だれでもないやまだ。

座右の銘「人生には山あり谷ありモハメド・アリ」。本職はこれでもコピーライター。ショート…

だれでもないやまだ。

座右の銘「人生には山あり谷ありモハメド・アリ」。本職はこれでもコピーライター。ショートショート(短けぇ話)とインスタントフィクション(ちょー短けぇ話)を書きます。短歌と自由律俳句もはじめました。ピーマンが好きです。

マガジン

  • 先々月の短歌

    先々月に詠んだ短歌を見返して、自らを辱めるための取り組み…としてはじめましたが、いろいろ応募するために公開するのやめました。毎月楽しみにしていた100万人のみなさんには申し訳ないと思っています。

  • インスタントフィクション(ちょー短い話)

    ショートショートのタネ。咲くかどうかはわからない。

  • ショートショート(短い話)

    クソ面白いショートショートがいっぱい!になる予定。だいたい1万字以内になる予定。

最近の記事

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ビジネスパーソン【ショートショート #03】

 そいつとは、もともと職場の同僚だった。 「いまのご時世、手に職をつけなきゃダメだ」  とかなんとか言って辞めた後、職業訓練校に通っていたらしい。なんでも国からお金をもらいながら、さまざまな技能を習得できる学校らしく、そこの建築設計コースを卒業して、いまは大工をやっていると聞いた。  数日前、ひさしぶりにそいつのことを思い出して、連絡をとってみたのだ。そうしてきょう、このカフェで会う流れになった。  約束の時間の少し前に着き、コーヒーを一杯やりながらそいつを待った。おれから

    • 会話をキャッチボールに喩えると君の投げるのは全部ナックル 【先々月の短歌 vol.2】

      どうもどうも、ドモホルンリンクル。 真矢みき真矢みき。 ひっそりと短歌を続けております。 が、全然上達しないドン。 とりあえず、4月に書いた短歌をただ羅列します。 ____________ 室内に入るたびごと洗っても胡散臭さの抜けないこの手 ひとつしか愛がないので自分しか愛せないんですごめんなさい 「好きです」と詩情に乏しい告白で散文的な恋をはじめる 眠れない夜の理由をコーヒーにするために満たすカップの深さ 家計簿の支出の欄に家計簿と書いて頭を抱える人よ 飼

      • テノンサイダー 【インスタントフィクション #08】

         まただ。また、『欲しい』と思ってしまった。 一度、思ってしまうと、その欲求を抑えつけることができなくなる。望むものを手に入れられるなら、私はどんな手も使ってしまう。いや、私じゃない。ナニカだ。私が隙を見せた瞬間を見計らって、すかさず私の中のナニカが手を伸ばすのだ。  私にはナニカを飼い慣らすことができない。 『あなたが欲しい』  その欲求は、メントスのような小さな粒だった。けれど、私の深いコーラの闇は、その一粒で、一瞬にして膨れ上がってしまった。私はナニカが出てこないように

        • 献身的な女 【インスタントフィクション #07】

          「最近彼氏とどう?」 「もう一年くらい会ってないし、連絡も取っていないわ」 「一年?そんなに遠距離なわけでもないでしょ」 「ええ、電車で一駅」 「なにそれ、なんで会わないの。ていうか、連絡も一切なし?それ、付き合ってるって言えるのかしら」 「付き合ってるはずよ」 「はずって、ちょっとあんた大丈夫?」 「大丈夫。彼のことを愛しているからこそ、私は連絡しないの」 「どういう意味よ」 「あのね、驚かないで聞いて…」 「なによ、もったいぶって。早く言いな」 「彼ね、実はドMなの」 「

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        ビジネスパーソン【ショートショート #03】

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          そして、鼻は意見する 【インスタントフィクション #06】

           …そして、鼻は意見する。  接吻の代わりに鼻の穴に指を突っ込むのはどうか、と。  口は接吻のみならず、食物を咀嚼し、息し、嘘や真実を言う。はたまた、耳はメガネを乗せ、マスクを引っ掛け、イヤホンをはめ、艶めかしい囁きに尻をヒクヒクさせる。口も耳もそんなに多数の機能を持っているのに、鼻はもっぱらクンクン嗅ぐだけ。穴にピーナッツを詰められるなんて言うなよ?私は接吻が欲しい、と鼻は言う。  しかし、口は譲らない。 「おれの接吻には豊富なバリエーションがあるのだ。君とは表現力が違う

          そして、鼻は意見する 【インスタントフィクション #06】

          午前の恐竜 【インスタントフィクション #05】

           この幸福の実態を掴まえられないものかと、仰向けに寝転んだまま右手をもたげ、掌を宙でパクパクさせていると 「恐竜?」  と起き抜けの君が問う。 「恐竜…」 「首の長いやつ?」  ときどき君は暗号めいた言葉で僕を翻弄してしまう。キョウリュウ、クビノナガイ?ソレハ…ブラキオサウルス?  そこまで解読できたところで、君は壁を指して 「影絵やってたんでしょ?」  という。僕はやってない。が、なるほど、窓から侵入してきた朝日に当たって、僕の右手の薄い影が白い壁紙に投影されている。その形

