献身的な女 【インスタントフィクション #07】

「最近彼氏とどう?」
「もう一年くらい会ってないし、連絡も取っていないわ」
「一年?そんなに遠距離なわけでもないでしょ」
「ええ、電車で一駅」
「なにそれ、なんで会わないの。ていうか、連絡も一切なし?それ、付き合ってるって言えるのかしら」
「付き合ってるはずよ」
「はずって、ちょっとあんた大丈夫?」
「大丈夫。彼のことを愛しているからこそ、私は連絡しないの」
「どういう意味よ」
「あのね、驚かないで聞いて…」
「なによ、もったいぶって。早く言いな」
「彼ね、実はドMなの」
「何を言い出すのかと思ったら…」
「これは放置プレイなのよ。彼のために、いじめてあげているの」
「献身的なのね。でも、親友だと思うからこそ言うけど、あなた変よ。それにね、私この前、あなたの彼に言い寄られたんだから」
「え、嘘?」
「本当よ、ひどい男ね」
「やだ、なんだか興奮してきた」
「まさか、あなたも…」

(了)

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