読書ト宝箱。

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読書ト宝箱。

noteでは自作小説を投稿したり、つらつらと何事かの所感を書いたりするつもりです。Twitterでは小説や漫画の紹介を主に行なっています。こっそり覗いていって頂けたら飛び上がって喜びます。

記事一覧

アマビエの血酒

 ——半月の光の下、脈打つ一筋の滝。その御前で。どうやら何者かが酒宴を催す。宴で盃を受けた者は、如何なヤマイも跳ね除ける、不死の身体を得られるらしい。  などと…

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5か月前
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キミはいつか、地球(ほし)の英雄。

 太陽が眠りにつく海の中へ彼女も身を沈めようとしていた。丸くちぢれた髪を潮風に流しながら、セーラー服の彼女は海に向かって立っている。そのしなやかな力強さは向日葵…

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そろそろ新作載せたいです。
がんばります。

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地獄に仏は夢逢瀬

 俺こと、阿比留二十八は『選ばれた』人間である。  何者とも知れぬ上位存在に、『選ばれた』人間である。  根拠はひとつ。俺の拾った仏像にある。 その仏像は、生き…

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脳の髄まで雨瀟瀟サイドストーリー:前日・後日談

パース1: 秦純恵  寒風颯颯、傾く陽燃ゆる黄昏時、侑依奈は煙のように消え失せた。それだけで。全くそれだけで。母として、絵のコーチとして、そしてマネージャーとして、…

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脳の髄まで雨瀟瀟

 平平凡凡と流れ去っていく時間は、或る日を境に掠め奪われたようである。少なくとも黒永晴哉にとっては、ほとんど悪夢に等しかった。虹色の雨が街に降る。ヒトが「人」を…

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メンと向かい合い、駄弁りつつ。

 私は産まれて此の方、過ちらしい過ちをあまり犯してこなかった。と言うより、「生」という決して穏やかでない道の上に反り立つ壁どもを、のうらりくらりとすり抜けてきた…

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#ジェネ・ジェネ/ラリ・ラリ/ラリリズム

 パーポー、ペーポー。  ドロドロ、ビチュビチュ。  ハァハァ、アハハァハァ。  シャパシャカ、パシャカシャ。  キヤキヤ、アワアワ。  ヒヒィ、ヒィ、ヒヒィ。…

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聞こえませんし、届きません。

 其処は、白が全てだ。  風景を殺す、と書いて「殺風景」と読むならば、事実、この部屋こそがその大仰な言葉にふさわしいのではないか。  人工的(?)かつ単調的、整然…

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白き虹が日を貫けば

何か、得体の知れぬ。 それは単なる印象ではなくて、一つの確信であった。 俺は、自身の『それ』に関する才を疑ったことがない。何の才かと問われれば、それは…

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noteでは初めましての投稿です!よろしくお願いします!

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アマビエの血酒

アマビエの血酒

 ——半月の光の下、脈打つ一筋の滝。その御前で。どうやら何者かが酒宴を催す。宴で盃を受けた者は、如何なヤマイも跳ね除ける、不死の身体を得られるらしい。

 などという噂が、街をまことしやかに駆け廻った。滝は街の象徴であって、かつて数多の文人墨客に愛された名瀑であった。故に街の中での拡がりは、SNSの力もあって、凄まじい速度に見えた。一方で街を一歩出ると、途端にその滝の噂は聞こえてこないのである。実

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キミはいつか、地球(ほし)の英雄。

キミはいつか、地球(ほし)の英雄。

 太陽が眠りにつく海の中へ彼女も身を沈めようとしていた。丸くちぢれた髪を潮風に流しながら、セーラー服の彼女は海に向かって立っている。そのしなやかな力強さは向日葵のようでさえあった。太陽は己の身体を海に溶かして、波打つ水面を橙に染めている。寄せては返す白波に彼女は歩を進めた。食い意地のはった波が泡立ちながら、浜についた彼女の足跡をも飲み込んでいく。逆光。濃い影に塗りたくられた彼女の背中は、まるで人の

