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演技の基礎

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プロの俳優を目指している方のために、基礎的な知識とエクササイズをかきました。もちろん現在も活躍されている俳優の方も、自分の考えと照らし合わせて読んでください。
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体の緊張は下半身が原因かも

体の緊張は下半身が原因かも

 「肩や首に力が入ってしまう。」「他の共演者や演出家から緊張していると注意を受ける。」「のどを簡単につぶしてしまう。」、このような注意を受けている人は、もしかしたら下半身が使えていないのが理由かもしれません。

下半身と上半身の関係 なぜ声の悩みや上半身の緊張が、下半身からくるのかピンと来ないかもしれません。体を「家」で例えれば下半身が土台であり、上半身はその上に立っている建造物です。そもそも下半

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役作り、自分との「同じ」でなく「違い」を見つける

役作り、自分との「同じ」でなく「違い」を見つける

※毎週木曜日に行っているマイケルチェーホフ演技テクニックのレギュラークラスの振り返りです。

 役者がする仕事の1つと言えば「役作り」。役作りの目的には、役の考え方、視点、状況、身体的特徴を理解し表現できるようにすることにある。先週のクラスではこの役作りを行ってダイアローグに取り組んだ。

 私が高校で演劇をしていた時、先輩に役作りには二種類あると言われたことがある。それは「自分に役を近づける」か

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内からの演技と遊びの感覚

内からの演技と遊びの感覚

 演技を行う上で重要なものが、内側の衝動で動くことです。これによってまるで芝居の中の人間が感情やインスピレーションに従って生き生きと行動しているように見えるのです。トレーニングの初めで悩むこととは、自分のやりたいことが分からない、見つからないということです。
 こういった内的な衝動や活力に従って活動することを、インプロの父ともいえるキース・ジョンストンが言う「自然発生(spontaneity)」、

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「声」の改善はまず「姿勢」から

「声」の改善はまず「姿勢」から

 声はその人の性格、考えていることなど表してしまいます。

 私たちは直観的に、声を聞いてその人がどんな人なのか判断してしまいます。俳優たちの声に関する悩みが多く寄せられます。

 かといって私はヴォイストレーナーではないので、完璧な解決策は提示できるとは思っておりません。(演劇を専門にヴォイストレーナーは日本では希少です。)

 しかしそれでも基礎的な俳優のトレーニング方法で、ある程度改善できる

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演技は人から学べない、演技は自分の体から学ぶ

演技は人から学べない、演技は自分の体から学ぶ

 演技は人からは学べません。演技はクラシックバレエ、日本舞踊、狂言などとは違って型ややり方がありません。そうした伝統的な表現には、初心者のレベルともなれば、その技術には明確な間違いがあります。
けれど演技は他の役者や先輩を真似てみても、何か不自然で表面的な表現になってしまいます。また先輩や演技講師から、言い回しや動き方を教えられても、そこに自分なりの意味を見つけないと、中身のない表現になってしまい

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感情と身体感覚のリンク:からだことばを使った演技トレーニング

感情と身体感覚のリンク:からだことばを使った演技トレーニング

「あのデアゴスティーニが喉から手が出るほど欲しい。」、「店員は鼻息を荒くして期間限定商品を勧めてきた。」、「彼の指摘を聞くのは耳が痛い。」などの文章は、実際には体は動かしてないけれど、感覚や内的な動きを通して意味を生んでいます。私たちはそれを頭だけでなく、身体感覚を通して直接的に知ることができます。
 こうした身体と心がつなげ意味を作り出している慣用句をからだことばと言います。こうした慣用句で私た

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真実は心と身体のどちらからやってくる?

真実は心と身体のどちらからやってくる?

