しみに読み進めていた本を、突然取り上げられるような事態が起こる。 本が手元になくなるのはがっかりするけれど、だからといってその本を嫌いになるわけじゃない。 たしかに続きを読みたかった、とは思う。自分で決めて手放したものではない分、悲しいし寂しい。 できれば大切なものは側に置いておきたい。だけど、もっと大切にしなければならないものの前で、それは無力だ。例えば生命と引き換えに、なんて言われた

          日記 虫の知らせ

          月夜のスキップはピチカートのように(小説)

          「もし告白されていたら、付き合ったんですか?」 小さな目眩を覚える。仄暗い迷路から出て、夢から覚めたようだった。長い一日の、長い会社員生活の終わり、ぼんやりとした静けさを破って放たれたその一言の驚き。 「そうねえ」 彼はわたしより少し年上で、微かに猫背で、痩せていて、神経質だった。指示も細かく、礼儀にも厳しかった。ただ、細かく厳しくはあるが、佇まいや言動に柔らかな繊細さがにじみ出ていて、あからさまに敵を作るタイプではなかった。 また、仕事に対して完璧主義ではあったが、女

          月夜のスキップはピチカートのように(小説)

          夢の灯火〜僕たちは月を見失った〜 #クリスマス金曜トワイライト

          くねくねと曲がる道を、まるで先の見えない人生のようだと感じながら、走っていた。 波のざわめきが遠くに聞こえる。 僕は何かから逃げるように必死に走った。 家々の明かりだけがほのかに青白く道を照らす。夜の闇は一層深くなったようだった。 − − − あの二人きりの逃避行からほどなくして、あなたはこの街からいなくなった。転校したと、風の噂で聞いた。 世間はしばらく騒がしかったけれどやがてそれもなくなり、僕はまた、周囲の様子をうかがい、臆病なほど慎重に生きるようになった。守るものな

          夢の灯火〜僕たちは月を見失った〜 #クリスマス金曜トワイライト

          足の折れたバッタ 

          「笑えるし、いいこともあるし、わたしはだいすきなことがいっぱいなの」 3歳の息子は、虫を見つけるのが得意。 落ち葉の中で丸まったダンゴムシや、木の高いところでジンジン鳴いているセミ、ヒラヒラと屋根を越え天空に飛んで行った蝶々まで、なんでも見つけます。 最近は雨が続いていたのですが、ごおごおと音がするくらいの激しい雨の日に、窓から薄暗い外を見て「あれ、あそこにクモの巣ある!」と言うので驚きました。 わたしが見ても、土砂降りの雨とびちゃびちゃはねる泥、風に揺れている木が見

          足の折れたバッタ 

          1《ONE》

          僕は空を飛ぶことに魅せられたパイロットだ。空は限りがなく、果てしない。僕は果てなき大空を愛し、果てしなき空間を飛ぶことを愛する。 時空を超えて、世界にはたくさんの物語が同時進行している。一瞬ごとに枝分かれして、無数の別の世界に分かれていく。 織り機に張った経糸の間に、緯糸を通して織り物をつくる。時には手でゆっくり。時には機械のような強い力で。滑らかに進むこともあれば、激しい摩擦で熱を帯びることもある。 世界を一枚の布に見立て、それを広げたらどんな模様になっているのだろうか

          我は石を抱きて泣く #呑みながら書きました

          我は石を抱きておうおう泣く。粉々に砕け散った石のかけらを抱いて、夜空の月を仰いで泣く。 − 昔、昔、わたしのお父さんは、それはりっぱな、頑丈な橋をつくりました。わたしが大きくなって初めて一人で橋を渡ろうとした時、お父さんは、目を回して驚きました。 痩せ細って痛々しいほど目の大きくなったお父さんは、かわいい花を、大波が飲み込んでしまうのではないかって、喉を締め付けるような恐怖で夢中で橋を、叩き壊しました。 橋はたくさんの石のカケラとなって、わたしとお父さんを襲いました。

