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脳波計測が導き出す「ワーケーション」の最適化

新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、この1年で私たちの生活は大きく変わりました。電通サイエンスジャムでも昨年からリモートワーク主体の業務体制へ移行し、日々新しい働き方にトライしていますが、同じように模索している方々も多いのではないでしょうか。

きっかけこそネガティブではあるものの、変革せざるを得ない事態に陥ったことで働き方改革が急速に進み、今後より個人の自由が尊重される時代が到来するのではないか、という新たな希望も感じます。

今回はそんな「New Normal」な働き方の中で注目を集めている「ワーケーション」にスポットを当ててお話をしたいと思います。

​<ワーケーションとは>
「ワーク(Work)」と「バケーション(Vacation)」を組み合わせた造語で、観光地やリゾート地でテレワークを活用し、働きながら休暇をとる過ごし方。在宅勤務やレンタルオフィスでのテレワークとは区別され、働き方改革と新型コロナウイルス感染症の流行に伴う「新しい日常」の奨励の一環として位置づけられる (Wikipediaより引用)

休暇+仕事は本当に成立するのか

東京都では昨年から「いのちを守るSTAY HOME週間」の実施や「テレワーク助成金」の支給等を通じて、テレワークへの移行を推進してきました。また、今年に入ってからも「テレワーク緊急強化月間」を設けて、出勤者の7割削減に向けてテレワーク実施を各事業者に要請するなど、積極的に呼びかけを続けています。

テレワーク移行の意識が高まる中、今回の実験で私たちが訪れたのは福井県の南西部に位置する高浜町。高浜町は「ZEN」を生んだ明治・大正期の臨済宗の僧、釈宗演(日本人として初めて欧米に「禅(ZEN)」を伝えた禅師)の生誕の地であり、アジアではじめて国際環境認証ブルーフラッグを取得した若狭和田ビーチをはじめとする豊かな自然と文化を有する町です。

ワーケーションを目的として訪れるからには、ただ休暇を楽しむだけでなく仕事に集中できる環境であることが重要です。高浜町がリゾート地としてだけでなく、仕事を行う環境としても適しているのか、脳波計測による感性把握技術を活用して計測・分析を試みました。

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脳波計測で「ワーケーション」を測る

今回の実験では、同一被験者に在宅実験(被験者の自宅で実施)と、ワーケーション実験(福井県高浜町で実施)の2パターンの調査に協力してもらい、感情変化の比較を行いました。

それぞれの環境下で同一時間に、脳波計を装着し、こちらから予め指示した業務タスクをこなしてもらい、各被験者の感情変化を計測します。また、高浜町滞在時には、業務タスクの合間にアクティビティも体験してもらい、アクティビティを通じたリフレッシュ効果の計測も行うことでワーケーションの効果を検証しました。

今回使用したのは「感性アナライザ」というアプリケーションで、弊社独自の脳波計を用い、慶應義塾大学の満倉靖恵教授監修のアルゴリズムを応用して、人の感情を脳波から推定し数値化することができます。

■実験日程
在宅実験:2020年9月29日
ワーケーション実験:2020年10月5~7日

■実験場所
在宅実験:被験者の自宅
ワーケーション実験:福井県大飯郡高浜町

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「ワーケーション」に期待が持てる結果に

一般的に「バケーション=リフレッシュ」というイメージが大きいですが、果たして仕事という要素が加わった「ワーケーション」でもイメージどおりの結果が成り立つのでしょうか。

前述の仮説をもとに、業務タスク時の感情変化を計測する為、まずはじめにストレス度・興味度・高揚度の3つの指標を用いて検証を実施しました。

業務中はなるべくストレスにさらされない環境が理想的とされています。ストレス度指標によって業務中の疲労の蓄積や負荷を評価し、併せて興味度・高揚度を計測することで業務に取り組むモチベーションの評価を行います。

図1

業務タスク時におけるストレス度の変化について、在宅業務でのタスク中のストレス度を100%として比較検証した結果、上記グラフのとおりワーケーション中の被験者のストレス度は2日目で1.2%上昇したものの、3日目では0.3%減少しました。(1日目は移動の為、計測を行っていません)

3日目でストレス値が減少していることを考慮すると、2日目は慣れない環境での作業によってストレス値上昇に影響していることも考えられます。今回は2泊3日での検証でしたが、ワーケーションを行う場合、仮説として3日以上の滞在でストレスを低減させる効果があることが見込めます。

グラフ2

次に興味度・高揚度についてはいずれも2日目、3日目を通して高浜町滞在時には上昇の傾向が見られました。環境が変わることによって、いつもより新鮮な気持ちで業務に取り組むことができ、結果的に意欲も高まる傾向があることが伺えます。

ただし、心理的な新鮮さを維持するためには常に新しい刺激が必要なため、滞在が長期間に及ぶと数値が低下してくる可能性が大きいと考えられます。そのため、ワーケーションプランを提案する際には、長期滞在でも飽きない工夫が求められると言えるでしょう。

グラフ3

続いて、アクティビティを行う前後のストレス度の変化についても検証を行いました。

高浜町では「禅」体験、墨流し体験、ビーチでの瞑想など、豊かな自然と地域の特色を活かした様々なアクティビティを体験することができますが、多様なワーケーションプランの中から、被験者自身で自分に合ったものを選択してもらいました。

上記のグラフでは例として星空観察時のある被験者のストレス度の変化を示していますが、アクティビティ後に12.3%もストレス度が低減する結果となり、今回行った検証の中では最も大きなリフレッシュ効果が見られました。

まとめ

今回はプレ実験として2泊3日という短期間で計測を行った為、今後の実験をとおしてさらに詳しく検証すべき課題も残りましたが、ワーケーションの効果に期待が寄せられる結果も垣間見えました。今回得られた結果と傾向をもとに再度ワーケーションの測定に最適なプランを設定し、実験を継続していく予定です。

大手旅行代理店でもワーケーションプランを展開するなど、徐々にこの新しい取り組みは拡がりをみせています。Covid19の影響による移動の制限が解除されれば、さらに自由な働き方への動きが加速するでしょう。

電通サイエンスジャムでは今回ご紹介したような出張実験や、遠隔での実験にも取り組んでいます。「New Normal」の本格化に向けて、弊社でもさらに様々な角度から検証を行っていきたいと思います。

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WAAcation(高浜版ワーケーション)

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