読書ト宝箱。

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noteでは自作小説を投稿したり、つらつらと何事かの所感を書いたりするつもりです。Twitterでは小説や漫画の紹介を主に行なっています。こっそり覗いていって頂けたら飛び上がって喜びます。

最近の記事

アマビエの血酒

 ——半月の光の下、脈打つ一筋の滝。その御前で。どうやら何者かが酒宴を催す。宴で盃を受けた者は、如何なヤマイも跳ね除ける、不死の身体を得られるらしい。  などという噂が、街をまことしやかに駆け廻った。滝は街の象徴であって、かつて数多の文人墨客に愛された名瀑であった。故に街の中での拡がりは、SNSの力もあって、凄まじい速度に見えた。一方で街を一歩出ると、途端にその滝の噂は聞こえてこないのである。実際ゲンダイの若者にとって、景勝地などというものは、あまり馴染み深いものでない。し

    • キミはいつか、地球(ほし)の英雄。

       太陽が眠りにつく海の中へ彼女も身を沈めようとしていた。丸くちぢれた髪を潮風に流しながら、セーラー服の彼女は海に向かって立っている。そのしなやかな力強さは向日葵のようでさえあった。太陽は己の身体を海に溶かして、波打つ水面を橙に染めている。寄せては返す白波に彼女は歩を進めた。食い意地のはった波が泡立ちながら、浜についた彼女の足跡をも飲み込んでいく。逆光。濃い影に塗りたくられた彼女の背中は、まるで人の形をした深い穴かのように見えた。くるぶし、膝、腹。徐々に彼女は海に浸かっていき。

      • そろそろ新作載せたいです。 がんばります。

        • 地獄に仏は夢逢瀬

           俺こと、阿比留二十八は『選ばれた』人間である。  何者とも知れぬ上位存在に、『選ばれた』人間である。  根拠はひとつ。俺の拾った仏像にある。 その仏像は、生きている。そして。  そして。………… KI…  俺は小学5年の頃から、上位存在たる何者かに『選ばれた』という自覚を確然と抱いていた。かの時分俺の周りには、同志を騙って俺に接近し、あたかも『選ばれた』かのように弁舌する同級もいたものだ。歳を重ねる毎にそういった贋物どもは淘汰され、或いは俺が直々に跳ね除けること

        アマビエの血酒

          脳の髄まで雨瀟瀟サイドストーリー:前日・後日談

          パース1: 秦純恵  寒風颯颯、傾く陽燃ゆる黄昏時、侑依奈は煙のように消え失せた。それだけで。全くそれだけで。母として、絵のコーチとして、そしてマネージャーとして、侑依奈の代わりに矢面に立ち続けた純恵には。これ以上ない裏切りであった。  純恵には侑依奈が居なくなる理由に心当たりの1つもなかった。侑依奈の才能の芽を潰さぬよう、手塩にかけて護ってきたという自負があったのだ。手間も暇も金も惜しまず、侑依奈のために使った。侑依奈が欲しがる物は全て買い与えた。侑依奈の才能を世に出

          脳の髄まで雨瀟瀟サイドストーリー:前日・後日談

          脳の髄まで雨瀟瀟

           平平凡凡と流れ去っていく時間は、或る日を境に掠め奪われたようである。少なくとも黒永晴哉にとっては、ほとんど悪夢に等しかった。虹色の雨が街に降る。ヒトが「人」を失う理由としては、これでも充分過ぎるほどだった。  晴哉は微塵たりと覚えていない。その雨の降り始めた日のことを。ただ、晴哉が異状を認識し始めた頃には既に、虹色の雨が街を、大地を、海を覆い、元の世界の色と混濁してしまって、悪趣味な極彩色が目につくようになっていた。  馬車馬の如く働いていたサラリーマン、……或いは、分不

          脳の髄まで雨瀟瀟

          メンと向かい合い、駄弁りつつ。

           私は産まれて此の方、過ちらしい過ちをあまり犯してこなかった。と言うより、「生」という決して穏やかでない道の上に反り立つ壁どもを、のうらりくらりとすり抜けてきたのだと思う。真正面から壁に激突して流血し、泣き荒ぶ同級生を目の端で嘲笑いながら、人並みに巧ぁく生きて来たから。自分で言うのもなんだけど、苦手なことも特段ないし、どんなことでも凡人以上にはこなせた。私はそのこと自体に微かな快感を覚えていたのかもしれないし、そんなことに快感を感じている私自身をちょっぴり嫌悪しているのかもし

          メンと向かい合い、駄弁りつつ。

          #ジェネ・ジェネ/ラリ・ラリ/ラリリズム

           パーポー、ペーポー。  ドロドロ、ビチュビチュ。  ハァハァ、アハハァハァ。  シャパシャカ、パシャカシャ。  キヤキヤ、アワアワ。  ヒヒィ、ヒィ、ヒヒィ。  イヒヒ、イヒ、イヒヒ。 ガラガッシャン!ッ。 バツン!ッ。  ヒュゥゥゥウウウウウゥウゥウ………………  瞬間。電撃が走った。走り始めた。  と、感じるほどの激痛である。  何をされたわけでもない。何をしたわけでもない。内から溢れ出すような痛み。叫ぼうにも声も出ず、涙も出ぬ。  Boku

          #ジェネ・ジェネ/ラリ・ラリ/ラリリズム

          聞こえませんし、届きません。

           其処は、白が全てだ。  風景を殺す、と書いて「殺風景」と読むならば、事実、この部屋こそがその大仰な言葉にふさわしいのではないか。  人工的(?)かつ単調的、整然とした無味乾燥。  壁なのか床なのか。乃至は天井なのか。そもそもこの空間は本当に「部屋」だと定義できるのか。無。宇宙が産まれる前に存在(??)した空間(???)、浮かれた白がゆたゆたと、【貴方】の目を貫いていた。  ただし。  ただし、【貴方】はその空間に確かな、「存在」を認めるだろう。これにより、空間(?

          聞こえませんし、届きません。

          白き虹が日を貫けば

          何か、得体の知れぬ。 それは単なる印象ではなくて、一つの確信であった。 俺は、自身の『それ』に関する才を疑ったことがない。何の才かと問われれば、それはもう全くありきたりで、漠然とした才である。 ・土地や建造物を『診る』 地相を診る、と言い換えれば多少は分かりやすいだろうか。不便な才である。アルバイトには勿論、将来仕事に活かせるわけでもない。更には友人にすら理解されない。そしてこの才を持つ者は、自覚のない者も含めると結構な数がいて、希少性も何もな

          白き虹が日を貫けば

          noteでは初めましての投稿です!よろしくお願いします!

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