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蔵元日記

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旭酒造会長桜井博志の日記です。
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#日本酒

蔵元日記vol.531【WEOY世界大会への参加記】

蔵元日記vol.531【WEOY世界大会への参加記】

安倍さんの暗殺事件で日本だけでなく世界がショックを受けたこの数週間でしたが、無情にも時は流れ様々なことが起こります。今回は、本来事件の前に書かなければいけなかった、モナコで開催されましたWEOY(世界アントレプレナー年次大会)の参加記について書きます。

それは特別な体験でした。このアントレプレナーとは起業家と訳されることが多いと思いますが、ただ単純に起業したからこういわれるのではなくこの大会にお

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蔵元日記vol.528【デジタル技術によってディテールが見えるように】

蔵元日記vol.528【デジタル技術によってディテールが見えるように】

筑波大学の助教授でありメディアアーティストとしても活躍中の落合陽一さんの最新の著書「落合陽一34歳、「老い」と向き合う」(中央法規出版)の中で「デジタル技術によって自然はどう変わるか」という落合さんの問いに対して、対談相手の「バカの壁」などの著書で知られる東大名誉教授の養老孟司先生が、「今までと大きく変わったのは、ディテール(詳細)が見えるようになった点ですよね。医学におけるCTスキャンはその典型

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蔵元日記vol.527【dancyu3月号・日本酒特集】

蔵元日記vol.527【dancyu3月号・日本酒特集】

dancyu3月号 日本酒特集dancyuの3月号は恒例の日本酒特集です。その中に「419蔵アンケートから見えてきた・酒蔵の今」というページがあります。それを見ていましたら獺祭の事が出てきました。「造りに関わる人数」の項で、獺祭が剣菱や白鶴の90人を軽く追い越して製造スタッフ130人で日本で一番多い蔵なんだそうです。

この記事を読む限り、一般的によく言われる「獺祭はデータ化と機械化により手のかか

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蔵元日記vol.526【売れそうにない新商品】

蔵元日記vol.526【売れそうにない新商品】

すでに弊社のHPで発表していますが、新商品が二つ仲間になりました。開発の背景と思いは以下のとおりです。

◆「獺祭美酔」について

獺祭に限らず「これは良い酒」と思う酒を飲みながらいつも思うことがあります。それは「美味しいんだけど、もう少しアルコール度数が低くならないか」ということです。獺祭は普通酒質のバランスを見ながら最適なアルコール度数まで加水されて瓶詰めされます。しかし、「美味しいものはもっ

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蔵元日記vol.523【EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2021ジャパン】

蔵元日記vol.523【EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2021ジャパン】

もうすでに弊社のホームページでご覧になったかもしれませんが、今年のアントレプレナー・オブ・ザ・イヤーの日本代表に選ばれました。

まず、この栄誉ある賞を受賞しましたことを喜んでおります。それと同時にここまで私共を助け育てて頂いたお客様に、無茶苦茶な私の要求に応えてくれた取引業者の皆様に、そして共に夢を実現してくれた旭酒造の仲間たちに、何よりここまで支えてくれた妻に心から感謝しております。(妻は「あ

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蔵元日記vol.516【ホームページのニュースから】

蔵元日記vol.516【ホームページのニュースから】

最近のうちのホームページのニュース欄に二つほど大事なお話が載っています。一つは「ご当地獺祭の発売」、もう一つは「6月入社の新卒採用活動について」です。どちらも少し背景など説明したい話ですが、「ご当地獺祭」については発売まで少し時間がありますし二つともとなると長すぎるのでまず一つだけ説明させてください。

で、6月入社の新卒採用活動です。10名程度の採用を考えています。通常の4月採用組も10名を超し

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蔵元日記vol.505【山田錦は捨てるところなし】

蔵元日記vol.505【山田錦は捨てるところなし】

獺祭が徹底的に精米された山田錦だけで造られるということは皆さんご存知と思います。近年では平均精米歩合も31%台になっています。ということはコロナ禍で生産の落ち込んだ昨年でさえ8,000トン強の山田錦を使用しましたから、その米粒の中心部分の2,500トン弱が酒造りに回され、残りの6,000トン近い米粒の外郭部分は米ぬかになるという計算になります。