          午前の恐竜 【インスタントフィクション #05】

          星葬 【インスタントフィクション #04】

          「死体は燃えるゴミの日に出してくれ」  それが彼の遺言だった。  彼が死んで最初の金曜日。私はマンションのゴミ置き場に彼を捨てた。彼の身体は大きくて、一袋に入りきらなかったから、バラバラにした。  風呂場の排水溝に吸い込まれていく血も、かつての彼だったと思うと、下水道で糞尿と一緒くたにされてしまうのが嫌で、タオルに染み込ませて、身体と同じ袋に入れた。    町の中心にある小高い丘には、すでに人が集まっていた。ここは流星群がよく見えるスポットになっていて、いつも遠くの街からカッ

          星葬 【インスタントフィクション #04】

          ソムリエ 【インスタントフィクション #03】

           ワイングラスの縁に鼻を引っ掛けて、彼は香りを楽しんでいるようだった。グラスの中には薄い黄褐色の液体がある。少しだけ口に含むと、すぼめた唇から吸い込んだ空気を、ドゥルドゥルドゥルと音を立てながら液体に絡めた。味覚だけに全神経を集中させるように目を瞑り、舌を上顎にぴちゃぴちゃと打ち付ける。そしてようやく、顎を上げてできた傾斜で液体を喉の奥に流し込んだ。 「甘口ですね。コクがあって、香りがいい」 「ありがとうございます」 「おそらく1990年生まれ、血液型はA型。飲酒、喫煙はなし

          ソムリエ 【インスタントフィクション #03】

          歯医者 【インスタントフィクション #02】

          「奥歯が痛くて、診てもらえますか?」  彼はそういって、わたしに背を向けると、おもむろに穿いていたズボンとパンツを脱ぎ、両手で尻の割れ目を開いて、肛門を見せつけてきた。  まだ開業したばかりだというのに、こんなおかしな客が来てしまうなんて。選ぶ街を間違えてしまったようだ。 「ちょっと、なにされてるんですか?」 「あ、だから奥歯を診てもらいたいんです。オヤシラズかもしれない」  彼はさらに尻を突き出して、両手の指先が赤くなるまで、目一杯割れ目を開いた。開きすぎて内側の鮮明なピ

          歯医者 【インスタントフィクション #02】

          緑の男 【インスタントフィクション #01】

           赤い女も青い男も、不慣れな新居に困惑していた。電気が勝手に点滅する欠陥住宅。だが文句は言えない。何者かに突然、元の住まいを奪われてしまったのだ。路頭に迷っていたところを二人の紳士に見出され、このメゾネットを施された。両紳士を追い出す格好になってしまったが、紳士たちもちょうど新しい家を探していたところだった。  それはそうと、この新たな住まい手によって引き起こされた問題は極めて深刻だった。  青が点滅すると男どもがチャックをしめ、手も洗わず歩き去っていく。赤に変わり、並んでい

          緑の男 【インスタントフィクション #01】

          ランニングマシンの上を駆けていく僕らはどこにもたどり着けない 【先々月の短歌 vol.1】

          どうもどうも、堂本剛。(光一派の方はすみません。) だれでもないやまだ。と申します。 最近、短歌をはじめました。というか、短歌がわたしをはじめました。 これから月に一回【先々月の短歌】と題しまして、 わたしが先々月に書いた短歌を、勝手に紹介していこうと思っております。 まだまだヘタクソなんですが、 新聞やらwebマガジンやらなんやらに投稿しておりますので、 もし見かけたら、なんかください。 ちなみに、先々月に短歌をつくって投稿しまくった結果 ・うたらば 2021年4月号|

          ランニングマシンの上を駆けていく僕らはどこにもたどり着けない 【先々月の短歌 vol.1】

          ヤキモチ焼いて膨らんだのは、【ショートショート #04】

           どうしたんです、尻もちついちゃって。そんなに驚かないで、まあ話を聞いてください。そう長くはかかりませんから。  私は浮気なんてしたことがありません。いえいえ、別に「全部本気なんです」って開き直って言っているわけではありませんよ。ごく一般的な基準に法って浮気はしていないと、そう言うのです。私はその日も彼女に正直に言いました。 「今日は会社の飲み会があるから帰りは遅くなるね。あ、受付のヨシコちゃんと同期のアズミちゃんもくるけど、何もないから安心して」と。  ちょっとここで、

          ヤキモチ焼いて膨らんだのは、【ショートショート #04】

          ヘソ・コレクター 【ショートショート #02】

           世の中には、まったく珍妙なものを集めるコレクターがいたものだ。最近知り合ったタカユキさんという人は、いろんなヘソを集めているらしい。聞くに、都内有数のメンタルクリニックの売れっ子精神科医で、治療の副産物として出てくるヘソをコレクションしているようなのだ。集めたヘソは、便利グッズとして実生活にも役立てているというから驚きだ。  その話を聞いてからというもの、ぼくはワクワクが止まらなくなった。どうしてもと頼み込んで、家にあるコレクションを見せてもらえることに…  訪問の当日。

          ヘソ・コレクター 【ショートショート #02】

          メダリスト 【ショートショート #01】

          「あれ、金田さんじゃないですか?」  どこか、見覚えのある顔だった。四角い大きな輪郭に、白髪の混じった長髪が覆い被さり、その顔と髪の隙間に、細い黒縁メガネのテンプルが突き刺さっていた。歳は60から70代近いことが、額に伸びた無数の皺から読み取れた。  ひとり、飲みに入ったバーのカウンター。俺が腰掛けた椅子のたまたま隣に、その男は座った。飲み始めてから少なくとも2時間は経っていただろう。バーのマスターにヴェラヴェラと愚痴をこぼしているところだった。  親しげに声をかけられ、振

          メダリスト 【ショートショート #01】