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そろそろ新作載せたいです。
がんばります。

地獄に仏は夢逢瀬

地獄に仏は夢逢瀬

 俺こと、阿比留二十八は『選ばれた』人間である。

 何者とも知れぬ上位存在に、『選ばれた』人間である。

 根拠はひとつ。俺の拾った仏像にある。

その仏像は、生きている。そして。

 そして。…………

KI…

 俺は小学5年の頃から、上位存在たる何者かに『選ばれた』という自覚を確然と抱いていた。かの時分俺の周りには、同志を騙って俺に接近し、あたかも『選ばれた』かのように弁舌する同級もいたも

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脳の髄まで雨瀟瀟サイドストーリー:前日・後日談

脳の髄まで雨瀟瀟サイドストーリー:前日・後日談

パース1: 秦純恵

 寒風颯颯、傾く陽燃ゆる黄昏時、侑依奈は煙のように消え失せた。それだけで。全くそれだけで。母として、絵のコーチとして、そしてマネージャーとして、侑依奈の代わりに矢面に立ち続けた純恵には。これ以上ない裏切りであった。

 純恵には侑依奈が居なくなる理由に心当たりの1つもなかった。侑依奈の才能の芽を潰さぬよう、手塩にかけて護ってきたという自負があったのだ。手間も暇も金も惜しまず

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脳の髄まで雨瀟瀟

脳の髄まで雨瀟瀟

 平平凡凡と流れ去っていく時間は、或る日を境に掠め奪われたようである。少なくとも黒永晴哉にとっては、ほとんど悪夢に等しかった。虹色の雨が街に降る。ヒトが「人」を失う理由としては、これでも充分過ぎるほどだった。

 晴哉は微塵たりと覚えていない。その雨の降り始めた日のことを。ただ、晴哉が異状を認識し始めた頃には既に、虹色の雨が街を、大地を、海を覆い、元の世界の色と混濁してしまって、悪趣味な極彩色が目

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メンと向かい合い、駄弁りつつ。

メンと向かい合い、駄弁りつつ。

 私は産まれて此の方、過ちらしい過ちをあまり犯してこなかった。と言うより、「生」という決して穏やかでない道の上に反り立つ壁どもを、のうらりくらりとすり抜けてきたのだと思う。真正面から壁に激突して流血し、泣き荒ぶ同級生を目の端で嘲笑いながら、人並みに巧ぁく生きて来たから。自分で言うのもなんだけど、苦手なことも特段ないし、どんなことでも凡人以上にはこなせた。私はそのこと自体に微かな快感を覚えていたのか

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#ジェネ・ジェネ/ラリ・ラリ/ラリリズム

#ジェネ・ジェネ/ラリ・ラリ/ラリリズム

 パーポー、ペーポー。

 ドロドロ、ビチュビチュ。

 ハァハァ、アハハァハァ。

 シャパシャカ、パシャカシャ。

 キヤキヤ、アワアワ。

 ヒヒィ、ヒィ、ヒヒィ。

 イヒヒ、イヒ、イヒヒ。

ガラガッシャン!ッ。

バツン!ッ。

 ヒュゥゥゥウウウウウゥウゥウ………………

 瞬間。電撃が走った。走り始めた。

 と、感じるほどの激痛である。

 何をされたわけでもない。何をしたわけで

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聞こえませんし、届きません。

聞こえませんし、届きません。

 其処は、白が全てだ。

 風景を殺す、と書いて「殺風景」と読むならば、事実、この部屋こそがその大仰な言葉にふさわしいのではないか。

 人工的(?)かつ単調的、整然とした無味乾燥。

 壁なのか床なのか。乃至は天井なのか。そもそもこの空間は本当に「部屋」だと定義できるのか。無。宇宙が産まれる前に存在(??)した空間(???)、浮かれた白がゆたゆたと、【貴方】の目を貫いていた。

 ただし。

 

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白き虹が日を貫けば

白き虹が日を貫けば

何か、得体の知れぬ。

それは単なる印象ではなくて、一つの確信であった。

俺は、自身の『それ』に関する才を疑ったことがない。何の才かと問われれば、それはもう全くありきたりで、漠然とした才である。

・土地や建造物を『診る』

地相を診る、と言い換えれば多少は分かりやすいだろうか。不便な才である。アルバイトには勿論、将来仕事に活かせるわけでもない。更には友人にすら理解されな

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