秋江智文(あきえともふみ)|演技講師

演技講師・俳優・演出家・通訳。マイケルチェーホフ東京代表。イギリスで舞台芸術を学ぶ。 …

秋江智文(あきえともふみ)|演技講師

演技講師・俳優・演出家・通訳。マイケルチェーホフ東京代表。イギリスで舞台芸術を学ぶ。 ビジネスパーソンや子ども向けにコミュニケーションスキルや表現力向上のレッスンを行う。演劇を通しての語学習得の記事も寄稿。料理好き(煮込み料理得意)。読書好き(最近は自由からの逃走を読んでいる)。

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自己紹介:マイケルチェーホフ演技テクニックの演技講師になった理由

 初めまして東京を拠点に活動している演技講師、演出家、役者の秋江智文と言います。中でも演技講師という活動をとても大切にしています。一言に演技といっても様々な手法やアプローチが存在します。私はその中でもマイケルチェーホフ演技テクニック(以下チェーホフテクニック)という手法を専門で教えています。  このテクニックは20世紀を誇る役者であったマイケルチェーホフが考案した演技メソッドで、直接の教え子には「王様と私」のユル・ブリンナー、役者と監督として有名なクリント・イーストウッド、マ

    • 褒美か?罰か?脳内物質から見た演技

       芝居の登場人物は究極の状況の中で、決断と行動を迫られます。ロミオはジュリエットに会うため、敵対するキャピュレット家の庭園に捕まったときのリスクをかえりみず忍び込みます。そうした状況下にいるキャラクター、つまりそれを演じる役者は、ただならぬ高揚感、切迫感、焦燥感を抱いており、観客はその鬼気迫り臨場感のある演技を観て心動かされるわけです。俳優はそうした役が経験しているだろう特別な感情や感覚を体験しなくてはいけません。  ではそうした特殊な状況や俳優の行動からもたらせる「○○感」

      • 演技トレーニング「真似る」

         東京を拠点にマイケルチェーホフ演技テクニックを使って演技を教えている秋江智文と言います。今回は日常的に行える稽古方法を紹介します。  紹介したい稽古は「真似る」です。「学ぶ」の語源は「真似る」から来るよう、技術は見よう見まねで学び、自分のものにすることでそれを得ていました。とりわけ人を扱う演技にあっては、人を真似ることでその人の心理や行動を知るきっかけになります。  けれど演技は決して真似ることではありません。あの人の演技を真似たら良いというわけではありません。演技はざっ

        • 感情と身体感覚のリンク:からだことばを使った演技トレーニング

          「あのデアゴスティーニが喉から手が出るほど欲しい。」、「店員は鼻息を荒くして期間限定商品を勧めてきた。」、「彼の指摘を聞くのは耳が痛い。」などの文章は、実際には体は動かしてないけれど、感覚や内的な動きを通して意味を生んでいます。私たちはそれを頭だけでなく、身体感覚を通して直接的に知ることができます。  こうした身体と心がつなげ意味を作り出している慣用句をからだことばと言います。こうした慣用句で私たちは身体感覚に根付いた微細な感情的な表現をすることができます。たとえば、「彼は推

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          ベーシッククラス「演技の使える基礎作り:理論から実践」

           演技で悩む俳優は、「基礎を知らない/習ったことがない。」、「メソッドはなんか聴いたことがあるけど使えない」、「色々やったけど、何が基礎かが分からない。」ということを言います。こうした基礎がないということで俳優は不安で悩み続けます。  このベーシッククラスのテーマは「演技の使える基礎作り:理論から実践」です。演技の土台を求める俳優のために、演技に必要な基礎、その応用方法、実践まで学びます。またできるだけ偏った知識や経験にならないように、演技に必要な力を総合的に学べるカリキュ

          ベーシッククラス「演技の使える基礎作り:理論から実践」

          3日間集中インプロ・演技ワークショップ~ 演技のための即興、即興のための演技~

          一瞬のひらめきや反応から生まれる表現はとてもクリエイティブで個性的です。今、まさに目の前で起きる即興的な表現に観客は感動し、やっている本人でさえも自分のパフォーマンスに驚きさえします。 スタニスラフスキーシステム、チェーホフテクニック、マイズナーテクニックなどの演技トレーニングの目的には、「今、ここで」の表現を生み出すための即興力の向上もその中に入ってきます。また即興(インプロゼーション)は、キース・ジョンストンやヴァイオラ・スポーリンにより体系的な考え方やトレーニングが作ら

          3日間集中インプロ・演技ワークショップ~ 演技のための即興、即興のための演技~

          真実は心と身体のどちらからやってくる?

           映像や舞台の世界の中で自分が演じる役が、その存在を違和感なく信じられることは、どのようなジャンルや作品にやるにせよ、必要になってきます。演じている本人にもとっても、観客からも役が生きていると信じられる演技を「真実」であると形容されます。外からも内からも演技が真実であると作品を楽しむことができます。  ではそうした「真実」と言われるような演技にはどのようにたどり着けばいいのでしょうか?またそうした「真実」は、繰り返される撮影や、何回もの公演でどのように再現できるのでしょうか?

          真実は心と身体のどちらからやってくる?