 映像や舞台の世界の中で自分が演じる役が、その存在を違和感なく信じられることは、どのようなジャンルや作品にやるにせよ、必要になってきます。演じている本人にもとっても、観客からも役が生きていると信じられる演技を「真実」であると形容されます。外からも内からも演技が真実であると作品を楽しむことができます。
 ではそうした「真実」と言われるような演技にはどのようにたどり着けばいいのでしょうか?またそうした

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能力を妨げ、誤解を生む演技の「癖」

能力を妨げ、誤解を生む演技の「癖」

 セリフを言うときに前のめりになる、演技をしていて肩に力が入ったり瞬きが多なったりする、相手から目線を外してしてしまうなど、どの俳優には必ず多かれ少なかれ癖があります。また決まったパターンの演技をしたり、言い回しに頼ったりするのも俳優にとって習慣化した精神的な癖と言えるでしょう。
 ここでいう癖は、朝は早起きして読書をしたり、何の苦も無く常に深い呼吸ができたり、相手と自然と目を見て会話できるといっ

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役の力関係「ステータス」

役の力関係「ステータス」

 関東を中心に演技を教えている秋江智文です。専門はマイケルチェーホフ演技テクニックですが、どんな俳優でも必要だと思う、演技の基礎についてお伝えしていきます。

芝居におけるステータス

 王様が信頼していた家臣に裏切られる。馬鹿にしていた部下が出世して追い抜かれ逆の立場になる。子どもだと思っていた息子に助けられる。
 芝居の登場人物にはステータスが与えられ、これが芝居中に逆転したり、人に譲ったり、

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「今ここにいる」意識を高める~俳優のための演技の基本『集中の円』~

「今ここにいる」意識を高める~俳優のための演技の基本『集中の円』~

東京で演技講師、演出家、俳優をしている秋江智文と言います。マイケルチェーホフ演技テクニックを専門で教えています。

ここでは演技初心者の方に分かり易く、演技のイロハをお伝えできればと思っております。

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 演技をしていて自分のセリフや動きに必死になって周りの人やものを忘れてはいませんか?
 この集中の円(注意の輪)は、俳優が相手やものに集中して「今

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シーンの前(before scene) : 役の背景を想像させる

シーンの前(before scene) : 役の背景を想像させる

東京を中心に演技を教えている演技講師の秋江智文といいます。マイケルチェーホフヨーロッパやMICHAという国際的な団体で講師養成を受講し、演技スクールや事務所などで演技を教えております。

今回も演技の基礎について分かり易くお伝えします。またワークもあるので役者仲間とやってみてください。

シーンの前(before scene) まず好きな映画や芝居の開始直後の役を思い浮かべてください。

 登場し

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嘘っぽく演じたくない「イベント(出来事)」

嘘っぽく演じたくない「イベント(出来事)」

 東京でマイケルチェーホフ演技テクニックを専門で教えております秋江智文といいます。今回も演技の基本を分かり易くお伝えできればと思っております。

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 皆さんが人生を振り返ると様々な出来事があったと思います。受験、結婚、別れ、就職、喧嘩、勝利、敗北な

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俳優のための演技の基本「行動」

俳優のための演技の基本「行動」

 東京でマイケルチェーホフ演技テクニックを専門で教えている秋江智文です。今回も演技の基礎をできるだけ分かり易くお伝えします。

ドラマは「行動」すること 今回は「行動」についてお話します。前回書いた演技の基本である目的」が人を駆り立てる車のエンジンであれば、行動はどうやって動くか決めるハンドルと言えるかもしれません。
 そもそも芝居(Drama)の語源はギリシャ語で「行動」となります。英語で演技は

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演技の基本「役の目的を学ぼう」

演技の基本「役の目的を学ぼう」

 東京で演技の講師をしている秋江智文です。今回も演技の基本をお伝えします。

 演技の教科書の第一章といえば「目的」です。私は受講生に「目的はエンジンだ。目的がないと役はピクリとも動けない。」と言っています。役が行動するためのモチベーションを「目的」と呼んでいます。
 今回はその目的をできるだけ演技初心者や演技に興味がある方に分かり易く、少しでも演技に使えるようにお伝えできればと思っております。

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