「富士通、5,000人配置転換」から
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三点に注目したい。
1.間接部門の非効率性
2.余剰人財の活用
3.経営戦略と人事戦略
関連代表記事 富士通 経営方針進捗レビュー説明会(2018年10月26日)
http://pr.fujitsu.com/jp/ir/library/presentation/
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A 「総務や経理などの間接部門」が対象であり、これらの人財を営業やSEなどに転換していくという方向性。日本企業は典型的に非効率な間接部門を抱えているため、嵩張るコストセンターを小さくすることは必須である。特に、クラウド系サービスやAIを導入することでこれは現実的に実現可能である。一方、日本企業のいい面でもある「首を切らない」という感情面をとらえれば、非効率な間接部門を小さくし富創出に近い側を厚くするのは必然的と思われる。
B 「首をきらない」というのは、新しい事業を生み出せる状況下であれば問題ない判断だが、新事業創出が困難になっている企業においては、経営的判断として疑問符をつけたくなる。
A 日本の場合、雇用に対する感情論が強いがそれだけではなく、労働契約法16条*1の壁が大きい。客観的合理的理由・社会通念上の相当性という高い壁があるため、間接部門の嵩張りであったり、AI・クラウド・ロボという未来を想定した場合の非効率性を考えても、解雇(首を切る)へと踏み切ることが非常に困難になっている。だからと言って放置もできない。であれば、間接部門を効率化し、余った人財を価値創出側に振り向けるという策が必用になる。
B 間接部門の効率化を考えるのであれば、定常・非定常の仕分けが必用になってくる。ホワイトカラーの作業の中から、定常的要素を切り出して整理し、それをアウトソース、AI導入、クラウドサービス導入でこなしていく。残る非定常作業は属人性が高い部分であり人財の個性が強くのる部分だが、ここはグループウェアなどを巧みに利用し、伝達・共有効率を向上させたり、発想を刺激する仕組みや、マネジメント体系を整えていくことになる。
A 本社スタッフは徹底的に圧縮できる。クラウドサービスの利用とクラウドソーシングを巧みに合わせていく。タスク管理、経費・旅費精算、経理入力、シフト調整、決済…全て、外に切り出せる事項である。当然企業によりけりだが、本社スタッフであれば数分の1~50分の1程度にまでは圧縮できる可能性は高いだろう。
B AIであったりクラウド系サービスを利用することで、間接部門を効率化する。余った人財を価値創出に振りむけるわけだが、富士通の経営方針進捗レビューにもあるように、研修は必須となる。リードタイムの設定と研修の中身で、人財の有効な転活が出来るか否かが変わってくる。再三の研修や指導でも能力が不足する社員は、その企業をさることになる。
A 注意しないといけないのは、たらい回し。ある部門をコンパクト・効率化し余った人財を育成の上、他の部門に配置転換する。移った先でも当然効率化は進められるわけであり、また人財があまる。これが玉突き事故のように、次から次で部門間で生じることになる。これは全く意味がない。今回の富士通であれば、「営業、SE 、業務コンサル、SAPコンサル人材等の育成」とあるが、これらの部門もテクノロジーで武装して効率化されるべき部門である。
B 最終系をどう想定するのか。経営戦略と人事戦略はセットであるが、将来のPPMを創り、支え、動かすために必要な人財ポートフォリオと規模感はどうなっているのか。現時点で、5,000人の配置転換に動くのはよいが、最終像を考えた場合に、更にどのような打ち手が必用になってくるのか。経営者としてこのような人事戦略と経営戦略を合わせて考えるのは当然であるが、企業で働くプレイヤーの身としても、客観的にキャリアプランについて考察し自ら描く努力が必用となる。
*1 労働契約法16条 e-Gov
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=419AC0000000128#51