プロジェクト・メコンとかえるとび

「リープフロッグ現象」とは

リープフロッグ現象(leapfrogging)という「カエルとび」現象をご存知でしょうか。これは、

通常、技術変化に伴い社会が常に「段階的」に変化していくのに対し、既存の社会インフラが整備されていない発展途上国において最新技術が導入されることで、最新のサービスが導入され、一段階前の発展を飛び越し、飛躍的発展を遂げることです。

アフリカにおいて、銀行システムが未発達だったが、M-Pesaといった携帯電話を利用した最新の送金サービスが、先進国以上にスッと普及されたのが一例です。整備されたインフラがないからこそ、新しいシステムが逆に導入しやすいという背景があります。日本においてFAXという一時代前のレガシーシステムがあるが故に逆に最新のサービスの普及が遅れているのも似たような理論に基づきそうです。

フィンテックとリープフロッグ現象

最近中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)が盛り上がっていますが、実は一カ国個人的にかなり注目している国があります。「カンボジアのバコンプロジェクト(Bakong Project)」です。

「バコンプロジェクト」とは?

①リテール決済(個人間、企業間の小額送金、支払い)及び、②銀行間における高額送金、決済(RTGS)においてブロックチェーン、デジタル通貨を利用することを目指したプロジェクトです。具体的には、携帯番号を所有する人に対し、携帯番号を元にデジタルウォレットを作り、QRコードにおけるモバイル決済を可能にします。また、銀行間における取引に関しても、同様にブロックチェーンプラットフォームにより、よりスムーズな決済を可能にします。

デジタル通貨なのでビットコイン等の仮想通貨とは異なり、法的通貨に連動しているタイプですね。このプロジェクトの場合、USドルとカンボジア通貨であるリエルの両方に対応しているようです。2020年の10月より運用が開始されたようです。

興味深いのが、SORAMITSU (ソラミツ)という日系会社がカンボジア国立銀行と連携しブロックチェーン"Hyperledger Iroha"の共同開発を行なっているということです。

モバイルペイメントに関しては、最近日本でドコモ口座の問題がありましたが、バコンにおいては、多要素認証の本人確認システムで注意深くKYC(Know your client)プロセスを行なっているようです。

期待される効果

金融包括 (Financial Inclusion)

バコンシステムにおける送金には、手数料がかかりません。さらに、銀行口座を所有していない場合でも、オンラインで「バコン」口座を開設できることから、これまで、既存の銀行口座を解説することができなかった人々も、銀行システムのプラットフォームに参加でき、「金融包括」が期待できます。

脱ドル

自国通貨であるリエルに比べ、USドルがより信頼され普及していたのですが、今後「バコン」デジタル通貨の普及に伴い、リエルがより一層国民の信頼感を獲得し、国立カンボジア銀行により将来の金融政策がよりスムーズに行われることも目的の一つとなっています。


今後の発展への期待

現在基本的には、国内における送金決済を基本サービスとしているのですが、今後より一層、海外へ又は、海外からの送金等のクロスボーダーにも対応した仕組みが期待されます。

実際、世界銀行送金平均手数料データ(World Bank, Remittance Prices Worldwide)によると、2018年のにおいてカンボジアへの送金にかかる平均手数料は5.1%とかなり高くなっています。そんな中、「バコン」は、出稼ぎ労働者の多い隣国マレーシアやタイの大手銀行とのクロスボーダー連携も進めているようです。

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世界銀行送金平均手数料データ(World Bank, Remittance Prices Worldwide)

ASEAN地域におけるブロックチェーンプロジェクト連携

さらに、シンガポール金融庁によるウビンプロジェクトやタイのDLT Scripless Bondプロジェクトなど他のASEAN地域においても、ブロックチェーンプロジェクトが進展しており、それらの連携が期待されます。

デジタル通貨と新しい「金融政策」のあり方

このような、ブロックチェーンベースの国営システムが導入されるにあたり、今後デジタル通貨に対応した「金融政策」のあり方を議論していく必要もあると思います。

まとめ

仮想通貨やモバイル決済に関する不祥事から、「フィンテック」「ブロックチェーン」に対し、あまり良いイメージを持たれない場合もあるのですが、「バコンプロジェクト」をはじめ、経済に対しポジティブな影響を及ぼすプロジェクトが多々立ち上がっているのも事実です。よく言われるよう根本的な問題は「技術革新や最新技術自体ではなく、それをいかに私たちの生活に融合させるか、どのようなシステム、ルール、ガバナンスに基づき利用するか」だと個人的には考えています。

“What matters is not technology itself, but the social and economic system in which it is embedded in”

最近、ソラミツさんだけでなく、五常・アンド・カンパニー株式会社ドレミングと金融包括の分野はかなり日系の企業の進展よく見られる気がします。より一層の進展を期待しています。


余談:バコン寺院

ちなみに由来になっている「バコン寺院」はロリュオス遺跡群の一つでクメール朝時代のものみたいですね。とても興味深い。是非コロナが終わり給料いただけるようになったら弾丸で行こう...わくわくしてきました☺️

参照記事

Leapfrogging

Bakong Project



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