          我は石を抱きて泣く #呑みながら書きました

          学校を抜け出した日

          みー助は、ねこの男の子です。 ねこはふつう、自分の力でつめを出したり、入れたりすることができます。 だけどみー助は、まだ、それができません。 だから、みー助のつめは、ずっと出たままです。 「いっしょにあそぼ」 やすみ時間、みー助とかえるくんは校庭に出ました。 かえるくんは、クラスの人気者。 みー助も、かえるくんが大好きです。 雨がやんで、地面がしっとりぬれていました。2人の上に葉っぱがひらひら落ちてきて、かえるくんの背中にぴたっとくっつきます。 「や、や」 かえる

          学校を抜け出した日

          「7月の 雨のち晴れの 誕生日」

          「花が咲くまでは無理かなぁ」 君は子どものように笑いながら、庭の小さな花壇にひまわりの種を植えた。 一筋の光がさして、君を照らす。 初夏の日差しはまだ柔らかい。 澄み切った青い空から、爽やかな風が吹いた。 − 君は。 一見、粋でさっぱりしている。 でも、時折なぜか自分を追い詰めて、悔し涙を流す。 たくさんのものを抱えているようで、何も持っていないかのようにすがすがしい。 指揮官のように堂々と振る舞ったかと思えば、少女のようにはにかんだりする。 出会った頃から

          「7月の 雨のち晴れの 誕生日」

          もし一つしか言葉を交わせなかったら、人はどんな言葉を選ぶだろうか。〜コロナ禍中の一歳半健診〜

          怖かった次男の1歳半健診がやってきた。 1歳半健診とはいうものの、このところの禍で延び延びになり、すでに次男は1歳半をだいぶん超えている。 言葉は、まだ出ていない。 長男の時は、たくさんではないけれど、言葉は出ていた。 それでも、「腕は?」「足は?」「耳は?」の問いに指さしはできなかったし、「犬は?」「車は?」の問いにも、答えられなかった。 「このぐらいには、できてて欲しいんですけどね」 空気が凍り、気まずい沈黙が流れた。 そして運悪く、歯科衛生士さん、栄養士さんの

          もし一つしか言葉を交わせなかったら、人はどんな言葉を選ぶだろうか。〜コロナ禍中の一歳半健診〜

          1歳半健診の憂鬱②〜かつてはわたしも"そっち側"だった〜

          「そんなに良くないですか?」 1歳半健診が、怖い。 言葉の遅い次男の1歳半健診が怖すぎて、何とかパニックにならないで受診したい。 このnoteは、わたしが心の整理をするためだけに書いている。 長男の時は行く部屋行く部屋でダメ出しをされ、気まずい空気だけが流れた。 わたしは世間知らずというか馬鹿正直というか、そういうところがある。「成長を一緒に喜び合いましょう」なんて書かれたものだから真に受けて、ハイ!喜びましょう!とニッコニコで、何の予備知識もなく行ってしまった。

          1歳半健診の憂鬱②〜かつてはわたしも"そっち側"だった〜

          1歳半健診の憂鬱①〜ダメ出しを受けてヨロヨロ歩いた日〜

          約2年半前。 わたしは心身ともズタボロになって、ヨロヨロ歩いていた。モノクロの世界で、自分たち親子だけが、置いてけぼりになった気がした。 周りの景色が流れて見えた。 ……… 「お子さんの成長を一緒に喜び合える機会にしたいと考えております」 明後日は、次男の1歳半健診。このところの禍で少し遅れたが、次男にもその時期がやってきた。 正直、行きたくない。 問診票を書く手が震える。動悸がする。汗が噴き出す。 思い出すだけで、いや、思い出したくなくても、自然に顔がこわばり、

          1歳半健診の憂鬱①〜ダメ出しを受けてヨロヨロ歩いた日〜