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体の緊張は下半身が原因かも

 「肩や首に力が入ってしまう。」「他の共演者や演出家から緊張していると注意を受ける。」「のどを簡単につぶしてしまう。」、このような注意を受けている人は、もしかしたら下半身が使えていないのが理由かもしれません。

下半身と上半身の関係

 なぜ声の悩みや上半身の緊張が、下半身からくるのかピンと来ないかもしれません。体を「家」で例えれば下半身が土台であり、上半身はその上に立っている建造物です。そもそも下半身がしっかりとしていないと、上半身がどんなに強固であっても安定はしません
 多くの俳優の演技を見ていて感じることは、下半身(腰+脚・足元)が使えていないことです。動きの原動力や体の土台になる下半身をおろそかにすしてしまい、どうにかして上半身だけでバランスをとったり、動きを作ろうとしたりしてしまいます。結果として上半身が緊張したり、姿勢がくずれたりします。さらにこの緊張により、肩や首がしまり声にまで影響を与えてしまうのです。


大腰筋って本当に重要

 下半身を使えるようになるためには、足の裏の使い方、ひざの使い方、内転筋、腰の角度など多くのことを関係しますが、その中でも重要なことは「大腰筋」です。
 大腰筋と言うのは、体に奥にある深層筋(インナーマッスル)の一つので、上半身と下半身を結ぶ筋肉です。大腰筋の始まりは、肋骨の終わりあたりの背骨の両側(第12胸椎~第4腰椎の椎体外側面)から、終わりは内ももの付け根あたりにある骨(大腿骨小転子)までつながっています。まるで太いサスペンダーのような筋肉が上半身と下半身を結んでいます。

(下記のサイトをご参照ください)

https://www.anatomy.tokyo/systematic/%E7%B3%BB%E7%B5%B110-%E9%81%8B%E5%8B%95%E5%99%A8%E7%B3%BB/%E7%B3%BB%E7%B5%B110-5-%E4%B8%8B%E8%82%A2/iliopsoas/


大腰筋の役割=演技の基本

①太ももを上げる
 ・歩く、立つ、走るなどのために太ももを上げることを行ってくれます。

②上体を起こす
 ・横になった状態、お辞儀をしたときに上体を起こすとき。

③背骨を支える
 ・背骨をS字カーブにキープしてくれる。

④骨盤のバランスを整える
 他の腸腰筋・小腰筋と共に骨盤を前後左右にバランスを保ってくれ、また歩くための推進力となってくれます。

 演技の基本である歩く、立つ、座るにこの大腰筋がかかわっているのです。また下半身も安定するので、結果的に上半身もリラックスでき、結果呼吸も自然と深くなるのです。そして呼吸は声の源なので、声も深く楽に出せるようになります。

忘れられやすい大腰筋

 しかしどの深層筋(インナーマッスル)でもあるように、大腰筋はこんなに大きく重要な筋肉にかかわらずわすれられやすいです。その原因の一つは、表層筋の過度の発達や緊張により、深層筋の活動を阻害してしまっていることです。大腰筋のことでいえば周りにある腹直筋(シックスパックのこと)や、太ももの前の大腿四頭筋などが注目を浴び活躍しすぎて、その奥の大腰筋の役割を奪ってしまいます。
 

大腰筋が使うためには

 まず何より大腰筋はどんな形なのか、どこから始まり、どこで終わるのかを知るひつようがあります。これをアレクサンダーテクニークでは、これをボディマッピング(身体の骨格や筋肉などの構造、機能などを正確に再認識する方法)といいます。これが実に面白いもので、ちゃんと筋肉や役割が理解できるだけで、その筋肉が機能し途端に楽になるのです。


 先日私のクラスにアレクサンダーテクニークの伊藤 実里講師が来てくださり、大腰筋について教えてくださいました。ちゃんと構造を知るだけで体が途端に楽に使えるようになりました。裏返せば、普段どれだけ無理して習慣だけで体を使っているかということです。

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演技の基本はサイコフィジカル(心と体)

 最近では感情的な演技ばかりが注目されがちですが、演技の基本はサイコフィジカル(心と体)です。感情が動けば体が動き、体が動けば感情が動きます。どちらかだけに重きを置くと、感情だけの芝居では身体化されていない場合がありますし、身体ばかり重要視すると中身が伴わない場合もあります。心身がバランスがとれている必要があるのです。

 そして今の日本の役者は身体をないがしろにする傾向が強く、感情や交流に重きを置きすぎる傾向があります。ポイントはバランスです。時間はかかるとは思いますが、ぜひ取り組んでみてください。

もし身体のアプローチからの演技に興味がある方は、ぜひレッスン申し込みください。

■参考文献

・身体能力を高める「和の所作」ー筑摩書房 (2010/10/8)


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