Dr.Creamcheese

天才マッドサイエンティスト(文系)による客観的観測と観察、論理的思考を用いた理知的な意…

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天才マッドサイエンティスト(文系)による客観的観測と観察、論理的思考を用いた理知的な意見そして仮説と考察。 https://m.youtube.com/channel/UCtthzq9OZKplP8T0UdiDeUw/videos

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記事一覧

ボフミル・フラバル『あまりにも騒がしい孤独』から考える「チェコ的」文化の特徴

はじめに この文章では、20世紀のチェコの文学作品であるボフミル・フラバルの『あまりにも騒がしい孤独』を取り上げ、この作品をチェコを中心とした中央ヨーロッパの文化…

Dr.Creamcheese
4か月前

【おみくじ】

☟☟ ☟☟ ☟☟ ☟☟ ☟☟☟☟☟☟ ☟☟☟ ☟ 大吉

Dr.Creamcheese
6か月前

誰がアイヒマンになりうるか

※この文章は以前にレポートとして大学に提出されました。 ハンナ・アーレントは『イエルサレムのアイヒマン』で凡庸な人間がその無思想性ゆえに組織的な悪に加担しうるこ…

Dr.Creamcheese
6か月前

フォー・デイス

一日目     放課後の教室 ゆみ てかさーきいてみゆちゃん。昨日あたし家帰ったら、ママめっちゃ泣いててさー みゆ えーやば ゆみ なんか弟もめっちゃ泣いてて …

Dr.Creamcheese
8か月前
1

ロシア・アヴァンギャルドについて

桑野隆『夢見る権利 ロシア・アヴァンギャルド再考』を読む ※この文章は以前大学のレポートとして提出したものです。 はじめに 1910年頃から1920年代末にかけて「ロシ…

Dr.Creamcheese
8か月前
2

むかし話

* 昔々、おじいさんとおばあさんが犬を食って暮らしていました。二人は昔、可愛い娘を野犬に食べられて以来犬を見つけては殺してその肉をくらい、その皮を剥いでは太鼓を…

Dr.Creamcheese
8か月前

いまロシアへいくということ

2023年にロシアへ行くと言ったとき少なからぬ人々に止められた。なにがあるかわからない、情勢がもう少し落ち着いてからにすべきだ、死んだらどうする。などウクライナ情勢…

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8か月前
3

Y◑U KN●W WHΛT I L◐VE😂

* * * 何度でも、何度でも、俺はお前を机に叩きつける。  お前の髪に手をかけて首が三メートル伸びるまで後ろにひっぱり、思いきり机に頭を叩きつける。やがて机に…

Dr.Creamcheese
8か月前
1

時限爆弾の作り方

* ソリッドなブルースカイを真っ赤に染めたいと思ったその日、俺は時限爆弾になることを決意した。 ところで諸君は、人間が時限爆弾になることなんてできないと思うかも…

Dr.Creamcheese
11か月前

ザンビアに行った日

* 永遠の万華鏡がある。光は上下左右に三次元的な曲線を描いて広がり、緑の中からピンクが、ピンクの中から黄色が生まれる。正面にあるのは、水の入ったグラス。それは遠…

Dr.Creamcheese
11か月前

アイスクリームユニバース

* 「佐々木」 「何?」 「宇宙ってデカくね?」 「・・・そうだね」 完璧な絶叫と完璧な沈黙は、同じ音がする。仮に音というものを鼓膜に伝播した物体の振動と定義す…

Dr.Creamcheese
11か月前
2

はじまりはじまり〜

よう、きょうだい。眠れないのか。それなら、俺がお話を聞かせてやる。これから話すことは全て事実であり真実だ。真実を言うと殺されるとむかし誰かが言っていたが、俺は構…

Dr.Creamcheese
11か月前

ボフミル・フラバル『あまりにも騒がしい孤独』から考える「チェコ的」文化の特徴

はじめに この文章では、20世紀のチェコの文学作品であるボフミル・フラバルの『あまりにも騒がしい孤独』を取り上げ、この作品をチェコを中心とした中央ヨーロッパの文化の流れの中に位置付けることで見えてくる「チェコ的」文化の特徴について考察した。 1. 作品の概要本書の主人公は、ナチズムからスターリニズムへと移り変わる時代のさなか35年という月日を地下室で故紙や本をプレス機にかけて潰して過ごしてきたハニチャという男である。ハニチャの元へ運ばれてくるのは必ずしも古くなって処分され

【おみくじ】

☟☟ ☟☟ ☟☟ ☟☟ ☟☟☟☟☟☟ ☟☟☟ ☟ 大吉

誰がアイヒマンになりうるか

※この文章は以前にレポートとして大学に提出されました。 ハンナ・アーレントは『イエルサレムのアイヒマン』で凡庸な人間がその無思想性ゆえに組織的な悪に加担しうることを見抜き、こうした悪意のない主体による悪を裁くことの難しさを浮き彫りにした。 国家や企業など巨大な組織が他の集団に人道的な被害をもたらすとき国家や企業による組織犯罪が行われたと言えるだろう。ナチス政権がユダヤ人に対して行ったことはまさに国家による組織犯罪だったと言える。しかし、組織犯罪を可能にするのは組織の構成員

