何者かになりたかったから、コンカフェ嬢になってみた
転職したにも関わらず、突然、仕事に行けなくなった。無職になった。
摂食障害の過食嘔吐による負債まみれのまま、惨めな日々、小さなワンルームの中でひとり。毎日死にたかった。
だがしかしそう簡単に死ぬ訳にもいかず、親に懺悔の手紙を書いて一時帰省。少し救われてまた東京へ。
とにもかくにも、生きるにはお金がいる。アルバイトをしなければ、と。
幸い都会には選り好みしなければ仕事は幾らでもあった。でもどうせならやりたいことやなにか学べそうなことがしたかった。
かれこれ数年間、過食嘔吐と付き合い続けているが、どうにか-20kgほど達成したことで、ずっとやってみたかったコンカフェのアルバイトに応募してみた。容姿に自信はないが、応募するのは自由だしタダだから、まあいっか。なんて気持ちで。
そしたらなんと、採用していただけた。びっくり。スナックで働いていたことはあるけれど、それとはまた違った世界、少しのドキドキと不安と、わたしのコンカフェ嬢の道のりがスタートした。
これまでの人生、続くアルバイト先はだいたい恵まれていると自負している。この間、コンカフェで働き始めてから一ヶ月が経った。
それもこれも、不慣れな自分を優しく導いてくれる周りの先輩や内勤さん、お客さまのおかげだと日々痛感している。
正直、コンカフェ=SNSでよくみるザ・美女、というイメージがあり、女の世界特有の怖さがあるのでは、と少し恐れていた部分があった。
でも今のところ、そんな場面には遭遇していない。みんなが見せていないだけかもしれないし、裏ではなにを言っているかなんて分からないけれど、それは仕事外の人間関係だってそんなものだし、目に見えるいじめのようなものがないのは比較的平和だと感じている。
あと、仕事でしか関わることがないのが一番楽だ。前の会社は先輩後輩よくご飯に行ったりプライベートでも遊びに行ったり、友人関係のような関わり方がよくされていた。もちろん自分はそこには混ざらなかったけれど、見ているだけでもなにかストレスを感じてしまっていたため、今がとても楽でありがたい。
でもみな、仕事はちゃんとしていて、それがまたいい。なあなあにやるのではなく、ちゃんとプライドがある。こういう職業は軽く見られがちというか、世間からは嫌煙されるというか、実際そんなところもあるけれど、みんなコンカフェ嬢として仕事を全うしていて見てて気持ちも良く、自分もがんばろうという気持ちにさせてくれる。
そんなこんなで、コンカフェ嬢になったわけだが、そう簡単なものでもない。無名はお客さまを呼べないし、ビラ配りもコツがいるし、会話やコミュニケーション、盛り上げ方、意外と難しいことが多い。
お店が良くしてくれる分、売上に繋がるなにかをしたいし、御新規さまを呼びたい。その一心で、お客さまを呼べない自分は容姿がゴミだからなのか、やはりそこか、と自己嫌悪でまた過食嘔吐が爆発してしまったりもする。本末転倒だが。
でも、この世に可愛い綺麗な女の子は、幾らでもいる。確かにそういった子の方がうれしいし、お話したり乾杯したり、楽しいかもしれない。でも結局はその人間の容姿以外になにかの魅力がなければ面白くないと思うのだ。
ずっと、何者かになりたかった。だれにも選ばれなかった女ランキングナンバーワンだったから、好きな人間には選んでもらえなくても、だれかの推しとして選ばれたら、だれかのがんばる理由になれたら、息抜きや楽しさを提供できる人間になれたら。
生きる意味は相変わらず分からないし、これからを考えると頭が痛くなるし、不安は大きくなるばかりだけれど、いまはその気持ちだけで日々精進できるよう己なりに努めているつもりだ。
一ヶ月少し、まだまだ初心者だけれど、わたしのことを推しとして選んでくれるようなだれかに出会うべく、わたしはきょうもメイド服に袖を通す。
わたしを選んでくれる素敵なやさしいお客さまと、笑ってたのしい時間を過ごせる日が来ますように。
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