          伝え方で演技は変わる

          「演技の学び場」の意図  日本では演技の指導方法は確立されていない。ほとんどの指導者が、かつて先輩や演出家に言われたこと、日々の研鑽で発見したことから、自らの教授方法を確立していっているんだろうと思う。そして日本には演技書はたくさんあるけど、私の知る限りでは演技講師のための教材がない。(洋書では講師のための本はある。)しかし演技を教えたり学んだりすることは、演技レッスンだけでなく、現場や稽古場にまで及んでいる。けれど私のような日々教えることばかり考えている人からすると、そう

          演技は人から学べない、演技は自分の体から学ぶ

           演技は人からは学べません。演技はクラシックバレエ、日本舞踊、狂言などとは違って型ややり方がありません。そうした伝統的な表現には、初心者のレベルともなれば、その技術には明確な間違いがあります。 けれど演技は他の役者や先輩を真似てみても、何か不自然で表面的な表現になってしまいます。また先輩や演技講師から、言い回しや動き方を教えられても、そこに自分なりの意味を見つけないと、中身のない表現になってしまいます。  先人の多くの演技講師や俳優たちが、いかにして感情がわき、またお客さんか

          演技は人から学べない、演技は自分の体から学ぶ

          能力を妨げ、誤解を生む演技の「癖」

           セリフを言うときに前のめりになる、演技をしていて肩に力が入ったり瞬きが多なったりする、相手から目線を外してしてしまうなど、どの俳優には必ず多かれ少なかれ癖があります。また決まったパターンの演技をしたり、言い回しに頼ったりするのも俳優にとって習慣化した精神的な癖と言えるでしょう。  ここでいう癖は、朝は早起きして読書をしたり、何の苦も無く常に深い呼吸ができたり、相手と自然と目を見て会話できるといったポジティブなものではなく、人が持っている能力を妨げたり、パフォーマンスを落とし

          能力を妨げ、誤解を生む演技の「癖」

          役の力関係「ステータス」

           関東を中心に演技を教えている秋江智文です。専門はマイケルチェーホフ演技テクニックですが、どんな俳優でも必要だと思う、演技の基礎についてお伝えしていきます。 芝居におけるステータス  王様が信頼していた家臣に裏切られる。馬鹿にしていた部下が出世して追い抜かれ逆の立場になる。子どもだと思っていた息子に助けられる。  芝居の登場人物にはステータスが与えられ、これが芝居中に逆転したり、人に譲ったり、変化したりすることで様々なドラマが作られることがあります。ステータスは二者間以上

          【大阪開催】マイケルチェーホフ演技テクニックWS役作り:想像力で構築するキャラクター

           マイケルチェーホフ東京の代表の秋江智文です。大阪の一心寺シアター俱楽さんの協力で9月17/18/19日で、劇場を使用しての3日間のWSが行います。  今回のレッスンのテーマ「想像力で役を構築する」ですが、3日間という限られた時間の中で「家や稽古場で行える、想像力を使った効果的な役作り」に取り組みたいと考えています。  そのためにWSでお伝えすることは、大まかに「普段のトレーニング」、「役を体で探求する」、「即興を使う」ことです。これらは程度の差はありますが、一人でもできます

          【大阪開催】マイケルチェーホフ演技テクニックWS役作り:想像力で構築するキャラクター

          小規模でもできる講師とクラスを結ぶ「ハイブリッドオンラインレッスン」の可能性

           コロナによってのもたらした良い点の一つは、オンラインでの可能性が大きく広がったことだと思います。  継続的な演技のレッスンを届ける団体「マイケルチェーホフ東京」の代表として、2020年4月から緊急事態宣言が発令された当初から、様々なレッスンや講演をオンラインで行ってまいりました。こうしたオンラインでの企画は遠方からの参加ができ、自室でできる気軽さなどの利点がある一方、空間の制約、パートナーの欠如、交流の困難さなどの身体表現においてのマイナス面がありました。(しかしこの点は多

          小規模でもできる講師とクラスを結ぶ「ハイブリッドオンラインレッスン」の可能性

          「今ここにいる」意識を高める~俳優のための演技の基本『集中の円』~

          東京で演技講師、演出家、俳優をしている秋江智文と言います。マイケルチェーホフ演技テクニックを専門で教えています。 ここでは演技初心者の方に分かり易く、演技のイロハをお伝えできればと思っております。 ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―  演技をしていて自分のセリフや動きに必死になって周りの人やものを忘れてはいませんか?  この集中の円(注意の輪)は、俳優が相手やものに集中して「今、ここ」に存在して演技ができるよう、近代演技術の父K.スタニスラフスキーによって

          「今ここにいる」意識を高める~俳優のための演技の基本『集中の円』~

          体の緊張は下半身が原因かも

           「肩や首に力が入ってしまう。」「他の共演者や演出家から緊張していると注意を受ける。」「のどを簡単につぶしてしまう。」、このような注意を受けている人は、もしかしたら下半身が使えていないのが理由かもしれません。 下半身と上半身の関係 なぜ声の悩みや上半身の緊張が、下半身からくるのかピンと来ないかもしれません。体を「家」で例えれば下半身が土台であり、上半身はその上に立っている建造物です。そもそも下半身がしっかりとしていないと、上半身がどんなに強固であっても安定はしません。  多

          シーンの前(before scene) : 役の背景を想像させる

          東京を中心に演技を教えている演技講師の秋江智文といいます。マイケルチェーホフヨーロッパやMICHAという国際的な団体で講師養成を受講し、演技スクールや事務所などで演技を教えております。 今回も演技の基礎について分かり易くお伝えします。またワークもあるので役者仲間とやってみてください。 シーンの前(before scene) まず好きな映画や芝居の開始直後の役を思い浮かべてください。  登場した役からは雰囲気、緊張感、意図などが感じ取れるはずです。思わずこの役に何があった

          シーンの前(before scene) : 役の背景を想像させる