小規模でもできる講師とクラスを結ぶ「ハイブリッドオンラインレッスン」の可能性
コロナによってのもたらした良い点の一つは、オンラインでの可能性が大きく広がったことだと思います。
継続的な演技のレッスンを届ける団体「マイケルチェーホフ東京」の代表として、2020年4月から緊急事態宣言が発令された当初から、様々なレッスンや講演をオンラインで行ってまいりました。こうしたオンラインでの企画は遠方からの参加ができ、自室でできる気軽さなどの利点がある一方、空間の制約、パートナーの欠如、交流の困難さなどの身体表現においてのマイナス面がありました。(しかしこの点は多くの講師は工夫をして、課題の克服をしてきたと思います!!)
こうしたマイナス面を克服するために2022年のGWに行ったのが、海外講師をオンラインで結び、受講生がスタジオで集まっての新たに行ったハイブリットオンラインレッスンです。受講生は大きな空間で他の仲間との集団のダイナミズムを感じつつ、海外講師から専門性の高い内容をライブで学ぶことができます。それも比較的安価で、システム的にも素人にもできます。
企画の背景:「やってやる!」に至るまで
2020年GWに東京・大阪で、イスラエルのテルアビブ大学の名誉教授デービッドジンダー氏を招聘しておこなう予定であった演劇ワークショップが緊急事態宣言で延期になりました。その後も2021年の同じ企画も立ち切れとなりました。
ジンダー本人から「来日のしたい」という要望や、俳優からも期待の声があったので、2021年10月ごろに一時的にコロナが終息した傾向にあったときに、渡航規制も一時的に緩和されたので、思い切ってGWの期間にレンタルスタジオを借りました。しかしご承知の通り、2022年1月よりオミクロン株の拡大によってまん延防止等重点措置の発令、外国人の入国規制が厳しくなり、ふたたびWS中止の決断に迫られました。
スタジオをキャンセルにして企画の完全な中止を考えましたが、講師のデービッドが高齢であり来年以降招聘できるという保証がないこと(めっちゃ失礼ですが、本人にもいっています。)、団体として質の高い講師や学びの場所を届ける責任、そして「コロナでまた中止にされてたまるか!」という反骨心と挑戦する気持ちで、新たな形でレッスンを届けることにしました。
ちょうど台湾のキムチェンという演技講師の同僚がオンラインで講師を結んでのスタジオでのオンラインレッスンを行っていたので、ノウハウも学べたことも後押しになりました。
レッスンに必要な機材
場所は東京都荒川区にある、100㎡程度のLIBRA SQUARE 三ノ輪スタジオに役者が13名集まり、オンラインで講師と結び行うオンラインレッスンです。
借りた機材
会社であればもっと安いところがありますが、個人であればパンダスタジオレンタルが私が調べた限りでは一番安かったです。
テレビモニター(32インチ)
実はスタジオに40インチのテレビモニターがあって使いませんでした!(スタジオの備品欄に記載がなかった…)。しかし32インチでも講師の顔も見られるので十分です。
机の上においても大丈夫ですがテレビの高さがほしい場合はテレビスタンドも借りられます。ちなみにプロジェクターの使用は室内が明るくなるので不可です。
ウェブカメラ(eMeet C960)
結構重要なのはウェブカメラをテレビモニターの上に固定すること。こうしないとモニターに映る講師と目が合ってコミュニケーションしているように感じません。
ちなみにこのウェブカメラは広角レンズであったので、部屋やグループの全体の雰囲気や状況が映せます。
マイクスピーカー eMeet M220 マイクスピーカー 連結機能 ワイヤレススピーカーフォン 8-16名程度の中大会議用
これは全く使えなかった!スタジオが100㎡あるのに対し、小会議室向けの機材ではスピーカーの音が小さく、拾える音も限られます。
上記の一式で5日間レンタル25000円くらいです。しかし、マイクスピーカーやテレビモニターを使わなかったのを考えるとかなり安く抑えれたはずでした。
持っていた機材
スピーカー(SRS-XB31)
これは小型ながら100㎡程度であれば、音割れもなく使えました。ワイヤレスマイク(VOVAQI Switch 用)
有線でなくワイヤレスマイクを使用理由は、通訳が動き回るときや、マイクを受講生に回すのにケーブルが邪魔になるためです。
やって分かったのは、ハンドマイクだと講師とコソコソした伝達ができるのも利点です。タイムマネジメントについて、受講生の疲労具合などはこっそり伝えていました。ジンバルスマホ(DJI OM 4 SE Smartphone Gimbal 3-Axis)
スマホを安定して撮影できる機材です。受講生の様子やパフォーマンスをアップで捉えることができます。ウェブカメラで全景、ジンバルでフォーカスみたいなイメージです。
身体表現においてライブで起こっていることを、知覚する必要があるので、ジンバル撮影の助っ人は毎回お願いしていました。
これは友人から借りましたが、1万円くらいで購入できるようでとても使い勝手が良いです。当初カメラを部屋の隅に複数設置したが、ウェブカメラの映像とジンバルからだけで充分であることが分かった。
iPhone8
ジンバルで使った自身の携帯
借りたけど使わなかった機材
・ wifiルーター
念のためにルーターを借りたが、スタジオのwifiだけで十分だったので結果として使わなかった。
ワークショップの様子
マイケルチェーホフテクニックのワークショップの様子です。役者の体を作るために心身を大きく使う訓練が中心でした。
ハイブリット方式の長所/短所
■長所
・国際的に活躍する講師や遠方の講師からライブで学べる。
・講師がスタジオにいての、通常のレッスンと何ら変わらないパフォーマンスができる。(受講生の感想)
・新たな技術が経験から学べる。
・集団でのダイナミズムを感じられる。
・人のパフォーマンスから学ぶことができる。
・講師からの的確なアドバイスや指摘を得られる。
・より安価な料金で受講ができる。
・資料の提示が画面上でできる。
・慣れればオーガナイズは簡単。
・比較的安く抑えられる。
■短所
・通訳とのタイミングがずれることがある。講師が通訳見えず忘れがち。
・かなりワークに精通しており、経験値ある講師でないと誤解が生じた際、軌道修正に時間がかかる。言葉での説明が多くなる。
・講師側のカメラも全身が見える必要がある。
・機材の操作に人員が必要である。
・講師が受講生の身体を触ったりできない。接触を伴う武道やダンスなどでは課題。
・講師とのスモールトークができない。
・音響の精度と質が低い。
・マスクを着けていたのもあり名前が覚えられない。
課題
・映像面では比較的大丈夫であるが、マイクの収音の質に関して改善の余地がある。
・より繊細な表現の際、どの程度映像から講師が情報を得られるのか疑問。
・講師と現地にいるスタッフとの連携。通常であれば講師がマネジメントすべき、受講生の状態、時間、レッスン空間など、現地のスタッフが責任を担う必要がある。
総括
もちろん講師が現場にいて直に学ぶのが一番です。しかし、長年国際的に活躍している講師と現場にいる受講生が感想で述べたように、こうした新しい学びの方法から想像を超えて成果が得られました。通常であれば海外で何十万もかけて学ぶ内容を、2万円程度で学べるのは、お金がすべてではないにしてもとても有益だったのではないでしょうか?
ヨーロッパに住んでいれば国境を越え比較的気軽に他国で学べますが、日本という島国では、いくら情報が簡単に受け取れるといえども、一流の講師から学べることは稀です。
もしこうした方法が発展すれば、こうした講師から定期的にリーズナブルな価格で学べるようになるのでしょう。
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