一見、勿体無いように見えますが、どっこい、山田錦の

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蔵元日記vol.504【前回の宿題・獺祭がしなければいけない事】

蔵元日記vol.504【前回の宿題・獺祭がしなければいけない事】

(2021.2.13東北地震の前日に書きました)

具体的には、まず設備投資。昨年暮れに酒の搾り機(フィルタープレス)を2基増設しました。今まで8基だったからこれで10基になったわけです。近年、あるタンクの醪の搾るタイミングが来ているのに、搾り機にまだ他の醪が入っていて空かず、伸ばさざるを得ない事がありました。結果として、タイミングを逃して搾られた酒は、行き過ぎてたり若すぎてたりして、満点の品質と

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蔵元日記vol.503【前回の修正加筆】

前回の蔵元日記「終息しないコロナウイルス」の編で少し言葉足らずの点があり、読者の方から指摘がありました。それは世界のワイン市場の構成についてお話していた箇所で、「そしてフランスがなければカリフォルニアもチリも今とは違った形になっていたと思います。(イタリアだけは無くても関係ないかな)」、この下線を引いた箇所です。

確かにここだけ取り上げてしまうと「イタリアのワインは存在しなくていい」と言ったかに

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蔵元日記Vol.502【終息しないコロナウイルス】

終息しませんね、コロナウイルス。共産党政権下の中国はともかくとして民主政権下の台湾やニュージーランドが感染者数を抑え込んでいること、またお隣韓国と比べてもはっきり多い日本の感染者数(人口比で約二倍)。民族的弱点があらわになっているようで日本人としてはちょっとショックですね。

とにかく首相が悪いとか、自民党が悪い、いや厚労省の対応が悪いとか、危機感をあおるだけの知事やマスコミが悪いとか、犯人を作っ

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蔵元日記vol.499【サザビーズ結果】

蔵元日記vol.499【サザビーズ結果】

前々々回の蔵元日記で獺祭をサザビーズのワインオークションに出品したと報告いたしましたが、結果が出ました。出品した6本の内、2本が843,750円、3本が810,000円、1本が759,375円で落札されました。

ちょっと凄いですね。おそらく飲食店の価格とかでなく日本酒の単体の価格としては史上最高と思います。「値が付かなくて赤っ恥を描くかな」と危惧はしていたんです、ホッとしました。

この獺祭はど

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蔵元日記vol.498【達人になりきれない方のために】

蔵元日記vol.498【達人になりきれない方のために】

前回の蔵元日記【酒飲みの達人】 https://note.com/dassai/n/nc116aa497a48?magazine_key=m68e45294b26a を読んでいただいた方で、「なかなかここまでできなくて」と言われる方のために、蔵元が勝手流ご指南を。

やはり、栓を開けた後はお酒の酸化は進むばかりですから、一升瓶の購入は3~4日で飲みきる自信がなければできれば避けていただきたいとこ

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蔵元日記vol.497【酒飲みの達人】

蔵元日記vol.497【酒飲みの達人】

前々回の蔵元日記( https://www.asahishuzo.ne.jp/diary/004634.html )を読んだ方からこんなお便りをいただきました。

(以下から始まります)

蔵元日記を読んで、、、
 
「一日一合」で「一期一会」

私は獺祭の180m瓶を何本か、丁寧に洗いへ乾燥させています。

新しい獺祭を開けたら、3本の小瓶にすり切りまで酒を入れ冷蔵庫で保管します。風味の劣化を防

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蔵元日記vol.496【サザビーズ】

蔵元日記vol.496【サザビーズ】

世界最古のオークションハウスであるサザビーズ香港に獺祭を出品しています。以前から「ワインと比べて日本酒の弱みは高額な商品がないところ」「世界でワインに伍していくためにはそのマーケットに切り込んでいく商品をつくることが不可欠」とよく話してきました。その第一歩が「その先へ」だったわけですが、いろんな方から「その先へのその先はあるのか?」と聞かれていました。

私たちのその問いに対する答えが今回のサザビ

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