フォー・デイス

一日目     放課後の教室 ゆみ てかさーきいてみゆちゃん。昨日あたし家帰ったら、ママめっちゃ泣いててさー みゆ えーやば ゆみ なんか弟もめっちゃ泣いてて みゆ えっどうしたの!? ゆみ あたしもめっちゃやばいなって思って、ママにどうしたのってきいてみたの。 みゆ うん。 ゆみ そしたらさ、パパが蟹になっちゃったの、って。 みゆ うわ、しんど ゆみ でしょ?だから昨日のよるご飯、蟹だったんだけどさ みゆ うん。 ゆみ ママと弟ずっと泣いてるし、空気

ロシア・アヴァンギャルドについて

桑野隆『夢見る権利 ロシア・アヴァンギャルド再考』を読む ※この文章は以前大学のレポートとして提出したものです。 はじめに 1910年頃から1920年代末にかけて「ロシア・アヴァンギャルド」と呼ばれる芸術運動あるいは文化現象が展開された。ロシア・アヴァンギャルドはそれまでの芸術と異なるいくつかの特徴を持っていた。その中に現在と現状への強い否定的、懐疑的な態度とそれゆえの新しい価値観や世界観への探究心、他所を志向する態度という精神性をあげることができる。こうした精神性はロ

むかし話

* 昔々、おじいさんとおばあさんが犬を食って暮らしていました。二人は昔、可愛い娘を野犬に食べられて以来犬を見つけては殺してその肉をくらい、その皮を剥いでは太鼓をつくって売っていました。太鼓はたいそう良い音がすると評判で祭りがあるたびによく売れました。今夜もどこかの祭りで二人がつくった太鼓の音は山を越えて町まで聞こえてきます。都会の青白い窓に響くのは百年前の犬たちと一人の娘の歌う歌なのです。 ちなみにおじいさんとおばあさんは九十九年前にスイカを喉に詰まらせて死にました。

いまロシアへいくということ

2023年にロシアへ行くと言ったとき少なからぬ人々に止められた。なにがあるかわからない、情勢がもう少し落ち着いてからにすべきだ、死んだらどうする。などウクライナ情勢に関するニュースによる「ロシア=戦争」というイメージからくる心配を彼らは抱いているようだった。あれだけニュースで報道されればかつてこの国にいたことのある自分でさえ内政が不安に感じられる。ましてメディアでしかロシアを知らない人にとってはなおさら不安だろう。そして制裁に関する報道はさもいまロシアに行くことが不可能である

Y◑U KN●W WHΛT I L◐VE😂

* * * 何度でも、何度でも、俺はお前を机に叩きつける。  お前の髪に手をかけて首が三メートル伸びるまで後ろにひっぱり、思いきり机に頭を叩きつける。やがて机にはお前の顔の形をした穴があく。張り付いた、ミッキーマウスみたいなお前の笑顔。机は重くて硬い声で鳴き地平線の彼方に走っていった。オレンジ色の半月に机は食われてしまうだろう。お前の笑顔も食われてしまうだろう。 どうだ、悲しいか。  再び髪に手をかけて新しい机に叩きつけえる。歯を剥き出して無防備に笑うお前の顔が黒い机

時限爆弾の作り方

* ソリッドなブルースカイを真っ赤に染めたいと思ったその日、俺は時限爆弾になることを決意した。 ところで諸君は、人間が時限爆弾になることなんてできないと思うかもしれない。あるいは、先ほどの俺の言葉はなんらかの比喩であると考えるかもしれない。否。文字通り時限爆弾になることは可能なのだ。 方法は実に簡単。タウンワークを見れば、様々な現場で時限爆弾を募集していることがわかる。そこで俺は、募集欄に書いてあった電話番号に電話し、新宿の雑居ビルで面接を行うことになった。 「幻想は

ザンビアに行った日

* 永遠の万華鏡がある。光は上下左右に三次元的な曲線を描いて広がり、緑の中からピンクが、ピンクの中から黄色が生まれる。正面にあるのは、水の入ったグラス。それは遠くにあると同時に近くにある。グラスのふちの円形にこの世に存在したあらゆる「美」そのものが顕在していることに気がつく。意識は、液状のガラスの表面を滑るように明晰でありながら、複数の場所に同時に存在していて、すでに時間を超越している。目の前に巨大化した自分の足が迫る。もはや大小の感覚すら存在しない。存在しないと同時に存在

アイスクリームユニバース

* 「佐々木」 「何?」 「宇宙ってデカくね?」 「・・・そうだね」 完璧な絶叫と完璧な沈黙は、同じ音がする。仮に音というものを鼓膜に伝播した物体の振動と定義するのであれば、両者はともに皮膜の無限の動であり、無限の静である。肉体の中心から発せられる実存の叫びは、皮膚直下で反響を繰り返し、決して体外の空気を振動させることはない。それゆえ、人体は、沈黙の絶叫を閉じ込めた鋼鉄の檻と化し、常にその崩壊の予感に震えているのである。崩壊は、救いである。わずかな隙間が生じれば、一

はじまりはじまり〜

よう、きょうだい。眠れないのか。それなら、俺がお話を聞かせてやる。これから話すことは全て事実であり真実だ。真実を言うと殺されるとむかし誰かが言っていたが、俺は構わない。それを言っていたやつは、結局、運命に殺されて死んでしまった。 残念だけど、さっき言ったことは半分嘘だ。これから話すことは、事実ではない。言葉は、初めに自分があらわしていたものの記号としての役割に飽きて、余計なことまで語るようになった。やがて、自分の正体を偽造したり、全く違う名前を名乗ったりする大胆なやつまで現